記憶の征士と伸
三界の光
#7
The Strange Trinity



「その頃私は、科学大学校の一学生だった。…この場合の私とは、正確には私でなく、オリジナルの伊達征士のことだ。
 地球に大規模な地殻変動が起こった三百年と少し前、当時既に人口増加に悩んでいた地球が、災害により一時問題を解決したのは学校で習う通りだ。だが、新政府の設立と共に生活が安定すると、人口は再び増加へ転じて行った。私が生まれた頃は、もうあと五十年もすれば深刻な食料危機が訪れると予想され、それが地球の最大の悩みだった。
 今は惑星改造と言う手段があるが、当時この技術はごく一部の科学者の間で、理論的に可能とされているだけだった。その理由は、まず机上の理論がその通り実現できるかどうか、検証と実験を繰り返さなければならず、その為に莫大な費用や時間が必要だったからだ。政府は気長にそれを待っていられなかった。そして政府の梃入れがなければ、当然進展することもなかった。
 その頃政府が力を入れていたのは、あらかじめ条件の整った星を探すことだった。
 宇宙に新天地を探す、とだけ聞けば、一種のロマンティシズムも感じられるが、まだ訓練された宇宙飛行士や限られた者しか、宇宙に出ることがなかった時代だ。宇宙船も、航宙技術も今とは比べ物にならないほど悪い。地球圏から外れた場所で事故に遭えば、通信すら満足にできなくなる。そんな条件下に、ロマンだけを求めて飛び出せる者が、どれだけ居るかは高が知れていた。
 そこで政府は苦肉の策として、この宇宙探査事業に志願する者に高額の手当を、更に移住可能な星を見付けられた場合は、一生遊んで暮らせるほどの報償金を出すとして、一般有志の乗組員を募ることにした。
 その頃私は科学大学校の一学生だった。数在る大学の中で、専門校としては最高峰を誇る大学だったが、それだけにそこに集う人間は優秀で、その中に在っては、私は特に目立つ学生ではなかった。
 科学とひと口に言っても色々ある。私はどちらかと言うと工学に近い、動力の専攻だったが、世の中が前途のような状況だったこともあり、主に宇宙船技術を研究していた。当時人気があったのは宇宙物理で、そこには本当のエリートが集まっていたと思う。その意味でも、私は注目される存在ではなかった。
 だが学生生活こそが全ての出発点だった。大学でできた新たな友人に、その宇宙物理専攻で、見掛けからは想像できない天才児がいた。私は彼が様々な研究に、的確なアイディアを持ち込み、必ず何らかの成果を上げる場面を幾つも見ていた。彼の発想は面白いだけでなく優れている。彼の語る世界には明るい展望が開けている。私は次第に彼の、向かおうとしている未来に惹かれて行った。
 将来、彼はこの地球を支える重要な研究に携わり、必ず有用な人物となるだろうと思っていた。閉塞感の漂う地球の現状に於いて、そして個人的な考えの上でも彼は希望だった。
 ところが、その友人は在学中に交通事故で死亡する。自分でも可笑しいと思えるほど、酷いショックを受けた私は暫く人を避けていたが、唯一そんな気持をも解ってくれる、もうひとりの友人が居た。
 彼は幼馴染みでもあり、また、俗に言うテレパシー的能力を持っていたが、それを公にすることもなく、どちらかと言えば目立たない存在だった。彼は生体工学を専攻していた。名前を毛利伸と言う。そう、君のオリジナルだ」
 セイジが事の背景を話し始めると、却ってシンは収まりの悪そうな顔になった。判り易く説明する為の前置きに、余計に混乱させられている。当時の記憶を持たないクローンの分際で、自分をオリジナルと同一視できるだろうか。或いは、そこにも何か理由があるのだろうかと。
 だが、この段階でシンが納得しようとしまいと、セイジは話さなければならなかった。この世界の重大な秘密のひとつに触れた、シン・モウリと言う名を持つ人物が、必ず知らなければならない過去の歴史。現在の不思議な調和が存在する世界に、彼がどう関係するかを明かさねばならない。
「これから話すことは私と、毛利伸と言う掛け代えのない友人と、一体のロボットしか知らないことだ。まずは疑わず聞いてほしい」
 セイジは慎重な態度を見せながら、いよいよ話を本題へと続けた。
「…私が科学大学校に入学したのは、単に乗り物を作るのが好きだっただけだ。地球の抱える深刻な人口問題や、社会情勢を真剣に考えることなどなく、ただ自分が好きなことを仕事にしたいだけだった。逼迫した社会情勢を肌身に感じない時代は、人口問題など他人事のような学生も多かった。だがそんな時に、自らの発明で世界を変えると豪語する、とんでもない天才に出会った。
 名を羽柴当麻と言った。彼は専門外の研究にも多数携わり、各所でその頭脳を評価される、ある意味理解し難い存在だったが、不思議と私には馬の合う友人だった。その彼が当時最も関心を寄せていたのが、居住可能な星を探す宇宙探査事業だった。
 彼の専門、宇宙物理から言えば、無料で宇宙を体験できる絶好の機会だ。そこでもし居住可能な星を見付けられれば、立派な個人研究所を建てることも夢じゃない。何も見付からず帰った場合も、一年の休学に充分見合うだけの手当が貰える。社会にも貢献できて一石二鳥の宇宙探査だ。
 だが話を聞く内に、彼は自身の利益よりも、地球の未来を真面目に考えていることを知った。天才であるばかりに、凡人には手の及ばない領域にまで、普通に考えを巡らすことができたのだろう。私は彼の優秀さに感心するばかりで、ただ彼が望む通りになればいいと思っていた。
 しかし彼の望みは潰えた。同時に私もひとつの希望を失った。が、日が経つに連れ、私には彼の意志が残されたと強く思うようになる。もしかしたらそれは、強迫観念のようなものだったかも知れない。ただの思い込みだったかも知れない。当麻の希望を叶えることで、虚ろな気分を解消できるかも知れないと、それに集中して行った。
 私は早速、宇宙探査事業に関する資料を集めた。一般有志の志願者は、ひとつの探査船に最低二名の乗員が必要だった。それを知った時、真っ先に思い付いたのはもうひとりの友人、毛利伸だったが、すぐに考えを変えることになった。
 幼馴染みであるが故に、彼も私をよく知っていたが、私も彼のことをよく知っていた。彼は気の優しい気配り屋で、誰より家族や仲間、身近な人間を大切にしていた。私は当麻の夢の為に一年を費やすつもりだが、単なる友達付き合いで彼を連れて行くには長過ぎる。彼が大事に思う家族らが、それに良い顔をするとも思えなかった。
 そして思い付いたのが、生前当麻が設計したロボットだ。これを完成させ、助手として連れて行くことにした。ある基準を上回るものであれば、乗員と認められることが資料に載っていた。但し、基準を上回る為に問題となったのが動力で、それだけは学生レベルの技術では間に合わなかった。
 仕方なく非公開情報を盗み見ることにしたが、その手伝いをさせたせいで、伸に計画を知られてしまった。できれば彼には、直前まで伏せておきたかった。私自身の研究とは関係ない、しかもかなりの危険を伴う未知への旅に、快く賛成してくれるとは思えなかったからだ。無論、彼ひとりの反対で揺らぐような、柔な決意ではなかったが、自分の我侭で人の気を揉ませたくはなかった。
 しかし予想に反して、彼が強く反対することはなかった。事情を知った後の彼は、ただ私の行動を案じる様子だけを見せていた。その静かな反応が後に何を起こすか、その時想像できなかったのが誤算だ。
 彼は私の組み立てたロボットに、悪戯で疑似感情をプログラムした。ロボットの機能に影響はないと言い、それは殆ど変えられることなく、『プロトタイプナスティ』と言う名のロボットに残された。結果的にそのプログラムが、彼を宇宙探査に連れ出すことになる。ロボットは疑似感情の造り主に、出発時間と場所を教えてしまった。彼を関わらせないよう配慮した、私の計画が水の泡となり、その時はどれほどがっかりしたか。
 結局彼は無理矢理着いて来ることになった。だが、彼に先見の明があったのか、それとも何らかの加護によるものなのか、誤算だと思えた全てのことは、後に私に取って最大の救いとなった。

 今思えば随分思い切ったことをしたと思う。宇宙船に乗るのも初めてなら、宇宙港に足を踏み入れたのも初めてだった。私達は船外に広がる、絵空事に思われていた宇宙港の風景を眺めながら、最後にはやはり後に残る人々のことを考えていた。私も伸も、自身の家族に何も告げないまま来てしまった。伸に取っては本当に、心の苛まれる時間だったに違いない。
 だが、地球を離れてしまえば、探査船の内部はそれなりに快適だった。丸一年の行程の為に、当時の技術で最高の機体を政府は提供していた。船内はひとつの家のように設計されており、操縦室や機関室の他は、キャンピングカーに似た生活空間になっていた。特に一般公募の乗員用には、安全を期す為に良い条件が与えられていた筈だ。
 そして、探査結果を報告をする以外に特にすることもない。プログラムされたルートを航行するだけで、緊急時以外は操縦することもない。積み込まれた食料も手を加える必要はなく、味も想像ほど不味くなかった。従って一日の中で最も時間をかけることは、筋肉を落とさない為のトレーニングとなっていた。それ以外はほぼ遊んでいたようなものだ。私達は初めて見る地球の外観や、限りなく連なる星の瞬きに心踊らせていた。
 地球を出発して十日程の間、これと言った問題もなく、私達は予定通りの任務を遂行していた。船にも何も異常はなかった。航行ルートに於いても、障害物のある場所はあらかじめ通らない設定になっていた。万一岩石等が流れて来ても、船が自動的に回避行動をするシステムだった。
 何も問題はなかった。だが宇宙は広い。気が遠くなるほどに。人の考えの及ばない物が存在しようと、何らおかしなことはない。
 それは、言ってみれば単純な事故だった。船がそのルートでの太陽系の最端、土星を横切って三日程経った頃、突然全ての機能が停止した。途端、機体が激しく上下左右に揺さぶられ、中の私達は嫌と言うほど床や壁に打ち付けられ、後に気を失ってしまったらしい。だからその時何が起こったのか、正確なことは解らない。恐らくブラックホール的な、重力や磁気のむすぼれのようなものだっただろう。気付いた時には、船は見知らぬ宙域に放り出されていた。
 それだけならまだしも、激しい震動で機械類の多くが損傷し、燃料タンクにも異常が発生、頼みの綱の通信機まで破壊されてしまった。
 自力で直そうにも限度がある。船に積まれた資材でどれだけのことができるかは、機械に慣れた私には容易に想像できた。せいぜい通信機を、それ相当の時間をかけて修復できるかできないか。しかしそれが成功しても、地球と通信できる宙域かどうかも判らない。自ら移動するエネルギーも無い。燃料タンクの液体窒素の残量が、残り十%を切っていた。タンクの損傷により外に漏れ出してしまったようだ。
 内部電源と、食料や生活物資だけは残ったものの、生き延びられる喜びがある筈もない。私達は最早、絶海の孤島に取り残された囚人だった。このまま見知らぬ宇宙空間で、何をするでもなく、何の為でもなく、ただ命を費やして生きるなど気が狂いそうな思いだった。
 宇宙を眺めるのもそろそろ飽きが来ていた。出発した時点では何もかもが目新しく、こんな経験をするのも良いものだと、本来の目的を忘れ楽しんでいられた。それが、こんなことになるとは誰が予想しただろう。地球の科学力の未熟さを恨むしかない。
 ほんの数カ月前までは、名も無い一学生として普通に暮らしていた筈だ。平均レベルから言えば、少しばかり頭の出来は良かったかも知れない。だが広く社会に貢献しようなど、聖人君主のような考えを持つこともなく、私は偶然この船に乗り、運悪くこの事故に遭ってしまった。居住可能な星を見付けた訳でもなく、それどころか地球に帰れる宛てもない。ただ故人を思うばかりの行動が、こんな結末になるとは遣り切れなかった。
 それとも始めから、これは死出の旅だったのだろうか?。友人の死に捕われた私が招いたことだったのか。否、未来を捨ててしまうには私達はまだ若過ぎる。地球に残して来た思いも多過ぎた。だが偶然近くを通り掛かる船に、助けられる可能性も限りなく低い。船にプログラムされたデータに出ない宙域を、地球の船が航行するとは思えなかった。
 これからどうにか、通信機を直して地球と連絡を取れたとして、再び地球の土を踏めるのは恐らくかなり先のことだ。それまでに私達は幾つ年を取るだろうか。果たしてそれまで船内の食料がもつだろうか。考えれば考えるほど八方塞がりに感じる。私達は途方に暮れる他なかった。

 私は二、三日の間、船の中央の居住スペースでずっと考え事をしていた。考えるほど深みに嵌まると判っていながら、他に何をする気にもなれなかった。伸は自分の寝室に篭っているようだった。事故が起こった日にそこへ下がってから、一度も姿を見なかった。
 ところがその日、彼は私の前に現れ、心からではないにしろ笑顔を見せて言った。
『いつまでも考え込んでても、しょうがないよ。とにかくさ、できることをしよう?、暇潰しにもなるし、…もう暗いことばっかり考えるのやめようよ』
 彼にしても精一杯の言葉だっただろうが、私は上の空だった。
『あれから僕は、ずっと考えてたんだ。母さんや姉さん、お義兄さん、親戚や友達や学校のこと、色々思い出してたよ。それで思ったんだけど、もし僕が居なくなったら、誰も僕と同じようにその人達を想えないだろ。それってみんなを大事に思う人間が、ひとり減るってことだよ。だから僕は、できる限り生きることが責任だと思うんだ。遠くからでも、神様みたいにみんなのことを考えてなきゃって…』
 真面目に聞いていた訳ではなかったが、話を始めてから、前向きな言葉につられるように気を取り戻して行く、伸の様子を不思議に思い私は顔を上げた。蒼白だった彼の顔は確かに血の気が戻り、上気した頬や耳が赤味を帯びていた。
『自分が消えちゃったらさ、その瞬間に自分の好きな世界も消えるんだよ。自分はひとりしか居ないんだから、自分の愛した世界がなくなるのって、淋しいと思わない?』
 続けて彼が聞かせたその内容は、後になって私に重大な意味を齎したが、この時はまだ充分に把握できる状態じゃなかった。それより私は、この短期間で彼がどう絶望を振り切り、人を説得しようと思うまでになったのか、現状の彼の様子が信じられなかった。
 何故なら、私は私の意志で宇宙探査の旅に出たが、彼は私に着いて来ただけなのだ。最初にこの話をした時から、強い反対はしなかったものの、快く了解する態度でもなかった。だから何も告げず出発しようと考えたのに、結果的に巻き込んでしまった。もうどう責任を取ることもできない、この経緯を彼はどう思っているのか不思議だった。
『伸は、私の勝手を責めないのか…?』
 けれど、彼はそれには答えず私の手を取って返した。
『ナスティを直してあげようよ、仲間は多い方がいいだろ?。またチェスでもしよう』
 彼はチェスの類はあまり得意ではなかった。それまで何度対戦したか知れないが、私に勝ったことは殆どなかった。つまり彼は、私の遊び相手をさせる為にナスティを、と言ったのだ。この期に及んで尚人を気を遣う彼のことを、心から『優しい』と思ったのはこれが初めてだった。
 そしてなかなか立ち上がれない自分が、酷く情けなかった。今すぐ舌を噛んで死ぬほどの意気もないなら、定められた日まで生き続けるしかない。腹を括るしかない状況を知りながら、私はまだこの不運な出来事を飲み込めずにいた。こんな筈ではなかった。大事な友人を思うことが何故、こんな顛末に繋がったのかどうしても納得できない、そんな意識が心の中を巡るばかりで。
 しかし伸は、私が自ら選択した結果に苦しんでいることも、既に理解してくれていたのだろう。それから暫く彼は黙っていたが、私はずっと彼の穏やかに見守る視線を感じていた。非難や叱責の意識など微塵も感じない彼の気持に、凍り付いた私の感情は徐々に溶かされ、温められて行くようだった。例え不幸に巻き込んだのだとしても、彼が居てくれて良かったと繰り返し思った。
 そう言えば私は、ナスティと言うロボットの存在もすっかり忘れていた。自分が組み立てたにしては有能過ぎる作品で、探索作業と分析はほぼ彼女ひとりで済んでいた。やらせれば家事でも力仕事でもこなせた。伸の言う通り、確かに仲間は多い方がいい。このままここで朽ち果てるにしても、私達には運がある、必ず看取ってくれる人が存在するのだから。
 それが本望ではないが、そんなことを考えると少しばかり気が紛れた。頭の何処かがすっきりして来ると、早速彼女の様子を見て来ようと、伸の手を借りその場を漸く立ち上がった。しかし、まともに食事を摂らなった体は思うように動かなかった。一歩踏み出してよろめいた私を見て、
『ナスティの前に君をどうにかしないとね』
 と彼は笑った。私もつられて苦笑いをした。勿論心からではない。だが作り笑いができる程度の正常さは戻って来た。それは大した進歩だった。
 伸はひとりその場を離れ、故障しているらしきナスティを見に行った。その間、改めて今漂っている宇宙を見回してみると、窓には太陽系などより美しい銀河が広がっていた。船の機能は停止しているが、宇宙の気流がゆっくりと、どこかしらの方向へ船を運んでいるのが判る。このまま何処か素晴しい星に辿り着くことがあるかも知れない、などと考える余裕も出て来た。
 立ち上がってみれば、何と言うことはなかったじゃないかと、窓ガラスに映る自分に私は言い聞かせた。星の海は限りなく、その広さの分だけ可能性を秘めている筈だ。悲嘆に暮れるばかりでは、新たな命運の輝きを見逃してしまうかも知れない。宇宙は広い、それこそが私達に残された最後の希望だと。
 その内伸が、階下の通信室から戻って来た。
『今ナスティを見て来たけど、右目のレンズが割れてるくらいで、他は特に壊れてる感じじゃないんだ。なのに機能は完全に停止してる。どうなってるんだろ?』
 私はその現状を聞かされると、止まっていた筈の思考が意外に早く回転するのを感じた。地球から遠く離れたとは言え、二週間程度のブランクでは研究心は廃れないものだ。
『内部の故障か…?』
 だが、外側に損傷がないなら、あの程度の衝撃でありえないと思った。当麻の設計はそれなりの強度が計算されていた。だから女性型だと言うのに、身長は二メートル近くになっていた。
 その時今すぐに、と思ったが、通信室に向かおうと歩き出した私を伸は止めた。思い立ったらすぐ行動、と言う私の性分を彼はよく心得ていた。エネルギーの切れ掛かった体では、まともに修理もできないだろうと、彼は先回りして食料の蓋を次々開け始める。
 そんな点でも、彼がここに居てくれて良かったと安堵しながら、私はひとまず落ち着いて、当たり前の生活行動を取り戻して行った。
 不幸中の幸いだが、ナスティは特に壊れてはいなかった。伸は機械に詳しくない為、ロボットの機能停止を異常と受け取ったが、何のことはない、頭部にあるスイッチがオフになっているだけだった。何処かにぶつかった際スイッチに触れたのだろう。再び起動させると、
『…何ガ起コッタノ?、今ノ震動ハ?』
 彼女は突然、事故直後の時点に復帰した。それから暫くは、彼女に事情を説明することで時間が費やされた。

 私達は何かできることを常に探していた。取り敢えず何かをしていなければ間が持たなかった。ナスティの目のレンズは代わりがない為、そのままにしておくしかなかった。片目は使えるからそれほど支障はない。ナスティに関してはもうする事がなくなった。
 次は通信機だ、と、私は壊れた通信機の内部を分解して、千切れた銅線やケーブル類を引っこ抜いた。その代わりに使える物はないかと、船内を隈無く探して回った。見付けられたメインケーブルの予備の他は、何処の何とも知らないネジ類やワイヤーなど。そこに、他の壊れた機器から取り出した銅板等を合わせ、これでどうにかならないかと考え倦ねた。これに集中していれば他のことは忘れていられる。そんな思いだった。
 ナスティが工具箱から持ち出したカッターで、銅板を器用に細く切り出した。私と伸はそれを紙やすりでもっと細く削って行った。ロボットである彼女は流石に、人の手より正確な仕事をするようにできていた。銅板を切って銅線を作ろうと言ったのは私だが、満足な工作機械の無い船内では、本来は無理なことだったかも知れない。当麻のロボットを連れて来た目的は、全く違うことだったが、こんな場面でも彼女の有能さは有難かった。
 銅線を必要な分だけ揃えるのは気が遠くなる作業だ。しかし私達がそれを苦にすることはなかった。時間はこの際どうでもいい、ただ無心に作業を続けることが、心を平穏に保つひとつの手段だった。それは飽きることなく何日も続けられた。
 だが作業も手慣れて来ると、それをしながら別のことを考えられるようになるものだ。黙っていると再び、どうにもならない暗い考えが押し寄せて来る。伸が何を思っていたかは知らないが、私は段々と地球での生活を思い出すようになっていた。
 もう戻ることはないかも知れない、とは言え、勉強も研究も中途半端なままになってしまった。何の為に努力して大学に入学したのだのだろう?。家族もさぞがっかりしていることだろう。そもそも、この船が予定の軌道を外れたことが、地球で認識されているだろうか?。私達は消息不明だと。否、私は自業自得と言ってもいいが、伸と、伸の家族に与えた不幸は何を以っても償えない…。
 私は彼の世界をも壊してしまったかも知れない。今も尚優しい意識で居られる彼を前にして、私はそれが最も辛かった。
 そんな回想と悔恨の日々が続き、私はその頃明らかに気分が滅入っていた。伸が幾度か、
『元気出そうよ?。…と言っても、無理な時は無理か』
 などと話し掛けてくれたが、彼の気遣いに尚更胸が痛む思いだった。
 個室に居ても、ベッドの横の窓から広がる宇宙は、豊かそうに見えて私には何も与えてくれなかった。光り輝く星は美しいばかりで言葉がない。宇宙の闇は何処までも冷たく物静かだ。どれほど求めても、誰も何も、良いとも悪いとも話してくれない。その宙に浮いた罪の意識が、私の中で日々膨れ上がって行くようだった。
 悪運を招いたのは私だと。或いはここに至る自分の行動に、落ち度があった、過ちがあったと糾弾されるならそれで納得するものを。それとも間違っていないのなら、無意味な自省を止められるだろう。ここに神は居ない、裁きを下す第三者が居ない。そして伸も何も言わない。だから私は己を迷うことになった。
 私は許されるだろうか。この後に幸運を望んでも良いのだろうかと。
『僕に何かできることない?』
 その時、個室の入口に立っていた伸は、私の様子から何を感じ取ったのか、ゆっくりと歩み寄ってベッドの端に座った。それを見るともなく見ていた私の額に、彼はまたゆっくりとした動作で唇を押し付けた。
『…何だ』
 考え事をしていたせいもある、私は少なからず驚いていた。すると彼は、
『淋しいって言ってるからさ』
 と、見透かしたように笑って返した。忘れていたが、彼はそれなりのレベルの感応者なのだ。自ら意志を伝えようとしなくとも、強く思うことは自然に知れてしまう。
『勝手に人の心を読むな』
 私はやや不機嫌にそう返したが、そうでないことは私にも彼にも判っていた。そして懐かしい、遠い過去の記憶が甦って来るのを感じた。私達が知り合ったのは小学校に入る前だった。まだこれと言った隠し事もない子供の頃は、ゲームのように互いの考えを当て合って遊んだものだった。彼はその頃から、私の思うことは大体何でも言い当てられていた。
 そんなこともなくなったのはいつからだろう。無論年令を重ねる毎に、思考を読まれることは不快を伴うようになって行く。他の友人や社会との関わりも複雑になって行く。その内彼とは段々、一線を置いて付き合うようになったが。
 ただ、今思えば子供時代の私達は究極の繋がりを持っていた。この現状に於いて、そんなことを思い出してしまうとは切なかった。
 否、思い出すように仕向けたのかも知れない。彼はもう一度私に尋ねた。
『僕に何かできること、ない?』
 そして身を預けるように私に寄り掛かると、多少気恥ずかしさを見せながら言った。
『今僕はきっと、宇宙で一番君のことを愛してるよ。ハハ…』
 その途端、塞がれていた私の意識にひとつの答が齎される。私は彼に済まないとばかり思っていたが、現実の形はそうではなかった。彼が何故ここまで着いて来たのか、何故今ここに居合わせるのか、もっと彼の言動に注意していれば、早く気付くことができたのだろう。
 彼は子供の頃と何ら変わらない、原始的で素直な愛情を示しているだけだと。自ら距離を置いている内に、私は判らなくなっていたが、彼はその間もずっと変わらぬ気持でいてくれたのだろうか。
 と思うと、私は躊躇うことなく彼の襟首を引き寄せ、自分から口付けた。
 そして私は初めて彼に触れた。彼の言う「何かできること」が、その意味だったかどうかは判らないが、例え何だったとしても彼は受け入れてくれただろう。彼は私を許してくれた。始めから許してくれていたのだと、熱い皮膚の内に、或いは応える吐息や仕種に、私は確と感じ取ることができた。
 愛とは強いものだ。
『僕が着いて来て良かっただろ?』
 悪戯っぽい彼の問い掛けに、『後悔していないのか?』と聞こうとしたが止めた。後悔していない訳がない。恐らく着いて来たことではなく、優しさから私の暴走を止められなかったことを。だが今はその現実を乗り越え、彼が選択した意志に私は救われた。否、私達は救われたのだ。
 他に誰も居なくとも、先がまるで見えなくとも、私達が通じ合えた事実は永遠に価値あるものとなった…。

 それから過ごした時間は、そこに辿り着くまでより長かった筈だが、絶望に打ちのめされていたそれまでとは、比較にならないほど穏やかな時間が続いた。相変わらず、なかなか進まない部品作りは続けられていたが、その間も暗い考えに落ち込むことはなくなった。過ぎた過去や不安な未来を見るより、今生きている時間をそれなりに楽しめるようになった。それは全て伸のお陰だった。
 彼のことを、強い人間だと意識したことは過去になかったが、こんな状況下に置かれても、己の悲しみや苦悩を押さえて尚、他人のことを懸命に考えていられる、彼の心の逞しさは例えて言う葦のようだと思った。それは真直ぐに空を目指して伸びる、私の希望のイメージでもあった。
 だからこの先のことは、彼の示す方向に従おうと私は決めていた。
 私達はそれからずっと、毎日を寄り添って過ごしていた。世界中に、この広い宇宙の中にたったふたりしか居ないと、錯覚を覚えるような日々だった。最早それを悲しむこともない。むしろそれまで囚われていた社会の、規則や常識から切り離された所で、私達は人間本来の欲求を理解したような気がした。富や栄光を得て喝采を浴びることより、すぐ傍に気持の通じる誰かが居ることが幸福だ。
 思い出してみれば、私を正面から理解してくれた人間は少なかった。そして中でも大事な友人と呼べる者の中に、伸が居たことが今は不思議にさえ思えた。事態はまるで、こうなることを想定して巡って来たかのようだ。運命とは必ず何かひとつの保険を用意し、人の希望を失わせないようにしているのだろうか。
 それは恐らく、これから何があろうとも、私は何かに因って助けられ、導かれて行くことなのだろう。伸もまた何かに守られて行くのだろう。それが如何なる救済であろうと、自身の気に入らない恵みであろうと、今は流れに乗るしかない時なのだと思った。
 気流に乗って流れて行く船と同じく、私達も素直に流されて行く。操縦不能の探査船の一室で、私と伸は時折そんな話もしながら、いつまで続くか判らない漂流の旅を続けていた。

 その後、船内で小型のカメラが見付かり、ナスティの右目を修理することもできた。そのカメラを分解する前に、ふたりと一体で記念撮影もした。懐かしんで見ることがあるとは思えない写真だが、それはナスティの頭脳の中に大切に保存された。私達には無理でも、彼女ならいつか私達のことを地球に伝えられるかも知れない。そんな話題もいつしか、笑って話せるようになっていた。
 穏やかだった。私達にはたった二十年程の人生だが、その中で最も穏やかな時間を過ごしていた。しかしその時、それは何の前触れもなく私達の元にやって来た。
 前の事故と似たような現象がまず起こった。船内の電気系統が全て停止、と言っても既に、生命維持に関する物しか動いていなかった。ところがその後の様子は全く違っていた。暫しの後に電気は復帰し、特に震動などはなく、代わりにゆっくりと機体が持ち上げられている気がした。前の時とは種の違うブラックホールか、未知の磁場に遭遇したのかと思った。
 と、その時伸が何かを感じて頭を抱えた。何らかの意のある生物の思考、しかし地球人類とは掛け離れたものだと彼は言った。すると、それまで遥かな宇宙を見渡せた窓の外に、薄靄のようなものが現れ、この船を段々に包み込んで行くのが判った。私達は何かに捕われてしまった、と私は一瞬青褪めたが、伸の様子を見るとそこまで危険を感じていないようだった。殺気と言うものはなく、ただ漂流物を調べている感じだと彼は続けた。
 こんな時は、彼の持つ能力が羨ましくもなった。地球で生活する分には厄介な能力でも、非常事態にはこれほど役立つことはない。彼の通訳を通さなければ、事態を把握できないのは何とも歯痒かった。だが未知の生物と直接交信する彼に、苦労がなかった訳ではない。やがてはっきりと捉えられた相手の意志に、彼はパニックを起こしそうに震え出した。
『オマエハ、ナンダ、ドコカラキタ…』
 始めに受け取れたのは、途切れ途切れの単語だったと言う。しかしほんの数分の内に相手は、伸の持つ言語を分析してまともに話し掛けて来るようになった。
『地球と言う、星には、おまえのような、人間と言う、生命体が、いるのか…』
 しかも記憶を読まれていた。とてもじゃないが、地球人には太刀打ちできない相手だ。それを覚ると伸は途端によろめき、私はその後ずっと彼の体を支えていた。
 彼が怯えるのも無理はなかった。地球の情報を安易に盗まれ、後に地球の危機の原因となったらどうする。それだけはどうしても回避したい、との必死の思いで、彼は相手にメッセージを送った。
『君の、目的は?、何?』
『…我等の宿主を探すこと』
『宿主…?』
 返って来た答は、私達には酷く不可解なものだった。
『我等は、おまえ達の言葉で言う寄生生物だ。但し我等は存在の為に養分を必要としない。元はひとつの生物だったが、体は滅び、意志だけが別の生命体として残った。我等は少し前まで、ウェズンと言う星の民と共に生きていた。しかしウェズンはノヴァ化し、体ある生物は消え去った。再び放出された我等は、新たな宿主を探し旅をしている』
『それが目的…?』
『我等の望みはただ生き続けることだ。それだけは体ある生物だった頃から変わらない。その為に寄生する生物を環境に強く操作する。全て我等が生きる為だ』
 相手がどのような存在なのかは、少しばかり判ったものの、はいそうですかと流せる話でもなかった。このままでは彼等は確実に地球を目指すだろう。彼等が寄生することに因って、地球人は何かしら変えられてしまうだろう。例え寄生されたことに気付かないとしても、地球から見れば一種の侵略ではないか。
 どうしたらいい。と、ふたり苦しい議論をする中で、私には別の見方も生まれていた。
 地球は今人口増加に悩んでいる。その背景のひとつは、近場の惑星には移住できないと判断されたことだ。だから宇宙探査の方向に力を入れている。しかし、既存の星を一から改造する技術も研究されていることを、私は大学寮のサロンで聞いたことがあった。宇宙科学には詳しくないが、惑星改造と共に人類自体の強化、それが合わされば人口問題は解決するのではないか、と思った。
 ただ、誰がそれを許し実行するのだろうか?。
 私達はあくまで想像で話していただけだが、その想像も最早彼等には筒抜けだった。
『おまえがやればいい』
 タイミング良く伸に届いたその言葉を、当たり前だが彼は拒絶した。流石にそこまで短絡的に事が進む文明レベルではない。
『無茶だよ!、僕は政治のことなんて何も知らないし、人の先頭に立てる性格じゃない。…征士ならまだ…』
『何を言うんだ!、地球を勝手に統治などできるものか…』
 伸はこの話題に余程慌てたのだろう、出さなくていい私の名前を出したお陰で、相手は可能な事として話を進めて行った。
『我等と通じ合える知能を持った生命体だ、これまで我々に己の意志を伝えられたものは無い。宙を渡る船も作れる。それだけで充分ではないか?』
『そんな…無理だよ、理解できないよ』
 そう、通じているのは伸だけで、地球人全てが彼のように意志を伝えられる訳ではない。勿論彼より優れた能力者も、探せば幾らか存在するかも知れないが、太古の昔、あらゆる動物と話ができたと言うような、卓越した能力者はもう存在しない時代だ。
 それとも、伸ではなく私を見て彼等は言うのだろうか?。既に私の話すことも普通に見聞されている状態だ。ここに居るふたりのサンプルを見て、地球人の平均を予想しているのかも知れない。そうだとしたら、彼等の要求から逃れられる条件は何もなかった。地球人は確かに、それなりの高度な文明と技術を持った生命体だ。確かな道筋さえ示せば、現状の世界の流れを変えることは可能かも知れない。そして、
『我等が協力しよう』
 と、思いも拠らぬことを彼等は伝えて来た。
『我等は今のように、一塊となっている時には意があり、意によって対象の思考を操ることもできる。分散すると意も散じてしまうが、それが元はひとつの生物だった証だ。我等と取引するなら、我等はおまえ達の計画する通り意を動かそう。そして我等が人間に寄生できる状態になったと、おまえ達が判断した時に我等は分散しよう』
『ま、待ってよ、取引って…』
 そこで初めて出て来た『取引』と言う言葉に、私達は更に、今が決定的な選択の時だと思い知らされる。
『この取引には、我々に何も不利がない。おまえ達を無視して勝手に寄生してもいいが、知能あるおまえが苦悩するなら、考えようと言うだけだ』
 途端に恐ろしくなった。言われてみれば確かに、彼等は了解など得なくても行動できる。短時間で言語を分析し、交信し、自力でこの宇宙を渡って行ける高等生物なのだ。そして高等であるからこそ、敢えて私達の意見を聞いてくれていると言う現実に、今、最善策を出せなければお終いだと覚った。
 まさかこの自分が、地球人の未来を左右する立場に置かれるとは思ってもみなかった。むしろそんな話題には疎い方だった。だが最早言い訳を考える時ではない。彼等が地球人に寄生することを止められないなら、何を選択すべきか、考えられる道はひとつだと私は思った。
『…ならばこうだ』
 勿論それが正しいかどうかなど判らない。だが何か提案しなくては、最悪を回避できないのも確かだった。私の無理矢理でつたない意見を伸はどう思っただろう。
『地球人そのものを開け渡すことはできない。地球人をそっくり変えてしまうことが、私達の責任としてのし掛かるのは堪えられない。ただ、地球はこれから近隣の惑星を改造し、そこに植民をし始めることになる。地球人は宇宙環境に対しかなりひ弱な生物だ。環境の整わない場所に送り出されるなら、強靱な体が欲しいのは本望だろう…』
 こんなことを勝手に決めてしまって良い筈もない。しかし現実はそうなって行くのだ。

 事は嫌になるほど上手く進んで行った。思考を操る生物が関わっているのだから当然だ。
 宇宙探査船の調査を打ち切った政府は、惑星改造の研究と実地調査を急ピッチで進めて行った。火星の調査に向かった最初の一団に、異生命体が寄生してみたところ、体は確かに環境に適応し易くなったが、通常の人間とは微妙に遺伝子を違える結果を生み出した。このことはまだ公表してはいけない。今更どうこう文句は言えない。私達は植民の民を売り渡す約束をしてしまったのだから。
 漂流していた異生命体に助けられ、私達は予想しない形で地球に戻って来た。しかし成り行き上、元の生活に戻ることもできなかった。私達はこれから半永久的に、異生命体の寄生状況が安定するまで、影から政府を動かす立場でいなければならない。決定を下したのは私だから、その責任を負うのは当然かも知れないが、家族にさえ何も伝えられないのは辛いことだった。事が落ち着くまでは混乱が起きぬよう、誰にも真実は明かせなかった。
 ただ、この隠密状態は伸には苦痛だろうと思い、彼だけは一時的にでも、元の環境に戻ってみるよう私は提案した。宇宙探査が打ち切りになり、帰還させられたことにすれば問題はなかった。それきり彼が戻って来なかったとしても、始めから彼には何の落ち度もないことだ。私に彼を責める権利はない。
 だが彼は首を横に振った。彼に取って何より大切だった家族や身の回りの人々。それを犠牲にする気持が固まるほど、事態が重く感じられていたのも確かだが。その時はもう、彼の意志は私にも明確に解るようになっていた。いつまで続くか判らない、政府への干渉をずっとひとりで行う私の為に、彼は残ってくれたのだ。
 否、そうしてくれなければ私もどうなっていたか、正直なところ自信はなかった。例えそれが地球全体の為とは言え、正体を明かさず、個人的には誰とも関れず、ひとりで一生を過ごすなど正気の沙汰ではない。だが私が信じていたように、伸は私を見捨てないでくれた。
 それがどれほど重大なことだったか。
 私達の苦悩は、こうして地球に戻った後にも続いていたが、少なくともまだ希望を失うことなく前進していた…」



つづく





コメント)セイジの語りを1ページに収めたかったけど、元の長さからしてやっぱり駄目でした(- -;。容量的にもう書けないので先に進んで下さい〜。


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