当麻とみどり
トロイメライ
#3
Traumerai



「そんな馬鹿な…、一体どうしたというのです!」
 カユラは蒼褪めた面持ちで、震える唇を必死に堪えるようにそう呟く。一度静まり返った部屋に、言葉は重々しく重なる鐘の音のように響いていた。
 日に焼けた砂壁の、黄色く荒んだ背景を背にして座る、ラジュラと彼女の視線の先には、疲労困憊といった様子のナアザが肩で息をしていた。事態の状況を確認する為、走り回っていたらしきことが窺えた。けれど彼等が生産する商品から、殺人事件が発生した今となっては、労を労う言葉も後回しになってしまう。
「だから人選は慎重にやれと、あれ程念を押したではないか!」
 煩さそうな前髪の下から、ラジュラは怒りを込めて訴えた。自らの手で作り出した商品、『トラウメン』がこんな結果を招いたことへの怒り。そもそも始めから、絶対に安全な物とは言い切れないと、この物体に関しては慎重論を唱えた彼だ。それを押し切って販売に持ち込んだ、その他三人に責任があると言って良かった。
 誰も、この世界の人間を苦しめたいとは考えない。まして殺そうなどとも。この世界の豊かさや平穏さに、どんなに焦がれて羨む気持があろうとも。
 遣り切れない思いで見詰めているふたりに、
「言っとくが、俺じゃないぞ」
 と、ナアザは苦しい息を整えながら返す。そう言われると、ひとり頭数が足りないようだ。
 カユラがふと、開けっ放しになっている玄関のドアを見ると、そこにはじっと動かない誰かの影が映っていた。皆に責められることを察して、そこから歩を踏み出すことができないらしい。なので、
「観念して、早く入っていらしたらどうですか、アヌビス」
 と外に居る彼を促した。

「大体おまえはやる事がいい加減なのだ!、我等が何の為にここに隠れ住み、日々苦労して働いているか分かっているのか!」
 夕方の、薄暗いアパートの部屋に響く怒声を受けて、怯えた様子で玄関に佇むアヌビスは、まともにラジュラの顔を見ることもできないでいた。台所に続く玄関の三和土(たたき)は一日中陽も射さず、この時間にはかなり寒く感じられる。だが彼はそこから動かず、夕暮れ色の狭い和室に集まる者達を牽制していた。彼はそうして何かを訴えていた。
「…そう言ったって、高々数時間で人の全てを見抜ける訳ねーだろ」
 それは根本的な問題。
 そう、『トラウメン』の持つ人格は、この世の誰かの人格をコピーしたものだ。長い年月を経て、様々な影響を受けて形成される人の個性が、そう簡単に作り出せる筈もない。そして実のところ、製造する本人達にも、人格コピーの原理は理解できていなかった。彼等はある物の特性を利用し、人格を持つ球体を作り出しただけだ。寧ろ人為的にプログラムした人格なら、問題になる要素は取り除けて安全だったのだ。
 久しく人間界から離れていた彼等が、一念発起してここへ様子を探りに来た時、豊かな筈の地上で、何故か心の貧しい人間が溢れているのに気付いた。特に都市部には、群集の中に在って孤独に悩む者の多さに驚かされた。だから「この物体には商品価値がある」、と判断された。
 行き場のない心、自我に押さえられた本能を受け止める物が存在すれば、悩める人々も幸せになれるだろう。それが感謝される商売となれば、自分等にも喜ばしいことだと思えた。
 地上でビジネスを展開し、合法的に必要な物資を手に入れる。長い戦乱の末に荒れ果てた彼等の世界、「妖邪界」に物資を持ち帰ることが最終目的だ。実行に至るまでに時間は掛からなかった。誰もが故郷を再興させたいと願っていた。けれど、商売の種はあまりにも、不安定な要素を内包した未解明物質。それを正しく理解していたのは、開発者のラジュラだけだったようだ。
 なので誰も、アヌビスひとりが悪いとは思っていない。ナアザもカユラも、神妙な顔付きで彼の言動を見守っていた。
「無理があったのだ、始めから。ああ、おまえの忠告を聞かなかったのが馬鹿だった、俺は先の見通しなど考えたこともなかった…」
 そう言って、素直に己の非を認めたアヌビスには、もうきつく当たることはできなかった。
「だろうさ」
 ラジュラは溜め息交じりに相槌を打つ。
「正直に言えば、これまで事故がなかったのが不思議なくらいだ。どれ程慎重にやろうと、人の心など単純に測れるものではない。大事件でなくとも、主との不調和が出る可能性は必ずある。来るべき物が来たって感じだな」
 長く眉間に皺を寄せていた彼も、今は落ち着いてそんな話を聞かせていた。ラジュラには事の顛末が予め見えていたようだ。今それを知ったところで後の祭だが。
「尻馬に乗る訳じゃないが、俺は自信を持って人を選んだことは一度もない」
 アヌビスが躊躇いながらもそう言うと、ラジュラは「それ見たことか」と、他のふたりには笑って見せた。こんなやり方ではいつか困った事になるぞと、彼は常に話していたからだ。売る者、買う者、その双方に利益を齎す筈の『トラウメン』は、望むことばかりの人間に、都合が良いだけの幻だったのかも知れない。そしてそれを売り捌く彼等の、築いた信用も怪しいものに成り下がってしまった…。
 悪さするつもりはなかったのに、とカユラは唇を噛み締める。浅はかであった我々が、悔しさと悲しみで満たされる今を感じていた。こんな思いをするとは予想もしなかった。ただ双方が幸福な気持になれる、素晴らしい商売ができたと喜んでいたのに。
 けれどもう、その思いに留まっても居られない。
「…そういうことなら、今すぐ辞めなければいけませんね」
 カユラがそう言うと、ずっと状況を見ていたナアザも、
「これまでバラ撒いた分はどうする」
 と、既にカユラの出した結論に同意していた。
「勿論全てを回収する他ありません」
 淋し気な響きで発せられた言葉。けれど彼女の意志は固まっていた。また事件が起これば、何れは自分達の存在も明るみになってしまうかも知れない。その時は嘗ての「隣人」でなく、「侵略者」と呼ばれるかも知れない。それではあまりに淋しい結末だ。だから答に迷うことはなかった。
「だが…」
 その時、考え込む質ではないアヌビスが、珍しく思案顔で呟いた。
「回収すると言っても、大人しく返してくれると思うか?」
 確かに、気に入って大事にしている者が、要求通り返してくれるかどうかは疑問だ。「事故があった」とは伝えられても、できれば「殺人」は伏せておきたいところだった。でなければ、異世界人である彼等が今後、この世界を徘徊することもままならなくなる。
 それについて、各々が思案を繰り返していると、
「ま、その時は奥の手を使うのだな、その方が利益にはなるが」
 ラジュラはさらりとそう言った。この期に及んで利益を考えられるのは、彼が大して責任を感じていない証拠だ。けれど、そう言ってのけてくれたお陰で、皆が事を進め易くなったのも確か。
「仕方ありません、後始末はきちんと着けなければ」
 カユラがそう返すと、他のふたりも同意したように顔を上げ、またラジュラの方を向いた。一時は言い争うも、思う事は同じだとそれぞれ確認したようだった。
「行こうか」
 ナアザは切り替えるように声を掛け、きびきびとした動作で玄関へ向かった。その後を慌てて着いて行こうとして、アヌビスはテレビの上にあった袋を取りに戻る。彼は近所の犬や捨て猫に、餌をやって回るのが日課となっていた。無論仕事の片手間にだ。

 そこだけ時代に取り残されたような、町中の古びたアパートの一室。恵まれた世界に紛れて、自分達も幸せごっこをしていたのかも知れない、と思うと切ないが、そう過ごせたことも今は、恵みの内に感じられなくはなかった。
 何故ならここでも、妖邪界と同様に暮らして行ける。
 万が一の時には、地球人に紛れて生きる選択もできると、彼等はこの数年の内に知ったのだ。
 だから全てが失敗ではない。
「では私も参ります。後片付けをお願いしますね」
 カユラはそう言い残して、アパートを後にした。



 それから、更に十日程経ち、暦は十二月に入っていた。
 秋の彩りが霞み始め、景色もいよいよ寒々しくなる季節の到来。年末のイベントに向けて、商店街に点灯したイルミネーションの華やぎも、一本裏の通りに入れば、たちまち別世界の幻に思える都会の陰陽。ビルの間の暗がりを抜ける風は、雪国の澄み切った空気より冷たく感じる。
 と、去年はそんな感慨を持って街を歩いた。当麻はそれを思い出してフッと笑みを浮かべる。正面から歩いて来た女性が、おかしな様子の彼に顔を顰めている。けれど今は他人がどう思おうと、自分が幸せならいいと感じられていた。また当麻がそう感じるように、恐らく、彼の胸ポケットに収まった『日吉丸』も感じていることだろう。それが判るから彼は幸せなのだ。
 その日当麻は、本を求めに新宿に出向いたが、その帰り、まだ冷え込む時間には間があったので、例の雑居ビルの様子を見に行くことにした。
 実は六日前に、約束していた真田君と共にやって来た日、初めて「休業中」の札が下がっているのを見た。その時はまだ午後四時頃で、早過ぎたかと、夜まで待ってみたが結局店は開かなかった。たまたまその日が休業だったのなら、真田君は運が悪いとしか言いようがない。しかし当麻には何故だか、それが不自然に思えて気になっていた。
 彼が職安通りまで歩いて来ると、そこから見える雑居ビルと、取り巻く景色には何ら変化がないのが判る。薄汚れた印象のビルの並び、職安から出て来る人の冴えない表情、何もかも、これと言って変わらない新宿の一面だ。真田君の為にも己の為にも、今日は開いててくれ、と当麻は心の中で念じていた。しかし、物事がそう思うように成るとは限らない。
「あ…、れ?」
 エレベーターのドアが開いた瞬間、当麻は我が目を疑った。いつもそこから見える筈の、黒い布で覆われた店先のディスプレイ、休業の日ですらそれはそこに在って、ロープで壁際に括り付けてあった。それが今は姿を消している。ジャングルのように纏められた観葉植物の鉢も無い。それどころか、店自体が蛻の殻となったように彼の目に映った。慌てて、その近くまで走り寄った。
 すると店の奥には、見慣れぬ銀髪の男がせっせと履き掃除する姿があった。当麻が感じた通り、そこは正に蛻の殻だった。置かれていた家具も調度品も、怪し気な箱の山や一面に貼られたポスター類も、彼が記憶していた全ての物が撤去され、今は壁に残る染みくらいしか、眺める物も無い有り様だった。
「あのー…」
 と、当麻はそこに居る男に問い掛ける。男はすぐに気付いて、声の主にフイと頭を上げて見せた。その顔には何世紀も前の肖像画にあるような、黒い眼帯が斜に掛けられていた。この風貌からして、恐らく店の連中の仲間であろうと察しが付いた。
「ここの店、何かあったのか?。先週も休みだったけど」
「ああ…」
 ところが男は恐ろし気な形に似合わず、にこやかに笑ってこう答えた。
「事情があって、店仕舞いすることになった」
 通常、閉店理由を逐一客に説明しないものだが、当麻にはそれでは納得できなかった。『トラウメン』に限って言えば、赤字を出す商品とは思えないからだ。
「事情って何だ?。あ、いや、話せる範囲でいいんだが」
 内部事情を探る者、と怪しまれても困るが、もう一歩踏み込んだ話を是非とも聞きたかった。その何処となく必死な様子を見て、ラジュラは当麻にこんな説明をする。
「いやなに、この手の商売はひとっ所に留まるものではなくてな。手を変え品を変え場所を変えて、元々転々としているのだ。まあ、いずれまた会うこともあろう」
 何れまた、との言葉を信じて待つ気もなかったが、習慣的な移動なら仕方がないと、当麻は割にすんなり諦める心境になった。確かに占い師風情は、全国を渡り歩く者が多いと聞く。己にツキのない場所と思えば、留まらないのが占い師のやり方だろう。
 但し、怪しい商品を売り付けて雲隠れ、という話でないなら。
「それじゃしょうがないか…、ここで買った物のアフターケアはどうなるんだ?」
 当麻が言うと、ぴくりとラジュラの眉尻が動いた。
「買った物と言うと、トラウメンのことか?」
 問い返した彼の表情は、当麻の必死さとさほど変わらない様子だった。やはり当麻の睨んだ通り、彼はここの連中に近い人物だと見て取れる様子。なので、
「そうだ」
 と、当麻ははっきり答えていた。きっと何らかの情報をくれるに違いないと。
「そうか…、トラウメンの主なのか、君は」
 するとラジュラは掃除の手を止め、姿勢をきちんと改めるように向き直る。当麻には知る由もないが、彼は恐縮するように親切な口調で語り始めた。
「それなら心配に思うのは分かる。今ここの従業員は、トラウメンの持ち主を回りに出払っているのだ。取り敢えずそれを待ってくれ。君の所にはまだ来ていないようだが、その時に必ず説明を聞ける筈だ」
『持ち主一人一人を回るとは、何とご丁寧なことだろう』
 話を聞いた当麻は、勘違いながら酷く感心していた。高価な買い物故、サービスもきちんとしているらしいと。
 勿論製造主側は、既にトラウメンと結び付いてしまった人間から、それを返してもらうか、それに代わる処置をするかの後始末をして回っている。ラジュラが殊に親切な対応をしたのも、その突然の回収処理に、謝罪の意思があるからだ。恐らく持ち主は皆、手放した後の空白に苦しむだろうから。
「でも俺、住所を教えた記憶はないんだが…、大丈夫か?」
 当麻が呟くように話すと、それを聞き流して笑いながら、ラジュラはやはりにこやかに答えるのだった。
「案じなくて良い、カユラなら聞かずとも判ることだ」
 占いとはそう言うものなのだろうか。当麻には疑問ばかりが残った。



 確かにあの男は、嘘は言わなかった。
 夕方になって当麻が研究所に戻ると、その玄関先にはカユラが立っていた。この寒空の下、いつからそこにそうして居たのか、薄手の衣装一枚で佇んでいる姿は、何やら痛々しく当麻の目に映った。
「よう、カユラちゃんだろ」
 まだ遠い内から、見付けるなりじっと彼を見ていたカユラだが、何処となくいつもの彼女とは違う、元気がなさそうだと当麻は感じる。そして彼女のすぐ横まで来ると、漸く表情を和らげた彼女に、
「今、店の方に行ってたんだ、引っ越しするんだってな」
 と話し掛けた。
「ラジュラから聞いたのですね?。ええ、私達ここを離れることになりました。今はこうして、お客様にご挨拶して回っています」
 その淋し気な語り口調は、本当はここを離れたくない、との感情を当麻に伝えていた。
 如何なる事情か知らないが、自分と大して年も変わらない彼女が、何らかの運命を背負わされているように思えた。独立した科学者の生活も楽ではないが、目に見えぬ物に振り回される占い師の生活も、恐らく理不尽な事ばかりで巡っているのだろう。と、当麻は良心的に考えて、
「あ、トラウメンの話なんだろ?、こんな所じゃ寒いから中に入ってくれ」
 極めて穏やかな調子で彼女を促した。
 ここに来た本当の理由を知らない当麻が、優しい言葉を掛けてくれるのがカユラは辛かった。他の多くの所有者のように、「今頃何しに来た?」と、迷惑そうな顔をしてくれた方が心は痛まない。戸惑いながら、カユラは彼の意向に従うことにした。
 そして研究室のドアを潜れば尚更、カユラには気の重い状況を感じさせた。閑散として飾り気のない部屋に、壁面を埋め尽くす本棚の、夥しい数の書籍や書類ばかりが、彼と言う存在を囲む家族のように見えた。語れども返すことのない紙の束、機械や電子部品、無機物ばかりの彼の王国。その角に設けられた応接セットに腰を下ろし、果たして彼から「友達」を奪い取ることが、正しい行動だろうかとカユラは考えていた。己の行為はまるで、良いことを言って与え、気紛れに取り返す悪魔のようだと。
「はいどうぞ」
 温かい湯気の上がるコーヒーカップを渡して、当麻は彼女の向かい側の席に座る。
「店に居た奴に、何か説明してもらえると聞いたんだが。こいつに注意することでもあるのか?」
 そして、彼はブルゾンの胸のポケットから、輝く『日吉丸』を取り出して見せた。変わらない、彼が初めてそれを手にした時と同じ、柔らかなオレンジ色の光を今も放っていた。つまりこの持ち主とトラウメンの関係が、正常に保たれていることを示していた。カユラはそれを暫くの間、遣る瀬なく見詰めていた。
 害のない人格、害のないトラウメンも無論存在する。所持者と人格提供者の、人選さえ間違えなければ問題はなかった。上手く行く筈だった事を悔恨する気持も、まだ残っている。
 けれど泣いても笑っても、あとふたつを回収すれば終わりだった。
「実は、大変申し上げ難い事なのですが…」
 カユラは意を決するように話し始めた。
「先日、この商品に関して事故がございまして…、それが店仕舞いの理由です。トラウメンの製造は終了する運びとなりました。それで…、これまで販売した分につきましては、お気に召して、大事にされているお客様には、大変申し訳ないのですが、」
 しかしそこで、当麻はその先の言葉を遮った。話の流れから彼女の言わんとしている事は、大方予想が付いていた。
「ま、待て」
 先程までの穏やかな彼とは違い、強張った表情には焦りの色が見えた。
「まさか、返品しろって言うんじゃないだろうな!」
 その問いにカユラは答えなかった。けれど無言でいても、じっとトラウメンを見詰めている彼女の様子は、刃向かおうと無駄、と言う雰囲気を当麻に感じさせていた。
「おい…、冗談だろ?。今更返せったって、そう言う性質のモンじゃないってあんたら、一番良く分かってる筈だろ?」
 思い出された売り文句は、「いつ何時も貴方の傍にいる、小さく偉大なトラウメンは一生の友」だ。話が違うと言われても仕方がない。
「それとも、代わりの物と交換してくれんのか?」
 思い付きでそんな質問までした当麻だが、
「いいえ、代わりはございません」
 と、予想通りの言葉で返されていた。驚愕の表情でカユラを見る当麻は、瞬きすることも忘れていた。
 そんな彼に対して、とにかく一通りの事を説明しなければと、カユラも必死に掛ける言葉を考えていた。優良な客であった者には、できれば事実に納得してもらいたかったのだ。
「きちんとご説明致します。つまり、全てのトラウメンに事故の可能性がありながら、未然にそれを防ぐ方法がないのです。研究や努力で補える事でもありません。それは『トラウメン』に限らず、人格を写し取る行為自体が、欠陥の原因だからです。
 そんな商品を安易に販売してしまったばかりに、お客様に危害を加える結果になりました。一見では解りませんが、個の人格の奥底には歪んだ憎悪や、凶暴性が秘められていることもございます。人の心とはそう言うものでしょう?、悪い部分を見せて生きる人は少ないのです。だから…、この商品を放っておく訳にはいかなくなりました。きっとまた同じような事が起こります…」
 彼女の訴える内容には、尤もだ、と思えた。
 しかし説明に納得したからと言って、感情も同じになるとは言えない。それが彼女が言う、人の心の恐ろしさなのだろう。愛の名の元に虐待をする者が居れば、正義の名の元に殺戮を行う者も居る。
 そしてここに、
「話はよく分かった!」
 と言い放って、立ち上がりざまにその場を逃げ出した当麻が、居た。
「!、お待ち下さいっ!」
 突然の行動に面喰らって、俊敏な筈のカユラの足は暫く動かなかった。その間に当麻は研究所を飛び出し、夕闇が訪れた町の家々を縫うように走って行った。彼には日常的な運動の習慣はないが、逃げ足だけは早いと昔からの評判だ。無論この場を逃げ切れる自信はあった。
 とにかく今は逃げて、何処かで対策を考えようと思っていた。返したくない、簡単に手放せる訳がないとばかり、当麻の思考は繰り返していた。

 その彼を追っていた筈が、カユラは人気のない荒川の河川敷に出てしまった。
「まさかこの私が見失うとは…」
 妖邪界では右に出る者はいないと言う、素早さは彼女の最大の武器だった。それがまんまと巻かれてしまい、肩を落とすようにひとつ溜め息を吐く。けれど諦めた訳ではない。彼等、妖邪と呼ばれた者達には、人間とは違う能力が備わっている。
「ここは、奥の手で行きましょうか…」
 その言葉の直後、カユラの姿は川面に映る虚像もろとも、空に消えて行った。



『ピンポン、ピンポン、ピンポン』
 何処かで、インターホンの単調な電子音がする。
『ピンポン、ピンポン、ピンポン』
 更にもう一度。眠り掛けの心地良さを乱す不快な響きが、無理矢理己を下界へ引き摺り出そうとしている。止めてくれ、邪魔をしないでくれ…。
『ピンポン、ピンポン、ピンポン』
「…うちか!?」
 慌てて、征士はその場を跳ね起きた。
 仕事から帰って一時間も経っていなかった。玄関先に迎えに出て来た『みどり』を抱きかかえ、征士はいつもそうするように居間のソファに座った。どうやらそのまま眠り掛けていたらしい。彼の下敷きになっていたみどりの腕が、赤黒く鬱血しているのを見た。
 それを自分の手に取って、征士は優しく労るように撫でて遣る。みどりに痛覚があるかは判らないが、「気付かなくて悪かった」などと思う、人の心の動きには敏感だった。自分はとても大事にされている、と思える行為に素直に喜んでいる。そしてそんな様子を見る度征士は、ここではなく何処か、誰も何も干渉しない場所へ行きたい、と近頃思うようになっていた。
 誰も、生来の欲求から仕事に生きたいとは思わない。そんなことに気付いてしまった。他の何かの為に必要があって、又は己の価値を他に示す行動に過ぎない。この現代社会で生きる為に、そうしているに過ぎないのだと。
 みどりはいつも、心を解放することの幸福を体現している。いつの間にか身に付けていた、欺瞞と言う目隠しを再び戻したくはない。心を偽れば偽る程、求めるものから遠退いて行くと知ると、ただ己が最も幸せになれる場所を探し始めていた。
 知らなければ、求めることもなかったかも知れないが。
『ピンポン、ピンポン、ピンポン』
 四度目の呼び出し音に漸く重い腰を上げて、征士はキッチン脇の受話器を取った。
「あー、伊達ですが」
 すると、平坦なベル音からは想像不可能な、切羽詰まった様子の当麻の声がした。
「ったく何してんだよ大変な時にっ、まだ寝る時間じゃねーだろっ!。いやそれは後だ、とにかくここを開けてくれ!、早く!」
 訳も判らず頭ごなしに怒られ、少々機嫌を損ねられた征士。なので、
「あのなあ、誰も彼もがおまえのように、自由気侭に生活している訳ではない。連絡もなしにいきなり来て、その言い種はないだろう」
 と、故意に勿体振って返事した。しかしやり取りを楽しむ余裕のない当麻は、
「ふざけてる場合じゃないんだ!、時間がない、早くしないとおまえもヤバいんだ、とにかく中に入れろ!」
 と、まるで秘密を暴かれた組織が、芋蔓式に検挙されそうな場面のようだった。
 征士にはさっぱり判らない事態だが、激しく取り乱している当麻の口調は、凡そ彼らしい態度とも思えない。正に身に危険が及んでいる、と察して、征士はすぐに集合ロックの解除コードを打った。

 征士が玄関ドアを開けて待っていると、飛んで来たかのように素早く当麻は駆けて来た。「階下に迷惑だ」と言いたかったが、焦躁し切った彼の表情を見て、水を注す発言は止めておいた。
「一体どうしたと言うのだ」
 息を切らせて飛び込んで来た当麻は、苦しそうに喉元を手で押さえ、その場に膝を着いて呼吸を整えていた。征士はその様子を暫し見下ろしていて気付く。彼は靴ではなく、研究所で履くサンダルで走って来たらしいと。勿論上着は白衣のままだ。余程慌てて飛び出して来たことが窺えた。
 尚、当麻の研究に白衣は必要ないが、「営業スタイルだから研究所に居る時は着る」、と話していたのを征士は覚えていた。それを脱ぐ余裕もなかった、との事実を如実に物語っていた。
 暫くして、漸く話ができるようになると、当麻はまず征士の質問に答える。
「取り返しに来たんだ…、事故があったとか何とか言って…」
 落ち着きを取り戻した彼の腕を取って、その場に立たせるように引き上げると、
「何をだ?」
 征士は不思議そうな様子で返した。察してくれない相手に苛立ちをぶつけるように、当麻は掠れる声で怒鳴り付ける。
「トラウメンだよ!、他に何があるってんだ!」
 漸く事態が、理解できた。
 征士はハッと息を呑む僅かの間に、頭の中を様々な事が巡るのを感じた。様々な、安らぎと至福のある日常、全てが通じている充足感、ただ、今と言う永遠の時間を生きる幸福。そこに迫る危険があることなど、予感できる筈もない幸せな世界のこと。
 俄に振り返って、部屋の奥を窺う征士の横顔からは、視界に現れる不安な影を追い出そうと言う、抵抗の意思が見て取れた。申し訳なくも、当麻はそれを見てほっと溜め息を吐く。己と同じ境遇を有する征士の存在を有り難く思った。
 自分が紹介したばかりに、同じ思いをさせられる征士には悪いと思う。けれどこんな事態が後に待っていたなら、それで正解だったかも知れない。トラウメンを奪われてしまえば、今の自分には繋がれる物が何もなくなってしまうのだ。どんな繋がりでもいい、遠く離れていてもいいから誰か居てくれ、と、当麻は祈るような気持で居た。
 事態を耳に、玄関前で固まっている征士を置いて、先んじて当麻は居間の方へと歩き出す。すると、彼の足がその部屋のドアに差し掛かった時、
「待て!、当麻」
 突然慌て出す征士の声が、背中の空気を大きく揺るがせた。
 けれど遅かった。当麻はそれより前に見付けてしまった。
「誰だ?。…悪いが、他人に聞かせられる話じゃないから…」
 征士の部屋に居る者としては、些かミスマッチな人物が当麻に笑い掛けていた。奇妙な感覚だった。恐らく学生だろうが、何処となくふわふわしたような、存在自体が危うい印象を与える人間だと。
 それより、征士とは何の関連もなさそうな人間が、何故ここに居るのか判らない。人の趣味をとやかく言うつもりはないが、自分の知らない間に、征士は宗旨変えしたのだろうか?、と当麻は勝手に考えた。そう思って見れば、人形のように小さく纏まった感じの、愛らしい人物ではある。
 だが今はそれを云々している時ではない。
『帰らせろ』
 当麻はそんな表情で征士を振り向いた。が、それを嫌がるように征士は顔を顰める。そして困った様子のまま当麻の横を抜けると、征士はそこに居る、自分だけを見ている人の肩を取って、当麻の正面に向かせて話し始めた。
「…トラウメンだ」
「?」
 理解不能、と言う態度の当麻の、おかしな表情を見て征士は密かに笑っていた。
「よく分からんが、こうなってしまったのだ。私が人の形になれと言ったら」
「…嘘だろ?」
 まあ、それだけで信じるとは征士も思わない。
「何を言い出すかと思えば、おい、トラウメンってのはこれのことだぞ」
 そう言いながら、当麻は白衣の内ポケットから、自分のトラウメンを出して見せた。
 すると、オレンジの玉は当麻の手の上で、これまでに見たことのない輝きを発した。又それに反応するように、征士の前に立つ人間がボウッと、水色に光るのを確とふたりは見届けた。目前の出来事、この事実を信じない訳にはいかない。確かに征士の言う通り、それはトラウメンらしいと。
「何で…、こんな事に…」
 勿論征士に判る筈もない、冒頭にそう話した通りだった。けれど、
「恐らく、おまえは球体であることに不満がなかったのだろう」
 と、予想できることを当麻に話した。トラウメンは、主の気持を汲み取るばかりの物体。それだけに考えられる話ではあった。
 返せば征士の方が、当麻より遥かに多く要求を持っていることが、判ってしまったようなのものだ。
「どうすんだよ、これ…」
 そして当麻は頭を抱えてしまう。これでは隠すにも困る。持って逃げることもできない。元に戻れと言えば、球体に戻るのかも知れないが、恐らく征士はそんなことを命じないと思う。それは今の、この状況から容易に解ることだった。
 仕立てて貰ったような、可愛らしいセーラーカラーの服に包まれ、その襟首から伸びた小さな頭部は、征士の居る方ばかりを向こうとしている。他愛のないじゃれ合いのような格好で、終始嬉しそうにしている彼を見ていると、征士がどう彼を扱っていたかが目に見えるようだった。
 その時、閉まっている筈の窓から、冷気が流れ込んで来るのをふたりは感じた。窓の外は暗く静まり返った冬の空。何の物音もしない、既に眠りに就いた夜の町。
「…返して貰いに上がりました…」
 何処から入ったのか、いつからそこに居たのか、居間から続く寝室のドアから出て来た、カユラは静かな口調でそう言って、呆然としているふたりの前に歩み寄る。そしてまず当麻に向けて言った。
「先刻お話しした通りです、それはあなた方に危険を及ぼす可能性があるのです。手放せない気持ちも解りますけど、事が起こってからでは遅い。私達は人に危害を加えたくありません。どうか解ってください…」
 悲痛な趣を以って発せられた言葉からは、それが嘘でないこと、そして本当に人を案じて言っていることが、充分にふたりに伝わって来た。考えてみれば彼女も辛い立場だと。悪意で始めた商売なら、こんな真似をする必要もないのだから。
 要は、その提案を受け入れるか否かの問題。
 あっさり見付けられてしまった当麻は、打開策を見出す暇も与えられず、この場で結末を見るしかないことを感じ始めていた。依然彼の心は「嫌だ、嫌だ」と叫んでいる。最早理屈ではなかった。感情に委せてカユラを見据える、その態度は子供が駄々を捏ねて乞い願うような、彼の隠された内面を露呈させていた。
 その横で、征士は聞こえるように深く息を吐く。当麻のような態度も無駄に感じた。対峙する人間離れした人物に、正攻法で抗えるとも思えなかった。
 そっと、それまで触れていたみどりから離れると、征士はすぐ後ろのソファに、幾分投げ遣りな動作でドサリと背を預けた。何も考えられなかった。失うと言う事態にピンと来ないのだ。己の意志はともかく、こんなに自分を必要としているみどりが、何故消えてしまうのだろうかと。けれど差し当たって、それを返してくれと言う者が居る。取り敢えず不満そうにしている他は、何もできなかった。
 カユラは、ふたりのそんな行動を見てはいたが、肯定とも否定とも取り兼ねて、
「素直にお返し戴けたら、支払われた代金は勿論お返しします。勝手なことを一方的に押し付けて、申し訳ないとは思っていますが、どうか…」
 と付け加えた。金の問題で済まないことは承知の上だった。
 けれどそこで征士が、突然思い立ったように言った。
「嫌だと言ったら?」
 その一言に、弾かれるように彼の方を向いたカユラ。征士は息が詰まるような、真直ぐな眼差しを逸らさず返していた。それはひとつの賭けだった。淀み無い本心から断ったとして、そこにどんな結果が用意されているのか。もし交換条件が成り立つなら、それが何であっても応じる、とさえ思っていた。
 しかしカユラの答えは、
「その時は仕方がありません…、あなたの記憶から、トラウメンに関する全てを消して、なかった事にしていただく他ありません…」
 決して容赦はしないと言う、無情の宣告だった。
 考えようによっては、その方が幸せかも知れない。有り得ない禁断の夢に、触れてしまった事実を憶えている限り、代償を追い求めるか、或いは失った事実に悲嘆して生きるか、気の遠くなりそうな失意の道しか残されない。ならば忘れた方が良い、始めから何もなかったとする方が良いのかも知れない。
 人に取って、全てが満たされる夢など毒にしかならない。いつの間にかその幻想が、当たり前に存在する物となっていた。なくてはならない物となっていた。それは不自然な、間違った成り行きだったと今は認められる。在りもしない物に依存しては生きられない。だから抹消するのだと。
 けれどそれで良いのだろうか。そんなに簡単な事だろうか。
 記憶は消えたとしても、過ぎてしまった時間の空白は残る。自分は何をしていたのだろうと思う時、欠落した時間があることを納得できるだろうか。そしてそれは恐らく、人生の中で最良の時だ。安全な生活と引き換えに素晴らしい記憶を失う、それで良いと言えるだろうか、引き換えに値する価値があるだろうか。二度と手に入らない物なら、それは何より優先されるのではないか…。

 『みどり』は私の目を開かせた。だからもうそれを再び閉じてはいけない。彼が私にくれたものを忘れてはいけない。それが何より大切なことではないか。

「…好きにしてくれ」
 征士はそう答を出していた。当麻はびくりとそれに反応して、握っている拳を震わせ始めた。征士の意思がそれでは、もうどうしようもないと思えた。決して従いたくはないが、援護もなくなった状況では。
 すると、歩み寄って当麻を見上げたカユラは、すっと右手を彼の前に差し出した。広げた掌を示して、彼が自ら返してくれるよう促している。そうでなければいけない、とカユラは信じている。自ら捨てる覚悟がなければ、まともにこの先の人生を歩めるかどうかも、心配になるからだ。そして当麻は、彼女の強い意志には逆らえなかった。
 おずおずと手に握ったものを持ち上げて、当麻はやっとのことで、彼女の手にそれを乗せることができた。が、名残り惜しむように、いつまでも離れようとしない指先が、離れた瞬間、彼の目からは涙の筋が伝って落ちた。「いい年をして」と眺めている征士だが、敢えてそれは言わないでおいた。
 当麻のトラウメンは、カユラの手の中に戻った途端、すっかり以前の輝きを失ってしまった。一度主人と認めた者から離れると、そんな風に色褪せてしまうものらしい。彼の日吉丸はもう何処にも存在しなくなった。更にそれを、カユラが腰に付けた黒い袋に収めると、部屋から何らかの存在が掻き消されたような気がした。生きてはいない、人の波動が。
 次に彼女は、征士の前に腰を下ろしていたみどりを見た。そして何かをぶつぶつと唱え始めていた。恐らく元の姿を復元する呪文なのだろう。
 みどりは変わらず征士を見ている。見詰めれば見詰め返すだけで、誰より幸せそうに笑える彼が居る。その笑顔が、当たり前の笑顔が徐々に薄れて行った。現れた時の水蒸気を思わせる、それは薄く空気中に霞みながら、見えない透明な物へと還元されて行く。そして霧のように流れて、カユラの手の上に集まって行った。姿が見えなくなって行く。もう何も見えなくなってしまった。
 「さよなら」も言えない、彼の着ていた服だけが音もなく床に落ちた。
 部屋は静まり返っていた。感想を述べ合う心境には誰もなれなかった。今はカユラの元に戻ったふたつのトラウメン。もう誰かの友人でも、何でもないただの球体だった。しかしカユラには、最後のお客様であったふたりが、自ら返してくれた事実は喜ばしいものだった。その意味は、
「おふたりの英断に感謝致します。実際は、これまで回収した全てに於いて、誰一人自ら返してはくれなかったのです」
 と言う訳だった。つまり記憶を消して奪い取るしかなかったのだ。
「…さもあらん。自分の間抜けさに呆れる」
 征士は焦点の定まらない目をしながらも、尚気丈にそう呟いていた。己の意志を曲げずに居られた強さが、虚無感となって襲って来た今を持て余している。当麻は押し黙ったまま何も言わないでいた。言葉を発したいとも思わないのだろう。
 そんな彼等には、最早何をしても慰めにはならないが、カユラはせめてものお礼にと、事の経緯を詳しく語り始めた。
「私達は、お察しの通りこの世界の者ではございません。私達の国は妖邪界と言って、古からこの世界に平行して存在する場所、言わば兄弟のような世界です。けれど古くから戦が絶えず、遂には自らその地を破壊し尽くしてしまいました。今から二、三百年前の事です。今は残る者も少なく、枯れて行く大地と共に死を待つのみの存在です。
 けれど何とかして蘇らせたい、どんな世界でも生まれ育った場所です。私達はその為に、平和で豊かなこの世界から、必要な物資を集めて来ようと考えました。でも今は平和なこの世界の人々が、困る事をする訳にもいきませんから、ここで商いを始めて、正当な利益から物資を購入するようにしました。…そこで商品として引き合いに出たのが、このトラウメンなのです。
 これは私達の世界にある、「無現草」と呼ばれる植物の胞子が元になっています。その草は休む間もなく胞子を飛ばして、本体にそっくりな虚像を作る特性があるのです。あまりに大量の虚像ができるために、本物がどれか判別が付かなくなり、そうして外敵から身を守ります。とても不思議な機能を持った植物です。
 その昔は、これが戦の役立つと言って、この世界にも多く流通していました。『空蝉』などと呼ばれるものがそうです。けれど時代が移り変わり、ある頃には需要も途絶えてしまいました。そうして一度は忘れられた存在だったのですが。
 最近になって私の仲間の一人が、新しい使い道を考え出したのです。過去の商品のように、使用者の情報を写し取るのではなく、予め誰かの情報を持たせて安定させたのです。それは動物を飼うよりももっと気楽に、人を楽しませたり、和ませたりする物になると私達は期待しました…。
 ただそう言う『物』だとしか、私達は考えませんでした。悪気はありませんでしたが、考えが足りなかったことは認めます。本当に、御迷惑をおかけしました…」



つづく





加筆校正後コメント)この話に書いた魔将達の設定はかなり気に入ってます。時々人間界に降りて来て、怪し気な商売をやってたりする四人(朱天もいてもいい)を見てみたいものだわ〜。



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