三者会談
三界の光
#8
The Strange Trinity



「地球に戻ってからの大半の時間は、主に惑星改造と、惑星移民を管理するコンピューターの設計に費やされた。単なる人間である私には把握し切れない、数多の情報を代わりに処理させる為のものだが、機械類には明るい私でも、基礎から全て設計することは不可能だ。故に既存のハードを組み合わせ、必要な機能を揃えて行くことになったが、その時にはナスティが隠れていた能力を発揮した。
 元々当麻の記憶データを持つロボットだ、何をさせるかによって、驚くような結果を出すのは当然かも知れない。彼女は理想的な構造のコンピューターを正確に、驚異的なスピードで組み上げて行った。またその設置は、月の地軸を真直ぐ辿った宙域に存在する、『ポリヴ』と言う場所が選ばれた。長くそこには暗黒物質が存在すると考えられていたが、周囲の宇宙との重力差でバランスを保持する、小さな袋のような空間であることが判った。
 計算上それが判ったのもナスティの功績。その中に人が活動できる場を作り、外宇宙のコンピューターとも繋がれるようにした、それら全ての設計もナスティの功績だった。彼女は正に、死してより自由に、意欲的に研究を続ける当麻の分身と化していた。
 そうして、情報の管制と統率を行うシステムは、特別問題なく完成へと近付いて行ったが。その安心に比例するように、また別の不安も生まれて来た。私が生存し管理できる内はいいが、私が死んだらこのシステムはどうなるのだろう?。私が死ぬまでに、異生命体の寄生と地球人の移民計画は完了するだろうか?。地球人の世界がどこまで拡大して行くか、この段階では全く予想できないのだ。
 それに、コンピューターのことはナスティに任せられるが、ロボットには生物の有り様は理解できないだろう。生きた人間を導く為には、冷徹な判断の前に人間らしい寛容さが必要だ。あくまで機械は道具であり、人がそれを運用する形でなければならない。
 ではどうする?。私自身が進める計画の上で、それは考えなければならない最大の問題だった。私が、私達がこの世から消え去った後、このシステムはどうなるだろうと伸にも打ち明けた。その後、彼が思索の末に出した答はこうだった。
『クローンを取ってみようか』
 彼は大学で既にその手法を会得していた。人のクローンを取ることは禁じられているが、技術的には植物も動物も大差ないことだと言った。ただクローンとは遺伝的に同じものが生まれるだけで、育つ環境により別物になることが知られている。うまくクローンが取れたとして、それに私の代わりをさせるのは無理だと、彼も判っている筈だった。
『何の意味がある?』
 と、当然聞き返すことになったが、そこで彼は意外な話を始めた。
『この世界を維持する為だけど、少なくともナスティには意味があるよ。君の管理が必要なロボットだ。当麻の意志を君が叶えてやるんじゃなかったの?』
 まさかと思った。あまりにも非日常的な困難が続く中、私は宇宙に出た当初の目的などまるで忘れていた。希望と共に消えてしまった友人の為にと、安易な考えで志願した探査の旅だった。私に取っては後悔ばかりの原点の思いが、今も伸の中で大事にされているのだから。
『当麻はナスティの中で、半永久的に生きて研究できるようになったんだよ。偶然もあるけど君の行動の成果だ。君はもっと未来を見届けるべきだよ』
『だが、私とは言えないクローンが、当麻の役に立つとは思えない』
『それはわからない、記憶のデータを残しただけでも、「当麻と言う個性」が復活してるじゃないか。何か方法がある筈だ』
 生体工学を学んでいた伸。そして彼は一種の超能力者でもあった。故に彼が可能と考えられることが、私に理解できないことも多々ある。確実な理屈でなくとも、彼が地球に取っての光明を予測できると言うなら、それはそれで頼もしいことだ。
 しかしその時の私は、そんなことより彼の心の動きを案じた。
『伸…、私は…』
 私はもう、学生時代の華々しい夢を追い掛けてはいなかった。天才的な発想を身近に得て、常に新しく面白い想像をしていられた日常、その先に繋がる己の自由な未来の展望、大学で良い環境を得られたことに当時は有頂天だったが。たった一年後の私には、その頃は真の幸福が見えなかったことが判る。
 自分が何者だろうと、どんな性格で何処へ行こうと、理解し見守ってくれる人が常に傍に居た。ただ子供の頃から知っていると言うだけで、その他の人間より愛情を注いでくれる人が居た。そしてその人は今も、自分の最善について考えてくれているのだから、私は何より彼の気持を裏切れない。
 だが、彼の意志を尊重することが、当麻との思い出を大事にすることとなると、話を飲み込むのが難しくなった。それで誰が幸福になるのだろうか?。無論当麻は彼の友人でもあったし、世界を救える才能を感じる人物だったが、伸が当麻に思うことは私とは違っていた筈だ。なのに何故?。
 何故彼は当麻を生かそうとしているのか、解らなかった。
『それにナスティはいつも一番に君を守ってくれる。僕がそうプログラムしたからね』
 彼はそれで満足だとでも言うように笑っていたが。
『完成するコンピューターはこの世界の頭脳、ナスティはその管理者、君はこの世界の生きたリーダーになる。その三つがセットで指導者なら、みんなが納得する世界を維持できるかも知れない』
 それとも、彼に取って最も大切なのは一個人でなく、地球の全ての人間だとでも言うのだろうか。自分を差し置いて、その他大勢をより愛することができるだろうか?。それでは、彼に傍に居てほしい私の気持はどうなる?、と思った。
『伸は何処にいるのだ…?』
『そうだね…、僕のクローンも取ってもいい。でも僕は僕の気持が残ればいいんだ。僕は地球を守りたい』
 そして彼の本当の望みを私は知ることになった。
『それと、君が好きだよ。僕はいつも見てるだけで、大したことはできないけど』
 彼は地球の為に、自分に成し得ないことを当麻に託そうとしたのだ。同時に私がこの地球の運命と共に生き存える為に。それが私の当初の目的にも適うことだったからだ。才能ある友人を宇宙に連れ出し、地球の問題を解決する夢が見られたらいいと…。
 だが結果的に、それを実現したのは伸だとも言えた。彼が居なければ恐らく現在はない。彼は何もできない訳ではない、むしろ彼の気持がここまで導いてくれたのだ。
『私には伸が必要だ。遠くから想うだけでも、生きなければ駄目だと言ったのは伸だ』
 私がそう返した意味を彼が間違えることはないだろう。例え彼が、大事な家族や私、当麻までも地球に含まれると考えているとしても、私は彼のようには考えられない。普通の人間以上でない私には、利己的な愛情しか理解できないのだ。私は彼に共に生きてほしかった。その時私が何より彼を望んでいたことを、彼が信じなかった筈はない。だからその後に起こったことは、決して彼の望みではなかった。
 その後丸二年の歳月を経て、誕生した私のクローンは、見た目は普通の子供と何ら変わらなかった。但し、伸とナスティとで苦心して集積した私の記憶データが、脳にインプラントされている。どのくらい成長するとその個性が出るのかは不明だが、伸はそこまでの手法の全てをナスティに伝えた。そして彼は子供を、私の家族に似せて作ったロボットと共に育てることにした。
 これで一応ひとつの問題が解決した。何年か毎に私のクローンを取り続ければ、ひとりの肉体が死んでも、すぐに交代できる別の私が存在する。私が生き続ける限り、私と共にこのシステムが存在する限り、地球を守る理由を忘れることはなくなった。如何なる正義も、当初の目的を忘れる頃に廃れて行くものだ。だが私達は決して忘れずに居られるだろう。
 だが、そうして地球人は救われたが、私は救われなかった。
 伸が死んだのだ。
 宇宙病だった。今はメジャーな病気だが、当時は全く知られていなかった。自覚症状のないまま進行するこの病は、死の直前まで不快症状が現れない。現在はウィルス発見後の投薬により、脱色症状に苦しむ者も多いが、それで充分に寿命を延ばせるだけ治療も進歩している。
 私はその時、すぐにクローンを取ることを思い付いた。やり方はナスティが知っている、彼自身が教えたのだ。しかしウィルスが邪魔をして、まともな細胞が取り出せなかった。考えられる限りの方法と薬品を試しても、そのウィルスは彼の体から離れなかった。結果ウィルスの浸食のない細胞を、どうにかして取り出す以外になくなったが、正確な作業を行うナスティにすら困難を極めた。彼女は幾度も、飽きもせず作業を試みていたが、失敗が重なるばかりだった。
 冷凍した細胞にもある程度の寿命がある。活性を失った細胞から、まともなクローンが取れるかどうかも判らない。望みがあると判断できる材料は、人のクローンが存在しないことから見てあり得ない。その後何年、何十年と時が流れ、私もナスティも、もう駄目かも知れないと思い始めていた。
 正常な地球人は残せても、私は彼を永遠に失ってしまったかも知れない。最早私の希望は、絶望の宇宙に浮かぶたったひとつの星のように、幽かな光の一点と化していた。それでも諦め切れない、どうしても戻って来て欲しかった。…私が地球と共に生きて行く為には。

 君が、また現れるのをずっと待っていたのだ。三百年の時を経て、元首はもう七代目になってしまった。その間私はずっとひとり、死んでは生まれ、生まれては死んで、本心ではもう地球がどうなろうと知ったことじゃない、とさえ思うようになっていた。だが、そうはさせまいと地球に味方する何かが働いたのか、それが神と呼ばれるものなのか、或いは地球の意志か…。そうして君はこの世に生まれたのだ」

 セイジの長い回想が終わるまで、よくその場に立っていられたとシンは思う。端末のモニターにはまだシンの、否、彼のオリジナルである人物データが表示されたまま、彼の顔を青白く照らしていた。
 そしてセイジは更に種明かしをした。
「だから私は生き続けている、オリジナルの記憶を移植されて生きている。連合元首として、事務次官補佐として、君の家の隣人として。そして君が生まれてから今まで、ずっと君を見ていたのだ」
 と、これまでに起きた不可解な出来事、疑問に満ちたこの世界の歴史など、彼はある程度そのからくりを見せてくれたが、それでシンの頭がすっきりする訳でもなかった。寧ろ受け止めねばならない現実の規模を前に、心が竦み切っているのを感じるばかりだった。
 そもそも、自分であって自分でない存在を意識したことはない。実際は居ない、もう遠い過去に死んでいる人物だ。そしてクローンの通説通りそれは別人だ。セイジが話したことの記憶も知識も、自分は何も持ち合わせていない。自分に何を期待されても、過去の人物と同じように振舞える訳がない。シンの頭はそんな考えで占められていたが、しかし理屈とは別に、胸に芽生えた奇妙な感情の存在も感じていた。
 セイジと言う人に対する同情や、憐憫を抱くことは間違いではないだろう。彼はこの三百年の間、そしていつまで続くか判らない永い未来を、常に生きて、常に地球を見守っていなければならないのだから。誰にも知られずに、誰も彼の真の苦労や喜びに共感できぬまま。それが如何なることかはシンにも想像できないが、決して安穏とした道程ではなかっただろう。
 故に、誰かに居てほしいと言う気持は解る。もし自分がその立場に置かれたら、三百年を待たずとっくに地球を捨てていたかも知れない。形態は変われど地球人が消え去る訳ではない、自分はその器じゃないのに指導者を押し付けられたんだ、などと言い訳をして。
 だからセイジがこれまで、計画通り代替わりして来たこの世の事実が、何よりシンの感情を揺さぶっている。彼は自分の知らない毛利伸と、その前に消えた羽柴当麻の希望を叶える為に、この未来の世界まで辿り着いた。苦悩の内にひとり残された後も、当初の意志をここまで強く持ち続けられたのだ。
 それが愛なのだろうか?。
 けれど自分はもう、彼の記憶にある毛利伸ではないと返した。
「…僕は、生体工学なんて知らないし、父の為にアストロノーツになろうとしている、ただの民間人のシン・モウリだ。君が生きる為の犠牲になる理由も、義務もないと思う…」
 言いながら、そんなことは解っている筈だと、シンは恐る恐るセイジの瞳を窺った。するとセイジは、確かに言葉以上の理解をシンに示していた。
「解っている、君は私と違って『毛利伸』の記憶は持たない。生体工学も知らなければ、ESP能力もない。だが正確には私も『伊達征士』ではない。元首交代の時までは、普通に自由に暮らしているだけの身だ。オリジナルは私から見ても過酷な状況の中、大事を成し遂げた人物だと思うが、現代にはやはり、現代の感覚を持つ『私』が必要なのだろう」
 それはつまり、自分に昔の姿を重ねてはいない、と言うことだろうか?。シンは少しばかり肩の荷が下りた気持で、溜息をひとつ吐くと続けた。
「じゃあ…、僕がオリジナルの毛利伸をトレースする必要はない、と言うんだ、君は?」
「無論だ」
 そして簡潔な返事に「おや」と思う。ここまでかなりセイジの心情を考え、態度や言葉にも気を使っていたシンだが、それをすっぱり切り落とされた気分だった。自分が思うほど相手は感情的ではないらしい。ただシンはまだ全てを把握できないでいる。自分にオリジナルの役目を架さないのであれば、今の自分は何なのかまるで解らないと、一連の話を続けるしかなかった。
「なら、何でこんな話を聞かせるんだ」
「本当は、少しずつ状況を理解できるようにしたかった。だがあの事故のせいで計画が狂ってしまった」
「事故…」
「君が負い目に思うことがないように」
 そこで漸く、全ての事件の根幹がシンにも見出せた。
「せっちゃんのことか…」
 そう、言われてみればそれまでは、何ら変わったことは起きない日常が続いていた。地球の歴史に多少疑問があろうと、家族がロボットであろうと、自分自身の生活には何の支障もなかった。そして、
「お陰で、私が傍にいられるようになった訳だが」
 と続けるセイジは、ある意味自分の平穏な生活を乱しに来た、悪魔や悪霊と同列の存在だとも思う。背景など知らなければ、ただ憎しみを向けるだけで良かった。自分に取っては今より、せっちゃんと居られた生活の方がずっと幸福だったのだ。
 シンはそんな考えの勢いに任せ、
「君は僕に、何をさせたいんだ?。いや、どうして今頃僕を再生なんかしたんだ!」
 思い付くままそう叫んでいた。生まれさえしなければ、この苦痛は存在しなかっただろう。無論幸福や愛情も感じることはなかったが、それでも意味なく生かされるよりはマシかも知れない。と、シンは今根本的な問題に悩み始めている。
 けれどセイジは彼の苦しみを見ながら話した。
「悲しい記憶は切り捨てなければ生きて行けない。だが希望がなくても生きて行けない。いつかの伊達征士も葛藤しただろう、毛利伸の体を残しておくことは、苦悩でも心の支えでもあった筈だ。だから君を再生する計画は、オリジナルの妄執の名残りだと私は思っていた。だが、そうではないと今は思う」
 そして、何故だがふっと表情を柔らげて続けた。
「君はクローンだが、嘗ての毛利伸の分身として生きて成長する。そして君が存在し生き続ける限り、私は過去の君から貰った愛情を、今度は君に返すことができる。それが君を再生した意味なのだ。私の希望は生きている、私が安定して存在する限り、地球人の希望も生き続ける」
「やめてくれ…」
「何故なら私は、君が生み出したクローンだからだ」
 セイジに取ってそれは、確かに喜ばしいことかも知れない。地球の為に生きる命を、生み出した母とも言える人間と再会したのだ。それがシステムの安定に繋がるなら正に好事だ。
 だがシンに取っては恐ろしい未来の宣告だった。何故なら自分は『地球の希望』だと言われてしまった。不完全なクローンでありながら、自分は生きているだけで地球を背負わなくてはならない。それは結局セイジと同じことでもあるが、過去の記憶が無い分あまりにも重いとシンは頭を抱える。
「そんなこと僕には関係ない…!」
 そうは言っても、既にどうしようもないことは解っているが、言わずには居られない。するとセイジは、そんなシンの気持を知ってか知らずか、自らのことを話し始めた。
「そう、今はもう関係がない。今は一時の混乱を忘れ、移民問題も概ね安定している。新しいこの世界では、君が幸福に生きていることが全ての幸福だ。そして私は代々の過去を思いながら、これからはずっと穏やかに役目を果たして行けるだろう。未来永劫、この世の終わりまで見ているだろう、」
 何れ太陽が赤色巨星と化し、地球も他の惑星も全てが焼かれ、生命体と言えるもの全てが死滅するその日まで。セイジ・ダテと言う名を持つ人は、人類の先頭に存在しなくてはならない。
「公の目的のみで生きるのは空しいが、これからは違う。今は君が存在している。私には明確に生きる目的ができて、君には感謝するばかりだ」
 既に悟りを開いたような物言いと、何処か義務的な諦めを感じさせる内容に、思わずシンは口を挟む。
「君は、それでいいのか…?」
 けれどセイジは、言葉通り不満の無い様子でこう答えた。
「私は選ぶことができない。元首の決めたことに従うだけだ。だが特別不幸な訳でもない」
 そう聞くとシンはまた、自身の怒りよりセイジの立場の悲しみを強く意識し始める。ひとり孤独に堪え、純粋な地球人を残す為のシステム作りと、社会の流れを導くことだけに生きた、過去の何人かのクローン達を思うと、確かに今のセイジが、それなりに明るい顔をしているのも解る。過去の人々は何を支えに生きていたのだろう?。それが、毛利伸の復活を夢見ることだったのだろうか?。
 嫌だと言っても逃れられない、深い悲しみと苦悩の歴史をシンは、どうにかもがきながら消化しようとしているのだが。
「僕は…」
『どうしたらいいんだ。僕に責任のあることなのか?。それとも…』
 その時。
 不意にセイジの上着のポケットから、微弱な振動音が鳴り始めた。他に誰も居ない端末ルームでなければ、シンには聞こえなかったかも知れないが、場を中断させる携帯端末の着信は思わぬ邪魔だった。事務次官補佐と言う立場か、元首のクローンだからかは知らないが、電源を切ることを許されていないのだろう。セイジは渋い顔をして携帯端末を取り出した。
 その様子を見て、シンは漸くこの回想の迷宮から抜け出せそうだと、俄に体の力が抜けて行く。勿論この問題は死ぬまで着いて来ると解っているが、今全ての答を出す必要はないと思う。暫くひとり落ち着いて考えたかった。その為にこの場から解放されたい。シンはそんな思いでセイジを見詰めている。
 ところが、簡単な相槌程度で相手の話を聞いていた、セイジの表情が徐々に険しくなって行った。困惑なのか、苦痛なのか、彼に取っての何らかの重大事が知らされたようだ。更に連絡を終えると彼は、選択を迷うように酷くゆっくりした仕種で、端末を元のポケットに戻して見せた。何事かと、尋ねた方がいいのかどうか、シンも応対を迷っていたがセイジは言った。
「セッティモ…、元首が、死んだ」
「え…?」
 その元首とは、現時点までポリヴに隠れ住み、元首コンピューターから地球の指揮をしていた人だ。今さっき聞かされた話から、今はシンにもその仕組みがすぐ頭に思い浮かんだ。つまり現在を支える父であり、自分の前任者が死んだのだから、セイジの受けた衝撃の大きさは理解できた。だがそれだけではない。元首が亡くなったとなれば、必ず他のセイジが交代しなくてはならないのだ。
 もしかして君か?。迷っているのはそのせいか?、と、目の前の人の様子を窺っている内に、セイジは突然シンの腕を掴んで言った。
「…来るんだ!」
「何を…!」
 そのまま強く引っ張られ、有無を言わせぬ彼の強固な意志が感じられた。恐らく、元首の交代に関する何処かへ行こうとしているのだろう。この只ならぬ状況と、眉の吊り上がったセイジの顔が恐ろしく、
「勝手なことするな!、僕には関係ないって言ったじゃないか!」
 シンは抵抗したが、何故だか相手は許さなかった。更にシンの肩を抱え込むように掴むと、半ば引き摺るようにその場を退出することとなった。
 自分の気持を察してくれない、強引なセイジの行動にシンは、それからさんざん喚き散らしながら歩いたが、人の目がある場所に出ると、研修生として恥ずかしいので仕方なく口を噤んだ。大声だけでなく暴れることもできない。連行される犯罪者のようにも見えなくない、セイジの抱え込みのせいで、シンは結局意のままに動かされていた。
 官僚達が使う高級ハイヤーに乗り、ふたりは小規模な宇宙港に到着した。月には輸送拠点となる大規模基地も存在するが、そこは一般の業務で使う宇宙港ではないようだ。格納庫にはふたりから、精々十人乗れる程度の小型機ばかりが並んでいた。恐らく要人の移動等に使われるものだろう。
 その格納庫に足を踏み入れた後、暫く歩くとセイジは漸く手を離してくれた。流石にもう逃げ出さないと踏んだのだろうが、確かにその通り、シンは珍しい機体の並ぶ倉庫に興味津々だった。一般人や業者が使うものではない、あまり見掛けないが技術は最高水準の小型機。そんなものに乗れる仕事に就けたら素晴しい。小型であればある程、操縦技術と注意力が求められる為、当然優秀なパイロットがその職に抜擢される。
 いつか自分はそうなれるだろうか?。複雑な背景があるせいで、希望の仕事を奪われたりしないだろうか?。シンは磨かれたクリアカーボンの機体に触れながら、理想と不安の先にある未来を考えていた。
 すると、
「それは最新型で相当値が張るぞ」
 と、セイジは奥の小型機からマイクを通して言った。格納庫に響くその声に、シンは思わず後ろに飛び退いたが、まあ、高価だからと言って触れたくらいで罪にはならないだろう。シンもこの難解な状況に、些か神経を尖らせているようだ。
 その最新型の小型機は、ゴールドチャイルド社のスワニー・マーク4と言ったが、その美しさを名残惜しそうにしながら、シンは取り敢えず声のする方へと移動した。するとセイジは、今見たものとほぼ同じ機体に搭乗しているではないか。
 正確には同じではない。二世代前のスワニー・マーク2だが、外側のカーボン仕様とエンジン出力が違う他は、性能が特に劣る機体ではなかった。デザイン的には全くと言っていいほど変わらない。それを見るとシンは、不謹慎ではあるが心の高揚を止められなくなっていた。
 この機体に乗せてもらえる。となると、先程までのしかめっ面から自然に口許が綻んで来る。実は元々あまり自制の効かない性格だと、シンは自身の欠点を認めている。ついさっきまであれ程悩み、怒っていたのに、こんな自分を見てセイジはどう思うだろうと、やや情けなくも感じていた。否、強引にシンを連れて来た彼なら、事をスムーズに運べる材料が存在したのは幸運だろうが。
 そして、そわそわしながら座席に上って来たシンに、セイジは尋ねた。
「操縦できるか?」
 シンは既にパイロットの資格は持っている。だがまだ研修中であり、初見の機体を、それなりの人物を乗せて飛行する自信はなかった。しかも「値が張る」との言葉が引っ掛かった。自分の稚拙なテクニックで、この芸術的なボディに傷でも付けたら…と尻込みしてしまう。
「いや…、今はまだいいです…」
 彼が丁重に誘いを辞退すると、セイジはその様子を微笑ましく眺め、操縦席のパネルを自動操縦に切り替えた。そして、スワニーは殊に静かな動作で、空港のエアゲートへと向かって進んで行った。

 船は今、月を離れ0方向に向かって飛行している。セイジはそれ以降何も話さなくなったが、シンには既に行先が知れていた。元首とメインコンピューターの存在する場所、ポリヴだ。一度見学してみたいと、月基地のオペレーターが話していたように、本来は元首以外誰も関れない空間である。高級な小型機から受けた高揚感と共に、シンの心には緊張も増して行った。果たしてそこで何が起こるのだろう…。



 ポケット空間とは、広い宇宙の中に多々存在するものらしい。要するに宇宙の小さな部屋だが、重力の捻れによって出来る腫瘍のようなものだとされ、俗にポリヴと呼ばれるようになった。侵入する時にかなりの衝撃があると、シンは月基地で聞いたがあまり感じなかった。機体の性能が優れているからだろうが、故に高級な船に憧れるのは当然のことだ。
 初めて目にしたポリヴの内部は、一見外宇宙と変わりがないように思えたが、直ちにシンはその違いを発見することができた。ここには煌めく星が存在しないのだ。窓の外には只管闇が続くばかりだった。しかし見え始めた建物と言うか、要塞と言うか、建造物から発する光のせいで、それ程違和感は感じなくなっている。建物の内部は普通に明るい照明が点灯していた。
 徐々に近付いて来るその建造物は、色のない、空虚なイメージをシンに与えた。当初の姿からは変わっているのだろうが、他にどう言い様もなく淋し気な雰囲気に、誰も見ることのない元首の居城が、まるで監獄のように映ってしまう。シンの感じる淋しさは、隣に座るセイジにも伝わっていたかも知れない。何故ならその淋しさを知る者しか、ここに立ち入ることはできないからだ。
 四角錐を上下に合わせ、パネルを張り合わせたような形の外壁。ポリヴに浮かんでいる唯一の建物は、壁の隙間の二箇所にエアロックがあり、そこから内部に入ることができた。セイジの船の自動操縦にはそれも、正確にプログラムされているようだった。発着所に誘導され、機体の動作が完全に停止すると、ふたりは言葉少なにそこへ降り立った。
 これから起こることが吉と出るか凶と出るか、それはどちらにも判らなかった。
 建物の内部は静まり返っていた。元首以外には恐らくロボットしか居ないのだろう、当然と言えば当然だが、それにしては広過ぎる造りの城に、シンは物悲しさばかり印象付けられる。長い年月の苦しみや悲しみ、それらが無意識の内に、そこかしこの床や壁に染み付いているようだった。運命に囚われた哀れな元首の心、このポリヴはどうすれば慰められるのだろうか。
 長く続く廊下は、何も無いグレーの壁が暫く続いていた。閑散としたエリアを歩く間は、ふたりの足音が妙に高く響いていた。自分が一歩ずつ核心に近付いていることを、それによってはっきり意識させられた。音は遠くの壁まで到達すると、幾重にも反響し、新たに踏み出した足音に交じって不協和音を聞かせる。耳に肌に、それは気味の悪い波動となって着いて来た。追い立てるような足元の唸りが、通り過ぎた後を塞ぐ壁と化して、いつまでも谺していた。
 そんな音の競演を気にしている内に、前方の突き当たりからポリヴの空が見えて来た。その窓に近付くにつれ、そこが広い円形ホールになっていることが知れた。外見は角張った建物だが、居住スペースはそれなりの優雅さがあるようだ。そう思うと、単調な廊下を早く脱したいとシンは思った。セイジがどう思ったかは知らないが、その部屋に近付くと彼の歩調も速くなり、シンには都合の良い状況となった。
 亡くなった元首、もうひとりのセイジが暮らした空間、そして新たなセイジがこれから暮らす空間だ。少なくとも外見よりは人の住処に見えるだろう…。
 ところが、その部屋に一歩踏み入れた途端、シンは思わぬ人物の声を耳にした。
「デシモ」
 と言って、前を行くセイジに声を掛けたのは、先日自宅に現れた青い髪のロボットだった。だから正しくは人物ではない。そして彼は親しそうな口調で、
「間もなく元首を交代する」
 と告げた。こんな時ロボットが、どんな表情をするかなど読めない。彼にはセイジと言う人間がどう映っていて、その死に拠り交代して行くことを、どう捉えているかは想像がつかない。だが、少なくとも彼はセイジの身近な存在ではあるようだ。だから簡潔過ぎる物言いをしても、神経に触ることはないようだった。
 すると彼は、驚いているシンの姿を見付け、
「やあ、シンを連れて来たのか?。連れて来られるくらい親しくなったと言う訳だ。早々に家族ロボットを引き上げて正解だったな」
 今度はにこやかな顔をしてそう言った。お客様に対し、そうした使い分けができるのは、相当高度なプログラムのロボットだと判る。ただ何故自分が歓迎されるのか、その点については今ひとつ解らなかった。
 そしてこのロボットの存在意義についても。
「君は…何者だ?。いやロボット?、昔の友達がベースの?」
「俺は俺さ、前に自己紹介したがトウマV2と言う」
「もしかして君が元首コンピューター…?」
 相手があまりにも自然で、その分複雑な機構を組み込んでいると判ると、シンは途端に元首コンピューターのことを思い出した。元首の脳が生きている説は嘘だと聞いたが、亡くなった友人の、当麻と言う人は感動的な天才だったようだ。それなら元首と自身を同期させるくらい、訳のないことだとシンは考える。
「俺はただのロボットだ」
「嘘、君は元首コンピューターに繋がってるんだろ、多分端末みたいなロボットなんだ。そうじゃなきゃ…」
「勘がいいな、これはオリジナルの為せる技か?」
 そして彼は、シンの追及姿勢にすぐに手を上げて見せた。そんな柔軟な態度が取れるのも、彼が酷く人間に近いことの証しだった。トウマの問い掛けにセイジは、
「さあ。彼にはESPはない。だがそんな素養は持っているんだろう」
 と話したが、オリジナルの持っていたテレパシーなどより、このロボットの方が余程すごいと、シンは目を見張るばかりだった。そして同時に、こんな完成された管理者が居るなら、自分は増々逃れられないと思う。特に何かをさせるつもりはないと、セイジは言ったが、このトウマがどう考えているかは判らない。機械である分冷徹な判断で、地球の最善の為に動くことは必至だと考えられた。
 せっちゃんのように、或いは亡くなった元首のように、その生死をも管理する彼がこの世界の神ではないのか。そんな考えに至ると、シンは袋小路の窮状を素直に吐き出していた。
「どうして…君達は僕に干渉するんだ。元首の為?、僕を再生したのは今更しょうがないけど、勝手に遠くから見てるだけなら、僕はもっと幸せだったのに…!」
 そう、例え聞いた話の通りだとしても、放っておいてくれれば何も煩わしいことはなかった。どの道自分は特別な力もなく、特別な才能もないただのクローンだ。生まれた意味を意識しようとしまいと、結果的に何が変わる訳でもないだろう、とシンは些か投げ遺りな考えにも至っている。
 ところがそんなシンに対し、セイジは無神経とも思える言葉で返した。
「熱帯魚だとしても飼えば毎日餌をやり、水槽の管理もするだろう。それと同じだ」
「なんて例えだ。シンは怒っているぞ?」
 そしてポカンとしているシンでなく、驚いて口を開いたのはトウマだった。恐らくセイジは無神経なのではなく、例えのセンスが悪いのだろうが、それについて、
「おまえはもっと人付き合いを学ぶ必要があるな」
 とトウマが指摘すると、セイジはまるで学校の友達とふざけ合うように、
「余計なお世話だ」
 しれっと相手の肩を叩いて見せた。ポリヴに侵入してからずっと、息詰まる思いで状況を見ていたシンだが、ふと、そこで不思議な安心感を覚えた。ただ冷たく空虚に感じていたこの場所で、義務や責任から来る拘束を離れ、人間らしい遣り取りが為させることもあるのだと。否、トウマは人間ではないが、彼ほどのロボットなら、ここに暮らす元首の話し相手くらいにはなるだろう。もしかしたら彼には、その役割も架せられているのかも知れない。
 シンがそんな風に、トウマと言う名のロボットについて考えていると、彼はセイジのマズい説明を、シンに改めて話そうと振り向いた。そして、
「干渉するのは地球の意志さ。俺達はただの駒に過ぎない」
 至って穏やかな様子でトウマは言った。
「地球の意志…?」
「過去の君が、どれだけ地球や身の回りの人を愛していたかと言うことさ」
 そう言えば、「君には人を幸福にする力がある」と、前に会った時に言われたことをシンは思い出す。その時は何のことやら見当がつかなかったけれど。
 最初に毛利伸の想いがあったからだ。「大事な人々と地球を守りたい」、その意志からこの世界は生まれたのだ。今ならそれも理解できる。彼がどれほど強い愛情を持っていたかが解ると、シンの瞼は自ずと開いて行った。
 セイジが自ら話したように、毛利伸の気持の強さがなければ、嘗ての伊達征士も、このセイジも、元首を中心としたこの世界も存在しなかったかも知れない。皆何処かの時点で絶望に挫けていたに違いない。隣人を思うことは誰にでもできる、特に高等でも何でもない能力だが、それが社会の原動力となることもある。その意味では、世に知られる誰より自分のオリジナルは偉大だと、ここまで来て漸く真実が見えて来る。
 毛利伸は何より大切なものを持った人だった。だからこそクローンを取りたかったのだと。
 すると、大人しく思考するシンの様子を見ていた、トウマがこんなことを呟いた。
「シンがこんな風に成長した姿を、代々の元首も見たかっただろうに」
 彼はシンが生まれた時から、今日この時までを詳細に知っている。そして恐らくシンが存在しない長い期間のことも知っている。彼にはシンのまともな成長が、何かしらの感慨を与えているようだった。それについてセイジが、
「誰もトウマの能力を恨んだりはしない。ロボットは諦めることを知らないから今がある。自ら己を再生したように、」
 と、トウマの努力を労うように続けたが、本人は今、そんなことより過去の元首達を思っているようだった。
「みんな、俺の頭の中の写真でしかシンを見たことがなかった。それでも冷凍ポッドの存在が、過去六代の元首の心の支えだった。その狂おしさを知らない、おまえは本当にラッキーなんだよ」
 先程まで柔和な態度を見せていたトウマが、今は随分頑なに見える。シンは彼が、若いセイジに何かを伝えたがっていると感じた。ああ、恐らくこれまでずっとこんな風に、元首のクローン達は教育されていたんだろう、と思った。
 ただ、シンの疑問はまだ解き明かされなかった。結局このトウマV2とは何者なのだろう?。セイジの回想には登場しないロボットだが、何故か一連の流れを全て知っているらしい…。
 そこでトウマが場を外し、何処かへと歩き出したので、
「今のは、どういうこと?。ロボットが死んで再生するの?」
 シンは隣に立つセイジに小声で話し掛けた。すると意外な話を耳にすることとなった。
「いや彼は、話に出て来た『プロトタイプナスティ』なんだ。元々羽柴当麻が設計し、そう名付けたが、その当麻自身の記憶が組み込んであるせいか、彼は何度目かのバージョンアップで姿も変えてしまった。今はオリジナルにかなり近いらしい」
 ならば、トウマV2とはオリジナルの羽柴当麻が、自ら復活したようなものだ。
「じゃあ、同じ学校の友達が、三百年経ってまた会ったってこと?、かな」
「そう。いや、私も詳細は知らないんだ。聞きたければトウマに聞くといい」
 若いセイジも知らない、トウマV2の持つ三百年の記憶は、ある面で恐ろしいものに感じる。誰よりも全ての状況、全ての経過、全ての者の感情を知っていることを、今さっきセイジへの苦言として見せたばかりだ。ロボットには、人間と同じ心は持てないかも知れないが、彼の膨大な記憶が過去の元首達の悲しみと共に、ある種の心を形成しているのではないか、とシンには思えた。
 毛利伸が伊達征士の希望と化したように、伊達征士はロボットの羽柴当麻の心を形成した。そして羽柴当麻は常に、若いクローン達に道を示してくれる。その三者の関わり方は、現在の世界を見れば素晴しいと思えるけれど。
 ただトウマは恐らく、人には抱え切れない苦悩をひとり内包している筈だった。過去の全ての元首と共に歩み、語り合って来た唯一の存在なのだから。それ故シンは、
「いや…いい…」
 と、今は断った。心ある者には幸せも悲しみもある。ひとりの元首が死を迎えたこの場所で、更にトウマの悲しみを掘り起こすのは気が引けた。だがそんなシンの様子を見て、
「シンはロボットにさえ気を回すのだな。私はそんな感傷的に考えることはないが」
 セイジはそう笑っていた。何故笑っていられるのかもシンには解らなかった。こんなに大事な場面なのに、まだ実感が湧かないのだろうか?。
「考えないの?。君達には大事な事じゃないの?。これから元首になる君には」
 シンは率直に、しかしセイジの方を向かずに尋ねた。この後彼はこのポリヴに、元首となって隠れてしまうのかと思うと、はっきり記憶する行為にも嫌気が差した。今、セイジはどんな顔をしているだろうと、想像するだけでシンは俯いている。
 けれどセイジは、特別態度を変えることなくこう返していた。
「いや私は…、私は今の自分にそれなりに満足している。それでいいんだ。丁度この時代に生まれ君に会うことができた。外側を除けば、オリジナルからは随分変わっているだろうし、君にも何も強制できないが、新しい私が君を好きになるのは私の勝手だ。伊達征士として過去の悲しみを引き摺っている訳じゃない」
「・・・・・・・・」
 セイジの持つ感情の一部は、植え付けられた記憶から来るものだ。
 好きになるのは過去の悲しみの反動だ。
 とシンは思うが、新しい時代を受け入れて生きる、セイジの前向きな意識も偽物ではないと思う。人は変わって行く、ロボットさえ進化して行く、昔のまま留まっているものは何も無い。過去が悲しかったなら、未来は幸福になれるよう努力する。その過程を充実して生きればいいと言うなら、それもひとつの正解かも知れない。デシモ・セイジ・ダテについて、シンは今そんな理解をするに至った。



つづく





コメント)またもや容量ギリギリです(^ ^;。前から押された分がここに回って、ここのシーンの終わりを、また次に送ることになっちゃいました。ううう…。とりあえず次へ。


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