祈りの後
歌 垣
#1
Feast the Encounter



 我らを護り、我らを育み、陰に沸き立つ神漏彌(かむろみ)の山よ
 その神代の業にて、地に満てる一夜の戀を成らしめ給え



 山鹿の国、と呼ばれる土地があった。
 雄大な山を背に頂く、黒き森を切り開いた土地に集落の広がる、一見長閑な風景はこの二十年ほど平和の時を過ごしている。各地に広がる地方豪族の争いは、今も刻々と勢力図を塗り替えているが、ここには強く輝かしい族長が存在し、近隣を平定して尚余りある権勢を揮っていた。
 その長の名をカオスと言った。彼の行動に触れて来た人々は皆、彼のことを天竺のシバイ神の生まれ変わりだと言った。圧倒的な破壊の神に例えられる冷徹さと、それでも人の憧れや信頼を集めるカリスマ性が、この国の発展と安定の源であった。彼の作り上げたこの山鹿の国は、隣に聳える火山の激しさのように、規律に厳しく、そして情け容赦のない武力によって、荒々しい時代の中に成り立っていた。
 但し、一年程前からその情勢は変わり始めている。氏人(うじびと)と呼ばれる名のある士族達は、この権勢が揺るがぬよう、日々国の強化に努めているところだった。即ち軍事的訓練や国境の見張りなど、常に周囲を警戒することだ。弱味を見せれば、近隣の国に一気に攻め込まれることも、容易に考えられる浮世の常。それは残酷で明解な世界だったからだ。
 そんな中に在り、山鹿の国のお社は今日も静寂の時を過ごしていた。
「今日のお務めはこれまでです。お疲れさまでした、シン様」
 氏上主(うじがみぬし)であり、現在の族長であるシンはその日も、磨かれた鏡の前で日々の神事を行っていた。塩を盛り、火を焚き、珠で飾られた冠に白地の袍(ほう)と褶(ひらみ)を身に着け、両手に榊の枝を持ち、祈祷し、楽を奏で、神々を慰める舞踊を舞う。氏上自らが行うこの神事は早朝と午後に行われ、今は午後の神事の時で、集落の人々が丁度昼の休憩を終えた後の、長閑な昼下がりだった。
 シンを挟み、その左右後方には常に長に寄り添う、この国の祭司であるリョウと、巫女のカユラが居た。ふたりは兄妹であり、代々この氏上に仕えて来た神官の一族だった。既に隠居している老神官の跡を継ぎ、今は若いふたりが国の神事を執り行っている。神事が終わるとリョウは速やかに頭を下げ、シンに失礼のないように声を掛けた。その些か忙しない動作を見ると、
「…今日は少し短いですね」
 シンは不思議そうな顔をして彼に尋ねる。その理由はすぐにリョウの口から聞くことができた。
「もうすぐ祭が始まります故、その支度にかかっているのです」
「ああ…、歌垣ですか。もうそんな時期ですね」
 その祭は毎年一度、夏の始めの山中にて行われる。後に「水無月祓」と呼ばれる厄除けの神事と同時に行われ、集落の民人の為に開かれる祭である。明るく晴れやかな秋の収穫祭とは違い、独特の雰囲気を持つ歌垣の夜は、特に若者が待ち焦がれる熱情の舞台だった。何故ならそれは縁結びの祭でもあるからだ。
 夜の闇、漆黒の山中にて薪を燃やし、参加者は手に明かりを持ち、始めは輪になって思い思いに歌い踊る。闇に火の粉の飛び散る幻想的な景色、炎の熱と体の熱が、次第に祭の雰囲気を盛り上げて行く。そしてそれが最高潮に達する頃、山の神のお導きによって参加者は、それぞれ巡り会った相手と共に散り散りになり、祭の一夜の営みを楽しむのだ。やがて来年の春になれば、神の恵みと言える赤ん坊が沢山産まれると言う訳だ。
 神聖なる、そして古より人の情愛の受け皿でもある歌垣の夜。
 カユラはそれに関し、シンにひとつお願いを申し出た。
「私もしばしば支度に駆り出されるので、一日の間に少しだけ暇をいただきたいのですが」
 巫女である彼女は、同時にシンの身の回りの世話もしている、シンには最も身近な家臣と言える存在だ。そんなカユラの申し出であるから、シンも快くそれを許した。
「わかりました。この昼の祈祷の後は、夕餉まで自由にするように」
「はい、ありがとうございます」
 真面目で心遣いのある彼女のことだから、自分が疎かにされることはないだろう。何しろ歌垣は民人の大事な行事であるが故、その準備は万全にしてあげなければ、この国の良心や信頼が疑われてしまう。シンはそう考え、神官の一族の忙しさを認めていた。
「カユラは何を手伝うのですか?」
 と尋ねると、彼女は少し苦い表情を見せて答える。
「松明作りです。祭に参加する全ての者に持たせなくてはなりませんから」
「それは大変ですね」
 松明は、適当な棒切れに藁を巻き、その先に松脂を塗ったものだが、数百人が参加する祭に合わせ、その数を揃えるのはなかなか大変だ。多くの男は農兵であり、朝と夕は農作業、昼は警備や軍事訓練に参加させられる為、そうした軽作業にはあまり関れない。残る女達と老人、子供が中心での作業になる為、氏上に仕える巫女まで駆り出されることになった。
 特に今年は、これまでの中で最大の人数を賄わなくてはならない。無論それだけ若者が多くなったと言うのは、国としては幸いなことだが。
「あと三日もすれば終わりますので」
 カユラが丁寧に傅く様子を見せると、続けてリョウも深く頭を下げて言った。
「ではシン様、我々はこれで失礼致します」
「失礼致します」
 祭壇の間からふたりの姿が消えてしまうと、シンは自らも祭壇に一礼し、その場を後にした。
 氏上の主家の敷地の裏に建てられた、北の社の中にこの祭壇の間は在る。他に西と東にも社はあるが、それらは祠と言ってもいい、ごく小さな祭壇に屋根の付いたようなものだ。シンと祭司達は朝の神事の際には、それぞれ全ての祭壇を回り祈祷する。午前はほぼその神事で時が過ぎ、昼に暫し休憩をすると、午後はまた北の社の神事に入り、日が沈む頃までお務めが続く。
 つまりシンは、主家の敷地から殆ど出ることがなく、一日をほぼその中で過ごしている。そうなったのには幾つかの理由があった。シバイ神の生まれ変わりと神聖視された父の、只ひとりの嫡子だからこそ、同一に神聖視されている面もある。巷ではシバイ神の息子、アルダナリ神の生まれ変わりと言われ、神の声を聞く神子だと特別に敬われている。
 実際彼がどんな人物かは置いておくとして、民人にはそれなりに人気のある主君だと言えよう。ただ、シンはまだ齢十六で、一年前に氏上主になったばかりだった。前の氏上主であった彼の父、カオスの大葬儀が一年程前にあり、その墳墓も半年前には完成し、国を上げて盛大な葬祭が行われた。死して尚近隣の小国を威圧するように、それはこの国の権力の輝きを見せ付けるものだった。
 そのお陰で、父のように戦の場には立たないシンも、今のところ敵国からは警戒され、攻め込まれるようなことはなかった。その姿を知る者が殆ど居なくとも、父親の七光りが続く限り、民人も深く気にすることはなかった。少なくとも日々の祈祷は熱心に行っていると、伝え聞くだけで満足な平和の世だった。
 一般には彼は病弱であり、表にも国政の場にも滅多に出て来ないと言われている。だが実際は病弱などではなかった。彼には隠さなければならない理由があっただけで、健康上には特に問題はなかった。それを本人も無論辛く思っている。否、辛いと言うより淋しかっただろう。自由に家から出ることを許されず、毎日決まった環境にしか生きられないのでは。
 シンは主家へと続く小途を辿りながら考えていた。
『歌垣か…。一体どんなものなんだろう。その夜はどんな景色なんだろう…』
 彼には無論、民草が主役の祭に参加することなどできない。周囲を囲む氏人も誰もその祭を知らぬので、話すら聞いたことがない。否、大人達は大体のことは知っているが、まだ年の若いシンには、奔放でやや下品な祭の話などしてくれなかった。正に知りようもない神の手の導き、神の与える情熱の祭の風景に、憧れない訳がないとシンは胸を熱くする。
『氏上主の倅である僕も、氏人達も、この歌垣によって山の神を感じることはできない。氏上の一族は山の神と一体だからだと言うが、代わりに新たな出会いの恵みは賜れない。いつもいつも同じ顔ばかり見て暮らしている。…それは淋しいことだ』
 現在の生活に、拘束されること以外の不満がある訳ではないが、位を持つ氏人の世界はあまりにも狭いと、シンは感じざるを得なかった。なまじ官位と言うものがあるばかりに、それ以下の民を区別して生きている。そうした階級社会が、国を統治し易い形なのは理解できる。それは奈良の都の大君を中心とした、日の本の王族とて同じようにしていることだ。
 けれどその上に、近隣の国との友好的な付き合いもない為、余所からやって来る者の顔を見ることも殆どない。名のある士族は何処でも皆争っている。殺すか殺されるか、征服するかされるか、それ以外で手を結び合うことは滅多にない。結果的に地方豪族はそれぞれ閉じた社会になって行き、そのことがシンにはどうにも、無益な行為に思えて仕方がなかった。
 争い敵対して何になる。何故なら広い日の本の、数え切れぬ大勢の人の中には、己を理解してくれる只一人の誰かが存在するかも知れない。その貴重な機会を奪い、縁結びの神に自ら背を向けるのは愚かではないか。彼は常々そう思うからだった。
『神のお導きとはどんなものだろう…。僕には何も、神に触れられた実感がない』
 人には神子と呼ばれながら、確と神と言える形を捉えられた訳でもなく、自分はひとり氏上主として祀り上げられている。そんなこと、望む生き方ではなかったとシンは溜息を吐いた。
 その静かな長い溜息が、家の周囲を囲む針葉樹の林を通り抜けて行く。この息のように、風のように思いが遠く運ばれてくれるなら、誰かこの気持を受け止めてくれるのではないか。それこそ山の神に、神漏彌の耳に声が届いてくれたら、僕はもっと心救われているだろうと思う。
 歌垣に出会いたい。神のお導きに縋りたい。この身を抜け出したい。
 神事を行う時以外は、シンの頭に幾度もそれらの言葉が渦巻く。彼の生活とは結局祈り、悩み、床に就くことの繰り返しであり、それはこの年も変わらず続いていた。誰か、この空虚な暮らし振りを知る者が居て、ここから引き摺り出してくれまいか。ただそう願うばかりの日々だった。



 丁度同じ頃、日がやや傾き始めた集落の広場で、丸太の腰掛けにどっかと座したひとりの男が、彼の息子に手招きをして呼び寄せた。
「セイジ、来なさい」
「はい」
 振り返った少年はやや大柄で、つい先頃十六になったばかりだが、その体格を認められてか、若くして民兵の部隊長を任される立派な武官だった。無論その父も氏人であり武官、否、男はこの国の軍師として長く働いて来た者だった。
「何ですか、父上」
 その前に立つとセイジは襟元を正し、親に敬意を払うように手足を揃えた。父親はそれを満足そうに見ると、遠回りせずに彼の用件を伝えた。
「おまえもそろそろ年頃であるから、何処かから良さそうな嫁を取らなければな」
「…突然ですな」
 これまで全くそんな話は聞かなかった彼が、顔を顰めて戸惑うのは仕方なかった。何故父は急に嫁などと言い出したのだろう、と思えば、
「いや、もうすぐ歌垣だと民が口々に言うのでな。ふと思い出したのよ」
 成程、民人が毎年楽しみに出掛けて行くあの祭、縁結びの祭があるからかとセイジは納得する。ただ時期的に納得はできたが、それを自身のことに置き換えられない彼は、
「はあ、そうですか」
 と、魂の抜けたような返事をした。実は、遊び好きとして知られるセイジは、結婚などで身を縛られるのを酷く嫌がっていた。父の提案は嫌がらせかと思える程の事態だったようだ。それを知ってか知らずか、父親は彼の前で、自身の考えるところをサラサラと話し聞かせる。
「私が聞き知った限りでは、バダモン祭司の娘のカユラは年頃も良いだろう。今は巫女をしているが、話を通せば問題なかろう。ああ、おまえの友のトウマにも姉が居たな、ナステイとか言う女官だと聞いたが、氏上に仕える一族ならば誰でも構わぬぞ」
 カユラはひとつ下の十五才、ナステイは二つ上の十八才である。この時代的には十代で結婚するのは当たり前なので、大体そんな辺りが候補として上がって来る。ただ、当時にしてもその年で、建設的な家族計画を持つ者など、そうそういないのが現実だ。多くは一時の感情の盛り上がりから発作的に、そうでなければ周囲の勧めに乗って結婚する形が殆どだった。
 故にセイジも、聞いたところで結婚に対する真剣味が湧くこともなく、その時が近付く実感を得た訳でもなく、変わらず気のない相槌を聞かせている。
「はあ…」
 それを父はどう考えただろう。まあ少なくとも、話しておけば考えざるを得なくなるのは間違いない。
「気乗りしない返事だな」
「あんまり急な話なので…、まだ何も考えられないだけです」
「ならば今、これから確と考えておけ。おまえが選べぬと言うなら、父が良さそうな娘を探して話をつけて参る。そう遠くない内にな」
「…はい」
 セイジはそう、押し付けられるように言われ、この場はただ簡単な返事を返すしかなかった。自らの言葉通り、まだ何も考えられない状態だった。
 父親はそれだけ言うと、外していた太刀を改めて腰紐に挿し、立ち上がると何処かへ行ってしまった。確か今夜は、父は国境の見張りの番が回って来ていた筈だと、セイジはその背中を真摯な気持で見送る。国の為に働くことに対しては、ひとりの成人然とした考え方ができる彼だが、困った話をされたものだと、結婚に関してはこれと言った意欲もない現在…。

 広場にひとり取り残された、セイジの呆然として立つ様子を見付けると、友と呼ばれたトウマが声を掛けた。
「どうした?、浮かぬ顔をして」
 トウマはこの国の文官の息子で、彼自身も十六で文官となった、学才に秀でた少年で、セイジとは幼少の頃から仲の良い友達だった。とは言っても、最近はそれぞれ仕事を持つようになった為、会って遊ぶと言う機会は殆どない。そんな中偶然広場で会ったのは、ふたりに取って嬉しい巡り合わせだった。筈だが、トウマが声を掛けてもセイジの表情は曇っている。何か変だな?とトウマが思っていると、
「嫁を取れと言われた」
 と、セイジはその理由を一言、相談相手に足る人物に話した。すると予想通り、トウマは明解な言葉でセイジの現状に答えていた。
「ははは、確かにもうそんな話もあろうな」
 十六と言えばこの時代にはもう適齢期だ。早くから縁のあった者なら、更に若い内に縁組みする者も居る。二十才になるまでに最初の妻を持たない者は恥、又は変人と言われ兼ねない。トウマはそんなことを暗に示して笑ったようだ。
 笑われたからと言う訳ではないが、セイジはそのトウマの状況を尋ねてみる。
「おまえは何か言われているか?」
 だが無論、家によってそれぞれ考え方も、教育方針も違うだろう。トウマは特にセイジのような思いをしていないらしいが、自ら考えることはあると話した。
「いや、俺は今のところ何も。ただ氏を守る為に考えなくてはならぬことさ」
「氏を守る為に…な」
 さらりと言ってのけたトウマの態度を見ると。どうやら彼に取って結婚とは単なる義務、否、むしろ事務的なものにさえセイジには聞こえた。差し当たり家系を存続させる為に、必要な手続きだからそうすると言った具合だ。勿論反りの合わない相手や、不健康な女では困るだろうが、ある程度の条件を揃えていれば誰でも構わない。トウマの淡々とした様子は正にそんな感じだった。
 恐らく、結婚などと言う行事にさして関心もないのだろう。彼にはそんな事より、大陸から渡り来る文献の研究の方が、ずっと興味深く楽しいに違いないのだ。
 それを思うと、トウマに相談しても参考にならぬかもと、セイジは今更ながら気付いて息を吐く。この友のように、適当な条件だけで考えられるなら、こんな落ち込む気持にはならなかった。自ら触れた者でなければ嫌だと思っている。自らの情や興味を掻き立てる者でなければ、長く共に居ることはできないと感じている。そう悩むセイジは、ある意味では結婚相手を深く考えているとも言えた。
 人は道具でもなければ木の股でもない。恋しさなくして家に戻りたい気持にはなれないだろう。彼はそうしたものを求めているようだった。
 そこへ、更に偶然見知った顔が通り掛かった。
「いよ!、文官のおぼっちゃん、部隊長殿」
 鍬を担いだ明るい顔、小柄だが頑丈そうな体に、日焼けした肌が尚更健常さを際立たせたような少年だ。彼を見るとトウマが、釣られたように笑い返して言った。
「何だシュウ、今日は随分景気が良さそうじゃないか」
 シュウと呼ばれた彼は、トウマの家に出入りする男子で今年十五才。昨年から大人に交じって仕事をしている為、今年はもうほぼ一人前と言えるほど、農作業も軍事訓練にも慣れたものだった。そしてそんな若々しい働き手である彼もまた、
「今日じゃねぇよ、もうすぐ歌垣があるからさ。俺は今年初めて参加していいって言われたから、楽しみでしょうがねぇのよ!」
 思わず心が浮き立つほど、歌垣の祭は魅力的に映るもののようだった。
 それとは別にセイジがトウマに問う。
「歌垣には奴(やっこ)も参加できるのか」
「部民(べみん)以下の祭だからな、誰でも出会いの機会は平等にあるのさ」
 因みに部民とは一般的な平民のことであり、奴とは奴隷のことだ。奴隷と言っても住み込みの女中のようなもので、身分は低いが、特に虐げられている訳ではない。氏上に仕える祭司や女官と同じように、その家の手伝いをして暮らしているだけだ。シュウはトウマの家の奴であり、セイジの家にもまた当然のように居る。
 そんな彼等と、氏を持たない平民達が自由に歌い踊り、自由に交わると言う歌垣の夜。神のお導きで運命の人に出会えることもある、神聖な歌垣は長くこの地方に根付いて来た。
「俺は死ぬまでに沢山の子を持ちたいんだ。いい娘に会えるといいな。全ては山の神のお導きだけどよ」
 と、シュウが力強く言うと、トウマはその頼もしい意思を受けてこう返す。
「そうだな、おまえに良き縁があるように」
「ありがとよ!。んじゃ、夕の作業に行って来るぜ」
「ああ、しっかりやれよ」
 仕える家の、気心知れた兄のような存在に励まされ、シュウは尚気分良く農作業に出掛けて行った。その姿が道の遠く、民家の陰に見えなくなるまでトウマが見守っていると、何故かセイジも黙ってシュウを見送っていた。自分と同様の家族の情を持つとも思えない、セイジの様子は何だろうと思うと、
「…民人には平等に神の縁結びがあると言うのに」
 と呟いた彼は、歌垣の祭に思いを馳せているのが判った。トウマはそれをからかって、
「何だ、シュウが羨ましいとでも言うのか?」
 そう言ったが、セイジは思いの外真面目に考えていた。
「我々氏人は、同等の身分を持つ中から嫁を選ばなければならぬ。彼等のような自由はない。それはつまり、それだけ損をしていることにならないか?」
 損か得かと言えば、確かに多くの人間に会える方が得もあるかも知れない。否だが氏人としては、己の位を守る為に、立派な家柄の人間を選ぶ方が得でもあると思う。トウマは、
「うーん…。氏を持つ者はそれだけで、特別に神に選ばれた立場なんだ。我らの法は神の意思だと言うこともできる」
 暫し考え、珍しく少し苦しい弁を聞かせた。流石にそれでは納得できないセイジは首を傾げていた。
「そうだろうか…」
 全国に大勢居る氏人全てが、神に選ばれた人間だとは到底思えない。氏があると言うだけで、非道な人物も悪党も存在する。それをまとめて「神の意思」だとは、大雑把過ぎる話だと考えてしまう。その理屈の抜け穴をトウマも共に考えていたが、彼はふと頭を切り替えて言った。
「何をそんなに悩む必要がある?、嫁取りなど誰でも当たり前にすることだ。大した事件でもない」
「私は神の意思など知らぬし、感じたこともない。それでも神の意思だと言えるのか?」
「その話はやめよう、考え過ぎだ」
 どうやらトウマも、氏人を選民とする筋道での話は諦めたようだった。実際そんな考え方があるのは確かだが、結婚に関してそれを説くと、本筋から脱線してしまいそうだった。現にセイジは全く関係ない所にこだわり始めている。なので、
「いや、おまえは気が多過ぎる。部民の女に手を出すのはやめろ」
 仕切り直すように相手に釘を差すと、セイジはやや恨めしそうにトウマを見た。
「・・・・・・・・」
 そう、そもそもはセイジの性質が問題なのだ。一途に誰かを追い掛ける訳でもなければ、大人しく親の言うことに従う訳でもない。それでは埒が開かないと、トウマは彼の理解を促す話を続けた。
「大体、何故こんな祭が行われていると思うんだ?」
「どう言うことか?」
 恐らくそれは、セイジの無謀な憧れを突き崩すことになるだろうと思いつつ、トウマは簡潔かつ辛辣に歌垣の真実を語ってみせた。
「ぶちまけると頭数を減らさない為さ。自ら相手を選ぶとなると、身分や見てくれを気にしてなかなか決まらぬものだ。祭の高揚感のまま夜陰に紛れ、神の導く偶然を楽しむことの背景には、子供を増やして国を支えようと言う、合理的考えがあるんだよ」
 今はそれなりにまとまった数の居る集落。しかしそれは太古からそうであっただろうか?。と、考えると、自ずとこの祭の存在意義は見えて来るものだ。
 伝え聞く奈良の都では、継体帝と言う皇子が大君に立ち、都の周辺の地方豪族を束ねていると言う。奈良からは遠く離れたこの地方では、その影響はまるでなかった。強いられる物事が無い代わりに、人の行き来と言う恩恵も無いことは、果たして幸いなのか不幸なのか。少なくとも各地から人の集まる都には、あまり悩まずに居られる問題がここには存在する。
 出来る限り多くの子供を、死に行く分も補える程に産み育て、集落の人数を維持することが、まず地方都市には重大なことなのだ。人力が足りなければ忽ち他国に乗っ取られてしまう。そして、遠距離を移動する手段がない今は、他地域からの人の流動も少なく、各地でそれぞれに計画しなければならない問題だった。
 その解決策こそが歌垣。究極とも言える神の代弁に於いて行われる、それは人口維持機構に過ぎない。ただそこに神の偶然が介在するから、人々は面白く期待と熱狂を持って臨んでいる。後に結婚相手となる者と出会えることもあれば、一夜限りの相手として終わる出会いもある。しかし何れの場合も子供が産まれる可能性は残る。それこそが重要な祭なのである。
 それだけのことだ。理念としては何の情緒性も認められない。知ってしまえばつまらぬことだろう?、と、当麻は黙って聞いていたセイジに尋ねる。
「おまえは氏人でありながら、そんな本能的な交わりに憧れるのか?」
 けれどセイジは、トウマの望む内容とは違う言葉を繰り出した。
「…その方が自然であり、神に祝福されると思うからだ」
 恋の祭の戦略的背景を聞かされても尚、セイジは理論に反発するようにそう言った。性格の違いと言えばそれまでだが、トウマは彼を愚かにも思いつつ、
「おいおい、そこらの鼠やイタチの方が、我らより恵まれていると思うか?」
 そんな例を挙げて更に問い詰めてみる。野の獣はどこまでも自由、しかし知恵が低いばかりに何の保障も無く生きている。そんな人生の方が良いと、文明を持った人間が通常考えるだろうかと。
 だが逆にセイジには、世界を高みから見物するようなトウマの視点が気になり、余計に受け入れられぬ意識が湧いて来るようだった。野の獣も血の通う生物には違いない。彼等にも人間にも共通する、本質的な幸福は存在するだろうと。
「部民を獣扱いするなよ」
 とセイジが返すと、トウマはこう続けた。
「ある意味では同じだ。生まれた子は氏を持たず、誰が親とも知らず育つ者も居るんだからな」
 確かに獣の多くは父親を知らない。魚などは両親共知らずに生きている。だがそんなこと、位など持たない生物には無意味だ。だから歌垣の祭も成り立つと判るけれど、トウマの言い草はあんまりだと、セイジはその非情さを責めるように言った。
「知らなかったぞ。文官とはなんと冷酷な官位だ」
 まあ、官位を区別して生きる氏人達が、そのように部民以下を見下す風潮は、既に広く蔓延っている。この後に来る封建時代の礎は、なにもトウマの発明と言う訳ではない。外国の文献を見、この日の本を見、今はそうなっているだけだとトウマは言う。
「俺が言うんじゃない、そう言う慣わしだと言っている。現に誰も歌垣には文句を言わぬだろう」
 そう弁明すると、それについてはセイジも理解して、
「まあ、そうだが」
 と答えたが、それでもどうしても心の何処かに、割り切れないものが残るように語尾を濁していた。子孫を多く残すことが命題なら、何故氏人はその範疇にないのか。氏人が神に選ばれた人間ならば、その子孫こそ多く残すべきだと思う。だが人はその反対の方向へ向かおうとしている。全体の利益となることに背を向けたがる、この流れは不自然だとどうしても感じてしまう。
 この世がおかしいのか、それとも私がおかしいのか?、と、セイジは悩み続ける。
「強く健やかな部民が多く生き延びねば、国の維持も発展もないんだ。そうだな、シュウには多く子を残してもらいたいもんだ」
 と続いたトウマの言葉に、頑丈な部民が増えることの意義は確かにあると、セイジはまた新たに考えた。何を理想に掲げようと国が滅ぼされてはお終いだ。だから歌垣の祭は必要だ。それだけは判ると。
「シュウは…」
「ん?」
「…いや、何でもない」
 セイジは何かを言おうとして止めた。国に取って何が一番良いことなのか、考え施行するのは氏人の役目であり、彼自身もその一員であることを思った。現状維持でも改革でも、責任を担うからこそ氏人であり、それだけは部民以下とは明確に違う。だが官位的立場の違いと、家系的、生物的な違いはまた別の話だ。私達は何故切り離されなければならないのか。何故全て入り混じる状態ではいけないのか。
 望めるならいつか、差別なく皆が同じ土壌の上に交じり合う国になってほしい、と、歌垣を前にしてセイジは思った。それが人に取って真の幸福、真の恋を見付けられる世界だと、訴え続ければ我々はそうなれるだろうか…。



 その後、リョウとカユラの兄妹が祭の支度に出てしまうと、シンはふとある思いを持って動きだしていた。一度主家の自身の部屋へ下がった後、普段用の袍と表袴(うえのはかま)に着替え、裏玄関へと続く廊下を歩き出していた。
 その途中、ひとりの女官が彼に声を掛ける。
「シン様、どちらへ?」
 彼女はナステイと言って、前に述べた通りトウマの姉である。文官の娘であるだけに、読み書きや推論の才に恵まれた女性であり、それを買われて四年ほど前から、シンの身近な教育係として仕えている。年はふたつしか違わない、知的で配慮もある彼女をシンは、家族的な心安い存在としていつも傍に置いていた。そしてそんな間柄だからこそ、シンは隠さず問い掛けに答えた。
「今日は祈祷が早く終わったので、母様のお見舞いに参じようと思います」
 母様。シンの父であるカオスは亡くなったが、まだその妻は生存している。主家の北西に建てられた彼女だけの家にて、長く胸の病に伏せている。
 シンは生まれてより、この母親にはあまり触れることなく育った。病のせいもあるが、シンは母親から嫌われていたからだ。否、彼だからと言う訳ではない。他に兄弟が居たとしても、その全てを受け付けなかっただろう。ともかく嫌われる身では、見舞いたくともあまり積極的な機会は作れず、こうして不定期に訪れる暇を見ては、ふらりと出掛けて行くことが多かった。
 するとナステイは、
「でしたら私も参ります。今お輿を用意致します」
 と、即座に同行を申し出る。シンはそれにホッと安堵の表情を見せ、
「では一緒に参りましょう」
 彼女を促すように返した。何故彼が安堵したのかは、無論自分ひとりより、間に入ってくれる者の居る方が場が和らぐからだ。嫌われている自分が顔を見せると、母はいつも眉間に皺を寄せ不機嫌になる。その状態でまともな会話などできた試しがない。幼い頃から幾度となく、自らの話を、悩みを、愛情の言葉を聞いてほしく訪れるのに、母は何ひとつ受け取ってはくれなかった。
 そんな親子である。今更良い顔をしてもらおうとは思わないが、せめて母も自分も、心穏やかに対面して終わる午後であってほしい。シンはそんな弱々しい望みを持って、この日も母親の寝所に向かおうとしている。
 それを痛ましくも、心配にも思うナステイは、この場で出来る限りの助力をと、庭に集う奴達に輿の用意を急がせた。気分的に夕暮れ時とは煩く感じるものだ。お母様のお心が怪しくならぬ内に、そこへ到着しなければと必死になった。

 ふたりを乗せた輿が、北の社の更に北、裏門を出ると暫くは庭と同じ針葉樹の林が続く。その一本道を七、八分進んだ所に、シンの母親の立派な家は在った。父は残忍な無骨者などではなく、彼なりに妻に情を掛けていたようだ。しかし妻にはそれが通じなかった。ふたりは結婚してより数年共に暮らしただけで、後はずっと離れた家で暮らしていた。
 前に書いたように、部民以下の暮らしから言えば、親が揃わない家庭、親に触れない子供は多く居るのだから、氏上だとしても、それ自体はさほど気になることではなかった。この後の時代でさえ、通い婚などと言う結婚制度が貴族に続くくらいで、ひと組の夫婦を中心にした家を家族とする流れは、まだ今は確立していないのだ。だがカオスは生涯ひとりの妻しか持たなかった為、どちらかと言えば先進的な長だったと言える。
 それだけ妻は特別な寵愛を受けていたとも言える。
 だのに、最終的には夫も息子も、受け入れてもらえずに終わった。
 母の寝所の前に輿が止まると、シンとナステイは手を取り合うようにして館の前室を訪ねた。そこには世話をする奴や薬師がいつも控えており、母親に取次いでくれるようになっていた。この日前室には薬師のナアザが居て、シンを見ると神妙な顔をして頭を垂れた。
 さて今日のご機嫌は如何だろう。
 ただ、こうして突然訪れても、門前払いされることは滅多になかった。それがせめてもの情け、母親の息子に対する気持なのかも知れない。今回もまた、ナアザが戸の向こうに了解を得ると、対面してくれるとの返事だった。そこでシンは、いつもそうするようにひとつ深呼吸をし、眉間に覚悟を示して歩き出した。
 口汚い文句、嘲笑、詰る言葉、いつもそれらに傷付けられて帰るシンには、先にまず心構えをする習慣が身に着いた。それでも、嫌な思いをすると判っていても、彼に取って只ひとりの母親は、何らかの心の拠り所であるようだった。既に神のように輝かしい父は亡く、縋れる者はこの母親ひとりなのだ。
 母の寝所は静かで、窓からさわさわと木の葉の揺れる音が、時折聞こえて来る程度の静寂が保たれていた。その枕元に着くひとりの奴が、シンを見ると些か恐縮したように頭を下げる。まだ年端も行かぬその少年は、最近になってこの家に仕えるようになった。
 そして彼と入れ替わるように、シンがその枕元へ移動すると、
「お母様、お加減は如何でしょう」
 この静寂を乱さぬよう、殊に静かな口調でそう話し掛けた。すると布団に横たわる、痩せ細った顔がカッと目を見開き、声だけは以前の力を保ったままこう告げた。
「それ以上、近寄るでない、呪われた子よ」
 胸の苦しさを我慢しているのか、言葉は切れ切れだったが、彼女の意思は変わらず確とその体に在った。一度感じた嫌悪や憎しみはいつまでも消せぬと、体現するような異様な対面の場の風景だった。再度書くが、決してシンに恨みがある訳ではない。ただ彼女はこの国が憎いのだ。
「私ももう長くない、何れあの憎らしき男と、同じ所へ行くであろう」
 この国と、前の長のカオスが憎いのだ。何故なら彼女は戦により併合した、隣国から献上された娘だった。当時の隣国は力のない小国だったが、それだけに穏やかに交易などして暮らす一族だった。それを武力で征服したことに同意する筈もない。国長を殺すまではしなかったが、人質として数人の娘を差し出すことになった、その取引も彼女には許し難いものだった。
 それまでの安寧な暮らしを奪われ、郷を奪われ、荒々しいこの国の第一婦となることに、彼女の神経は引き裂かれる思いだった。そんな過去が十八年ほど前に在った。
「スズナギ様、長くないなどと仰られますな」
 だが今は大事な国の母である。ナステイは誠意を込めてそう伝えると、奴の手にしていた団扇を借り、自ら優しい風を作って差し上げた。するとそのお陰か、毒づく唇が僅かばかり和らぎ、スズナギと言う名の母親はほんの少し、シンだけの為に言葉を綴った。
「おまえは好きにせい、こんな国のことなど知らぬ」
 だが、一見清々しく導くようなその言葉も、その後に続く話で台無しになる。母様は既に気が触れていると聞かされて、もう何年にもなるので今更驚きはしないが、それでもシンは深い悲しみに傷付いた。
「あの男と共に、この国が滅びるなら本望。そしておまえは、その滅びの象徴なのだ」
 母の言う、滅びの象徴と言う言葉は、これまで幾度も耳にしていたが、それでもシンの身に突き刺さる。つまり生まれながら不具を持つことを彼が、どれだけ苦にしているかと言うことだ。
 それについてよく理解しているナステイは、つい、シンをかばうように母様に逆らってしまった。
「それは、あんまりです…」
 するとその言葉に火が着いたように、スズナギは突然身を起こし、半ば叫ぶように怒りを迸らせた。
「おまえのような生娘に何がわかる!、こんな子が生まれたのは、私のせいではない、神のお怒りなのだ!。この国は滅ぶ、必ず滅ぶぞ…!」
 怒りとは、己の国を滅ぼされたことにもあるが、シンが不完全な体で産まれたことにもあるかも知れない。彼女はその二重の苦しみに物狂いし、自らも病となってのた打ち回るかのようだった。そんな姿を目の当たりにすると、シンは居たたまれなくなり、
「お母様…」
 彼女の興奮を慰めようと手を伸ばしたが、軽く振り払われてしまった。騒ぎを耳に戸口から顔を覗かせたナアザが、
「スズナギ様!、お静かに」
 と、些か驚いて部屋に入って来る。見慣れたナアザの顔を見付けても、それでも当分この状態は収まりそうにない様子を、他の者達はただ息を飲んで見守るだけだった。
 特に環境や母体の条件が悪かった訳ではないが、シンは完全とは言えない体で生まれて来た。だから今も世を忍ぶように表舞台を避けている。だが、彼はそれ自体を苦にしている訳ではない。普段の生活に別段支障のある障害ではなかったからだ。そんなことより、自身が不完全であることで、こうして父や母、周囲の者を悩ませている事実が遥かに辛かった。
 国を治める氏人の頂点、氏上主でありながら、滅びの象徴と不安視される状況が何より痛い…。
「主家にお戻りなさい、シン様。スズナギ様の気が荒れますから」
 ナアザが、もうこの場を収めるにはそれしかないと話すと、ほんの僅かな時しか居られなかったが、今日も大人しく退散するしかなくなった。今日も、まともな会話らしき会話は何もできず、ただ傷付いて帰るだけのシンを、ナアザもまた居たたまれない思いで見送る。この母子の間に愛情が存在しない訳ではないのに、何処までも食い違い、行き違う様はあまりにも不憫だった。
 国と言う圧倒的な権力、権力と言う越え難い高い壁が存在しなければ、ここまで通じ合えない親子ではなかっただろうに、と。
 館の外に出ると、シンは無言のままポロポロと涙を流していた。ナステイは自分の発言が場を悪くしたことを、酷く申し訳なさそうに落ち込みながら、
「お可哀想に…、折角の御対面でしたのに」
 自らも涙声になって彼の手を取った。ふたりして震えている、夕暮れの色付き始めた空の下、数羽の烏が群れを成して飛んで行くのが見えた。烏もそろそろ巣に戻って行く時間だ。彼等には彼等の幸福な暮らしと、親子の情と言うものが存在するだろうと思う。父亡き後、自分にはそんな最低限の家族の繋がりも持てなくなったことをシンは思う。
 けれどそれでも国の先頭を歩まねばならない、シンの明日を思ってナステイは言った。
「そのお悲しみもいつか、神々のお目に止まりましょう。この先にはきっと大きな幸あらんと存じます…」
「・・・・・・・・」
 この国は、この山鹿の国は今、孤独と不安に揺れる頭を掲げ、その見えない脆さと共に現状を維持している。果たして、強く逞しい部民の増え続けるままに、私達は繁栄して行けるだろうかと、一縷の望みを歌垣に託し、シンは時の過ぎるのを待つしかなかった。誰か理想的な長となる人物が現れ、その肩の荷を下ろさせてくれるまで…。



つづく





コメント)以前から予定してたパラレルなのに、このタイミングで山岳信仰の話とは、私も少し困ってます…。モデルは磐梯山だけど、まあ山自体は関係ない話なので書くことにしました。このコメントが後の記憶になるかな。
ところで伸が自分を「僕」と言ってますが、無論この時代(飛鳥時代より少し前)はそう言う一人称はなかったです。そこら辺は伸らしさを表現しなきゃならないのでお許しを。いやそれ以前に、古語と現代語を混ぜて書くのは難しいですね、時代小説らしく。



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