戻って来たシン
PLEASURE TREASURE
#3
プレジャー・トレジャー



 ホテルの地下に在る従業員用の事務室に、促されるままリョウ達がやって来ると、彼等の姿を見るなり、シュウが悲愴な声で騒ぎ始めた。
「すいません!、すいません!、すいませんっ!」
「何て事してくれたんだよっ!」
 しかし騒いでいる割には、リョウの怒鳴り声を「尤もだ」と言う態度で受けていた。一方的に自分が悪いと思える事態を、どう謝ろうとリョウの腹の虫が治まることはない。と、シュウには判っていた。
 まあそれもその筈。近所付き合い的に預けられたならともかく、シュウは仕事として付き添いを依頼された身だ。その責任の違いは大きいと、彼自身が痛く理解しているようだった。減俸、解雇、何らかの沙汰を覚悟しなければならない、社会人としての立場が危うい状況になってしまったが、それより可哀想なのはリョウの方だと善意で考える。だから、大人しく彼の怒りを受け止めようとしていた。
「ホントに返す言葉もねぇ、一生の不覚、死んでお詫びしますっ!」
「てめ、ふざけんなよ!。おまえが死んだって何の意味もねーぞ!」
 先程までの陽気な態度とは打って変わって、自らの失敗に落ち込むばかりのシュウ。リョウはその襟首を掴んで、故意に発破を掛けるように怒鳴り続けた。否、この際シュウはどうでも良かったのかも知れない。ただリョウ自身の悔しさなのだ。セイジが指摘したように、シンに言われるまま人に頼んでしまった、己の迂闊さに腹を立てていた。
 けれど感情を爆発させるだけでは何も解決しない。無駄な時間が過ぎて行くばかりだ。
「そんなことより経過を説明してくれ」
 とセイジが言うと、取り込み中の彼等の代わりに、着いて来たフロントの女性が答えてくれた。
「あの、彼はこの通り自暴自棄になっておりますから、私が成り行きをまとめてお話します。…午後三時頃でした、フロントの私のところに、用事を頼まれたと彼が伝えに来て、その後ふたりは手を繋いで、正面エントランスから出て行きました。まずその時間で間違いございませんよね?」
 女性が淡々と状況を話し始めると、リョウもここは捜査官らしく、憤る気持を押さえてその話に加わって来た。
「ああそうだ、チェックインしたのが二時過ぎだったから、そんなもんだろ」
「ええ、ところがその後、一時間程経っても彼が戻らないので、行先のメルクリオ児童園の方に私から連絡を入れました。でも職員の方はまだ来ていないと仰っていて、もしかしたらそこへ向かう前に、付近で遊んでいるのかも知れないと思いました。それで、ホテルの警備員に見回りを頼んで、この周囲を探してもらったのですが…。そうこうしている内に、結局今さっき彼がひとりで戻って来ました」
 そして話が一段落したように、女性が俯きながら溜息を吐くのを見て、
「ここを出てから彼が戻るまで、一時間四十分程度だな」
 とセイジは話を纏めるように呟いた。シュウの背後の壁に掛けられている、大きく見易い時計は午後五時六分を指していた。フロントの女性が部屋を尋ねて来たのが、五時より十分程前だったので、更にその十分前にボーイが戻ったとすれば、大体その位の時間が経過したことになるだろう。
 だが、指定の児童保護施設はこのホテルから、大人の足なら十分も掛からない場所に在る。そんなに長い間何をしていたのだろうか?。当然その疑問をクリアにしなければならない、と、リョウは噛み付くようにシュウに言う。
「おいっ!、一体その間に何があったんだ!?。送って帰って来るだけなら、三十分以内に戻れる筈だな!。正直に話さねぇと…!」
 リョウの口振りはまるで、何かを企んでいたと言わんばかりに聞こえた。それでもシュウは反省の念が深い所為か、大した反論をせずにいた。
「俺は何も悪ィ事はしてねぇよ!!。ただ、見失っちまったのはホントに済まねぇ…!」
「貴様大人には管理責任ってモンが…!」
 勢いに任せてリョウがそう続けようとした時、横で彼等の遣り取りを聞いていたセイジが、秀の言葉にふと気になる点を見付けて尋ねる。
「待て、見失ったと言うが、十分も歩かない距離で見失うとはどう言う訳だ?」
 それを聞くと、リョウも弾かれたように状況の不自然さを思い返していた。結果的にリョウの感情的な訊問が導き出した、状況把握への糸口だった。
「そういや!、おまえ手ぇ繋いでたんじゃねぇか!」
 フロントの女性が見たと言うように、シュウとシンは手を繋いでここを出て行ったのだ。シンは人に手を繋がれている状態を、嫌がる子供ではないとリョウは知っている。シュウの人当たりの良さを考えても、何事もなく歩いていたなら、故意に手を放す理由は思い浮かばなかった。途中で手を放す何かがあったのだろうか?。
 するとリョウが思い付いた通りに、シュウは出掛けた後の出来事を話していた。
「そうなんだよ!、手を放したのはほんの一瞬なんだ。児童園の手前にマーケットがあるのを知ってるか?、あそこの前に来たら買い物するって言い出してよ。でもあそこはいつも人で混んでっから、大丈夫かなぁとは思ったんだ、俺。今思うと入んじゃなかったぜ…」
「人混みで手が離れて、そのまま見失ったか…」
 シュウの話に答えながら、セイジは混雑するマーケットの様子を思い描いていた。
 このドームのように年中暖かい地域では、オープンマーケットのスタイルが主流である為、人は入るのも出るのも容易い場所だと考えられる。そして陽が翳って来る時間に入ると、主に大人が集まる場所では、小さな子供は陰になって、見え難くなることもあると思う。またそんな中誰かが子供を攫ったとしたら、露店を被う屋根の影などで、相手の姿すら確認し難いかも知れない。現場の条件を考えれば、それらの可能性は否定できないが…。
「ばっ、馬鹿野郎!!、不安に思ったんなら連れてくな!。危険意識の薄い奴だな!」
「わぁぁぁぁー!、ホントにすいませんっ…」
「謝って済む事と済まねー事があるんだっ!、畜生、保安局を舐めんなよ!」
 シュウはその、マーケットに寄った失敗が堪えているのか、リョウにも非難されるとわあわあと泣き出してしまった。話にならなそうなので、セイジは再びフロントの女性に尋ねる。
「それからどうしたんです?」
「あ、はい。お子様を見失って彼は、一時間近くマーケットの中や周囲を探したそうです。が、結局見付けられなかったので、その後保安局の方へまで探しに行ったようで…。彼も必死に探したとは思いますが、それでも見付からなくて戻って来たのです…」
 遣り切れない、と言った様子の彼女の言葉には、同じ職場に勤める者への配慮が感じられた。
「すんません、カユラさん…」
 シュウはそれに気付くと、心を荒らしながらも、すぐに感謝の意を言葉にして返した。こんな僅かな場面を見るだけでも、シュウと言うボーイが悪を働いたとは考え難くなる。無論その線は、リョウが信用して用事を頼んだ時から薄いのだろう。リョウ本人が言ったように、捜査官の洞察を舐めてはいけない。
 ただその、人柄は認められる人物の不注意についてだが…。
「そんなに経ってんじゃ…!、事件に巻き込まれたんじゃないのか!?。おいっ、もし誘拐に遭ってたりしたらどうしてくれんだ!、おまえは!。俺は信用して預けたんだぜ!?」
「あうう〜」
 リョウもシュウも、結局遣り場の無い感情を表現しているに過ぎない。横で見ていたセイジにはそう解釈された。何故なら双方どちらかに落ち度があった結果とは、今は思えなくなっていたのだ。
「…あまり彼を責めない方が良いかも知れない」
 終始一本調子で怒鳴っていたリョウだが、諭すように肩を叩いたセイジを振り返ると、少しばかり上擦った調子になって答えた。
「んっ!?。…な、何故だ?」
 普通に話すだけで聞こえる距離に居るのに、わざわざ肩を叩く行為が、リョウには何か大切な事を示している気がした。少なくとも自分はシンについて、あまり冷静に考えられなくなっているようだ。己が気付かない事を指摘してくれれば有り難い、と、リョウは素直にセイジの話を聞こうとしていた。
 彼もまたそんな性格だから、多少頭に血が昇り易くとも憎めない存在だ、とセイジは思った。
「事件の可能性も全く無いではないが…。部屋に戻って来て、その後何と言っていた?、『何を考えているのか解らない』と言っていたな。それから、彼は『気転が利く』とか…」
「・・・・・・・・」
 リョウは話に促されるまま、その時の心境を思い返して、黙っていた。
「私にはどうも、捜査官であるおまえからは逃れ難いと考えて、このボーイに乗り換えたように思える。八才にもなっていれば、一時手を放したくらいで迷子になる年ではないし、危険なら声も出すだろう。殊にここでは目立つ外見の子供だ、探して見付からないことはないと思う」
 するとリョウが口を開く前に、驚愕した様子でシュウが叫んでいた。
「なっ、なっ…!。じゃわざと逃げたのかっ!?」
「恐らく。人混みの中での犯罪はリスクが高い、しっかりした事前の計画が必要だ。故に行きずりの誘拐の可能性は低い。だが、子供は未だ保護施設に属していて、保護者も居なければ、誘拐されて困る者が存在しない。彼を着け狙っていたとは考え難い。そうでなく、単に子供が目当てだとしたら、マーケットのような人目の多い場所を選ぶのは、理に適っていないと思う」
 セイジの話を最後まで聞き終えると、リョウはもうすっかり怒りを忘れて、己の記憶の中を漂っていた。そう、誘拐だの何だの言う前に、シンが何故シュウと行くことにしたのかを、疑問に思いながら一階で別れたのだった。確かにシンは、上辺は大人しいけれど、頭では色々な事を考えている子供だ。大人にも判らない何かを隠し持っているように…。
「そうだ…、当たってると思う。あいつ、何か手伝わせてくれって言って、帰りたくなさそうだったんだよな…。急に話が変わって…」
 そして今度の事も、いつものシンと言える行動のひとつ、かも知れなかった。リョウは今更ながらそう思った。否、シンの行動を理解しただけでは仕方がないが。
「まずいのではないか?、彼は保安局での会議を聞いているのだ」
 セイジは厳しい顔に変えてそう言った。リョウの言う内容からして、自分達を手伝おうと言う意思があるのは明白だった。
「ぇっ、まさか…!」
 リョウは思わずそう返したが、しかし今シンの行動について考えていたばかりだ。可能性が無い事ではないとすぐ思い直し、
「ちょっ、電話貸してくれっ!」
「あ、はい!」
 フロントの女性に声を掛けると、バタバタとその部屋を出て行ってしまった。この場合の最善は、本部に協力してもらうことだとリョウは考えていた。明日からの捜査にメインで動く自分達が、シンの捜索に時間を裂く訳にも行かない。自分達の突入後に、外から敵のアジトを囲み込む予定の捜査官なら、事件の情報を得ている分、シンの捜索を依頼するにも好都合だった。やや身勝手な依頼ではあるが。
 ともかく、捜査の前にシンが無事であるかどうかを確認したい。願わくば事件性のない出来事であってほしい。リョウは強くそう念じながら、従業員用の設置電話へと向かっていた。
「えっ?、で?、…結局俺何だったんだよ?」
 部屋に残されたシュウはキョトンとしながら、誰に聞かせるでもなく呟いていた。考えてみれば最も災難を被ったのは彼かも知れない。元々知り合いでもなければ、何の利害も発生しない従業員の立場で、己の失態に良心を苛まれ、すっかり焦燥し切っていた様子を思えば。
「上手く利用されたようだな。御苦労さん」
 と、セイジは疲弊する彼を労っていた。短い言葉だったが、シュウが現状を理解するには充分だった。それにしても、子供とは思いも寄らぬ悪知恵を働かせるものだと、セイジも些か面を喰らったような思いでいる。否、強かと表現する方が良いかも知れない。捜査官であるリョウと、このボーイを欺いて、少年は己の意思を通したのだから。
 彼の目的は何なのだろう?。我々を手伝いたがっていると言う、その強い意思を支えるものは…?。



 シンの行方不明が発覚してから、四時間程が経過して、時計は午後九時を回っていた。
 リョウが事情を本部に連絡した後、本部からは彼の考え通り、他の捜査官が出てシンの捜索に動いてくれた。が、言わずもがな、手放しで快く引き受けてくれた訳ではなかった。不注意が引き起こした出来事の後始末、と誰もが容易に考えられたからだ。確かに、まずリョウ自身が自らの失敗に責任を感じていて、連絡時にもそう話してしまった。そのままのニュアンスで本部内にも伝わっただろうから、まあ仕方のない結果かも知れない。
 しかし彼はこの捜索に、本部部長が加わった理由には気付いていなかった。
 事の発端がもし、保安局本部でシンが捜査会議を聞いた点にあるとしたら。本来なら部外者に聞かせてはいけない会議を、対象が子供だった為に甘く扱ってしまった事実。それは責任者であるシュテンのミスと捉えることもできる。必ずしもリョウの不注意とは言えない場合を想定し、部長は自ら捜索チームに参加したようだ。
 だが今のところリョウには、原因がどうであれ、シンが直接自分の手から離れて行った後に、行方不明になっている事実が重く伸し掛かっていた。市民の安全を守る保安局の一員として、或いは子供に対する絶対的な信用を得なければいけない、ドーム内捜査官のひとりとして。
「何でこんな事に…。って、あれ、今朝も言ったな」
 リョウはレッドオークの丸テーブルの上に設置した、保安局仕様の通信機にじっと目を据えたまま、只管本部から連絡が入るのを待っていた。通信機を眺めているからと言って、すぐ連絡がある訳でも、必ず吉報が入る訳でもないが、明日の計画実行までは待機を命令されているので、他に何もできなかった。
 セイジはリョウの座る横で黙々と作業をしている。紙鑢を使って針金を細く削りながら、リョウの呟きに淡々と答えた。
「仕方がない、子供と思って見くびっていたのが悪い、私達の不注意だ。まあ…、元々不眠不休の事態は覚悟の上だ、寝坊するよりマシだと思うさ」
「はあ、部長にも怒られちまったしなぁ…」
 そう、シンの行方不明もさることながら、電話口で部長にこっぴどく叱られたことも、リョウには堪(こた)える現実だった。重要な捜査を明日に控えて、雑事は全て無難に押さえておかねばならない時だった。こんな時は大人としての強制権を行使すべきだった、といくら考えても後の祭だ。
 これまで難しく考えなかった事が、途端に困難に思えて来る。子供に好かれる大人を演じるのは容易いが、真の意味で子供の為になる行動をするのは、とても難しい事だと今は考えられた。今の自分は反面教師でしかない、とリョウは落ち込んでもいる。だから何となく、前向きに明日の準備をしようと言う気にもなれないでいた。
「それにしてもあんたタフだな〜」
「そうか?」
 リョウはセイジの作業を横目に見ながらそう言った。セイジは先程から、アーマーピアシングと呼ばれる徹甲弾を作っていた。銃弾の中に鉄の芯を入れることで、鉄板等の硬い物体を打ち抜けるようにしたものだ。ベランダに設置したライフルから、敵のアジトであるドラッグストアを狙う時、その建物に使われた建材の質に因って、弾の威力が大幅に弱まるのを防ぐ為だった。
 因みに今のところこのライフルは、相手が立て籠ってしまった時の切り札である。潜入捜査が首尾良く進んだ場合は使わずに済むが、考え得る全てのケースに備えた用意を、当然しておく必要があった。なのでセイジは万全を期して弾丸作りをしているのだが。
「だって今朝エアバスで着いたばっかりだろ?、十四時間以上乗って来たって聞いたぜ?」
 リョウの言い分も尤もかも知れない。長旅の末、到着してすぐに会議、殆ど休む間も無くここに来て明日の準備、そして余計な事件を抱えてしまった為に、その結果が出るまでは徹夜の状態が続くのだ。他の捜査官に動いてもらっている手前、自分達がのうのうと休むことはできない、常に連絡を受けられる状態でいなければならなかった。そんな中大した文句も言わず、特に疲れた様子も見せず、手先の細かい作業を続けているのだから。だが、
「そんな事にも慣れているからだろう」
 とセイジが返す頃には、リョウは肯定する以外に頭が回らなくなっていた。
「そうか…、眠くなって来たな…。とにかく、三時十分前になったら、予定通りアジトに向かおう」
「了解だ」
 毎朝五時に起床するリョウの習慣として、夜十時に近付くと睡魔が襲って来るのだった。至って規則的に、健康な暮し振りをしている彼には、こればかりはどうしようもなかった。今から翌午前三時までまだ五時間半もあるので、果たしてその間まともに起きて居られるのか、リョウはまず自分が一番心配だった。己のしでかしたミスを反省する気持を示す為にも、どうあっても眠る訳には行かない…。
 それで、眠気覚ましに大した意味も無い言葉を繋いでいる。
「あー、六時間も何処ほっつき歩いてるんだ…。こんな時間に子供が外を歩いてたら、それこそ危険じゃねぇか…。部長のチームが探し出してくれるように祈るしかないな…」
 セイジもそれなりに彼に付き合いながら、ライフル用の空薬莢の数だけ鉄の芯を完成させていた。この後は薬莢に火薬と共に芯を詰めて、弾丸と雷管を装着すれば作業は終了だった。ひとまず一段落したところで、リョウに合わせるように話を続けた。
「しかし何処へ行ったのだろうな。敵のアジト周辺にも居なかったとすると、あの子が向いそうな他の目的地は思い当たらないが」
「…最悪は敵に掴まっちまってる場合だな…」
「有り得ない話ではないが…、子供の行動を怪んで拉致すると言うのは、余程の事がないとな。私達との関わりを向こうが知っているなら別だが」
「…どうだろうな…。それとも、やっぱり誘拐されてました、なんて事だったらもう…!」
「それは何とも言えないな」
 いくら話してもあまり明るい見通しは出て来ない。差し当たっての時間潰しに、取り留めない話をしているしかない、そんな時だった。
 夕方の出来事と同様に、けたたましくドアをノックする音が聞こえた。
「誰だっ?」
 すると眠気に微睡んでいた筈のリョウが、すぐさま椅子から立ち上がっていた。待ちわびる身が踊り出すような勢いで、彼はテーブルの席から離れたが、良い知らせであってほしいとの願いは、
「俺だ!、大変だ捜査官!」
 との声に忽ち沈んでしまった。声の主はホテルのボーイであるシュウだった。先の出来事の顛末から、彼が関わる事には期待できないような印象を、リョウは持ってしまったので。
「夜中にうるせぇぞ、どうしたんだよっ!」
 途端にやや面倒臭そうな口調になりながら、リョウはチェーンを外して部屋のドアを開けた。すると、目線の先に立っていたシュウの横に居たのは…
「あっ…!、シン!!、無事だったのかーーー!!」
「ただいまリョウ」
 今先刻何を考えていたかも忘れる程の歓喜に、リョウは叫び、小さなシンを抱き締めていた。そんな彼には今は何も耳に入らなそうだったが、シュウはその後ろからゆっくりと現れたセイジに向けて、
「今戻って来たんだ、びっくりしたぜ〜」
 と簡潔に説明していた。時計は午後九時半を回ろうとしていた。シンはつい先程、ホテルのエントランスにふらりと現れて、夜勤でカウンターを交代したシュウの元へ真直ぐやって来た、とのことだった。特に何処か具合の悪い様子も無く、まるで普段通りのような顔をして。
 けれどセイジは、
「何処から?。いや、その前にどうしたその傷は」
 シンの逃避行について尋ねる前に、リョウの肩に乗せている彼の手に付いた、比較的大きな擦り傷に注目していた。そしてセイジが指摘すると、ふと我に返ったようにリョウも、シンの形を確認して急にまた驚いた声を発する。
「え、わっ、何だボロボロだぞ?」
 両手、両足の擦り傷の他に、着ている洋服には幾つかの鉤裂きやほつれがあり、全体的に黒ずんで汚れていた。髪や靴も妙に埃っぽく見えた。その状態をシンはこう説明した。
「すごく狭い所をね、どうしても通らなきゃならなかったんだ」
「なっ、おい!。どうしてもってな?、俺達の真似して危険な事しちゃ駄目だろう?」
 対してリョウの返事は、何処か危機感の薄いようなシンの態度を嗜める、当然の内容だったけれど。
「・・・・・・・・」
 答えを躊躇しているシンを見て、
「ああ、待て。その前に何か持って来てもらったらどうだ。まともに食事をしていたようには思えん」
 まず状況を落ち付かせてからだ、とセイジは言った。感情のまま極まっているリョウもリョウなら、何食わぬ顔をして戻って来たシンもシンだ。例え子供でも、一筋縄では行かない相手と判断するなら、それなりにお膳立てをして話をさせるのがセオリーだった。『取り調べ室にカツ丼』と言うやり方は、ドラマの演出のようで実際の手法なのだ。
 すると、それを理解できるリョウもここは素直に、
「ああ…そうだな、頼むわ」
 と答えていた。話よりまずシンの手当をしてやらなくては、と。
「了解だ!。俺の奢りにしとくからな」
 頼むわ、と言われたシュウは快く受けて戻って行った。彼にも負い目がある事態に於いて、差し入れ程度の事で印象が良くなるなら儲けものだった。

 三十分程かけて、シャワーを使わせたり、擦り傷の処置をしたりして、リョウは甲斐甲斐しくシンの世話を焼いていた。元々彼は子供好きな性格の上、眠さを凌ぐに丁度良い行動だったので、煩わしく思う事もなかった。その間セイジはテーブルに広げられた工作道具を片付け、通信機から本部へ連絡をしていた。子供は自ら戻って来たと伝えれば、保安局の捜索自体はそこで終了となる。後に詳しく報告する必要はあるが、今日のところは徹夜は避けられる見通しとなった。
 通信機を端に寄せた丸テーブルの上に、今はシュウが運んで来た皿とマグカップが乗っている。丁度ホテルのメインダイニングの時間が終ったところで、シェフの了承を得てシュウが運んで来た、一口大のオードブルとデザートの数々。見た目が綺麗で子供が好きそうなものを、わざわざ選って集めた配慮が窺えた。それらをシンはほぼきれいに食べてしまって、今は皿の模様しか彩りが無くなっていた。
 そして最後に残していた、グラスに盛られたココナッツのアイスクリームを頬張ると、
「物凄ーく心配してたんだぞ?、だからちゃんと説明するんだ」
「うん」
 ずっと横に着いていながら、漸く本題を切り出せた様子のリョウに、シンは笑顔で答えていた。やはり胃袋を満たすと人間の心理は、微妙に変わるもののようだった。普通の様子で戻って来たとは言え、咎められることを恐れたのか、頑なな態度だったシンが今は自然にリョウの問い掛けに答える。
「まず、何で帰る途中に突然居なくなったのか教えてくれ。さっきのボーイの兄ちゃんも、シンが急に居なくなって沢山捜し回ったんだぞ?、後でよく謝って来いよ?」
「わかってるよ。うん、そうなんだけど…。僕、何かできると思ったから、どうしても行きたくって」
 すると案の定、別れる前と何ら変わらない意思を、シンは再びリョウに語り始めた。最早彼の行動の動機は全て、自分達に関わりたかっただけだと、問い質す前に知れてしまったようだ。
「ふぅ…。夕方にもそんな事言ってたけど、ここに居る時の手伝いじゃなかったのか?」
「リョウが何も手伝っちゃいけないって言ったから」
「だからそれはなぁ、俺達の仕事は訓練をしてない奴には、危ないから頼めないんだ。大人だって危ないんだ、判るだろ?」
 リョウはまた同じ事を言っている気がした。否、気だけではなく、確かに同様の言葉をシンに聞かせた記憶があった。しかし、口を酸っぱくして言わなければ解らないような、強情な気質ではない筈のシンが、ここまで聞き分けがないとは何を意味しているか。よもや、彼に取って余程の事情があるのではないか、ともリョウには考えられて来た。
「でも僕は子供だからさ、保安局の人とは思われないでしょ?。部長さん達のお話を聞いたら、何か手伝いたいと思ったんだ」
 身の安全を犠牲にしてまで、今が大事だと思わせる事情が、もしかしたらシンにはあるのではないか。
「あれは、捜査官の為の会議なの!。シンに何かしてほしい訳じゃないんだ」
「でもぅ…」
 そこでまたシンが口を噤んでしまいそうな様子を見て、セイジはリョウに対して一言口を挟む。
「何故そんなに手伝いたいと思うのだろうな?」
「そうだよなぁ。捜査の話が面白かったか?」
「面白いとかじゃなくて。リョウ達は大事な仕事をしてるんだって思ったから、僕も役に立ちたいんだ」
 少し話の方向が変わったところで、シンは再び饒舌に話し始めていた。セイジは以後も、否これまでシンに対してはいつも、積極的に話し掛けようとはしない。それにはリョウが適任だと思っているのか、或いは子供の相手が苦手なのかも知れないが、今のところ彼の関わり方は功を奏しているようだ。知らず知らずコントロールされながら、リョウは充分な話をシンから聞き出せていた。
「あのな、子供には他に大事な事がいっぱいあるんだ。保安局の役に立たなくたっていいんだぞ?」
「違うよ、保安局じゃなくて、リョウ達の役に立ちたいんだよ。僕遊んでるんじゃないよっ?」
 しかし一連のリョウの口振りから、自分は興味本位ではない、真面目にそう考えている、との意思表示をして膨れてしまったシン。それを見て、やれやれと言う思いでリョウは話題を変える。
「…わかったよ。じゃあそれはいいが、あれから何処に行ってたんだ?」
 まあ、動機についてはこの位の子供にありがちな、大人の社会に関わりたい欲求、と人には解釈してもらえそうだった。事実は違うのかも知れないが、尤もらしい理由があればそれで構わなかった。それより、確かめておきたいのはシンの行先と、その後の成り行きの方だ。彼に対する今後の安全対策を考える意味と、保安局の利益になる情報を聞ける意味もあるからだ。
 するとシンは特に隠そうともせず言った。
「うーんとね、ドメーニカって言うお店のね、多分地下室だよ」
「そう…、やっぱりな。会議で何度も言ってたもんな」
 その名称は、地元に巣食っている犯罪組織のアジトのひとつ、と言われるドラッグストアの名前であった。元々は雑貨、食品、そして薬品を扱う、有り触れたタイプのドラッグストアだったが、最近になって薬品と調剤薬局の専門店に変わっている。多品目の商品を扱っていた店が、単一の商売に集約するのはかなり珍しい。そんな意味でも怪しいと睨まれていた商店だ。
 つまり店の質から言っても、子供等には不用意に近付いてほしくない場所だが、シンの場合にはもうひとつ疑問が生じることを、セイジは再びリョウに伝えていた。
「あそこは捜査官が探した筈だが、見付けられなかったのか?」
 そう、シンがここに戻るまでの間、保安局から部長のチームが出ていた筈なのだが。
「そうだぜ、シン、その店の周りを他の捜査官が見回ってた筈なんだ。さっき保安局で会ったおじちゃん達や、赤毛の部長に会わなかったか?」
「ううん?」
 しかし、リョウが解り易く丁寧に説明しても、シンはあっさり首を横に振った。むしろシンは初耳だと言う顔をしていた。
「おかしいな、夕方以降は誰かが行ってた筈なんだ…」
 人のする事だから、百パーセントではないかも知れない。また明日には事件の捜査に乗り込むと言う時に、目立つ行動はできなかったかも知れない。複数の慣れた保安局員が張っていて、それをシンが躱して戻って来たのは、低い確率での偶然が重なった結果かも知れない、とリョウは考える。ところが、
「お店に行ったのは、ホテルのお兄ちゃんと別れた後だよ。その後は近くには居なかったよ」
「ああ…!、じゃあ遅くても四時前だったんだ。それじゃ会わねぇ訳だ、無駄な捜索だったな」
 シンの明瞭な答えを聞いて、保安局の能力を疑わずに済んだ事には、ホッと胸を撫で下ろすリョウだった。己のミスはともかく、そこに所属するプライドまで傷付けられてはたまらなかった。
「いいか?、黙って何処かに行っちまったりすると、みんな仕事を途中で止めて探しに行くんだ。みんなに迷惑が掛かるんだから、二度ととこんな事しゃ駄目だぞ?」
 リョウはその後、無駄足をさせてしまった仕事仲間を思って、シンには強くそう言い聞かせたが、そこで何故か話の流れを断ち切るように、セイジが初めて直接シンに尋ねた。ひとつの謎が解けた区切りとして、リョウは別の話に移行しようとしていたが、セイジにはまだ繋がった話だったからだ。
「店に入ってすぐ地下室に行けたのか?」
 そしてセイジの質問は、確かにシンの答えた内容を探るに必要なものだった。その上シンは不可解な説明をし始めた。
「ううん。お店には入らなかった」
「んっ?、あの店の地下は、店の中の階段からしか行けなかったんじゃ…?。なぁ?」
 無論リョウも、それは物理的に不可能だと首を傾げて、質問者であるセイジに同意を求める。
「そう聞いているが、店に入らずに地下に行けるのか?」
 シンの言い分では、そう考えるしかないところだが、これまで捜査官の調査から判らなかった出入口を、子供が労せず見付けるなどと言う事が、あるのだろうかとセイジは半信半疑だった。
「うん、僕は行けたんだよ」
「何処から?、どう言う風に?、説明してくれ」
 確かに嘘ではなさそうだと見ると、リョウはもうその話題にのめり込んでいた。多少頭の回転が鈍いところはあれど、これと思った事には熱心に取り組む、それがリョウの良い特徴でもあった。そして真剣な眼差しを向ける彼に対し、伸も可能な限りの言葉を尽して答えた。
「あのね、お店の横の狭い所を入って行くとね、古くて大きい、壊れた工場みたいな建物がある所に出たんだ。それで、誰も居ないみたいだったし、門が壊れてたから中に入ったら、そこのお庭みたいなところに煙突があったんだ。でも煙突ってさ、屋根に付いてるものでしょ?、地面に付いてる煙突だったから、面白いなと思って近くに行ったら、煙突の奥から音が聞こえたんだ。それでさ、」
「ちょ、ちょっと待てシン」
 しかし熱心に聞きながらも、リョウはその話を途中で制する。どうやらシンの説明する場所は、ドラッグストアからある程度離れた場所のようだった。何故なら、
「横の路地を入るってことは、店の裏になるのか?。裏は三ツ星レストランじゃなかったか…?」
 位置関係を確認しようと、会議の際に渡された捜査資料としての地図を広げ、リョウは再び店の周辺を確かめる。そしてリョウの言う通り、確かに店の裏は高級な客層を対象にした、レストランの広い庭になっているのだが…。
「奥まで繋がっているのかもな、ここは何だ?」
 セイジも横から地図を眺めながら、路地が更に奥の区画まで繋がっていそうなことを指摘する。その先を辿るとレストランの南東の一角に、地図上では空白の場所があり、セイジはその場所を指差してそう言った。
「…空地かな?。壊れた工場って、本当に誰も居なかったのか?」
 リョウが考えながら、再びシンに話の確認をすると、
「うん。工場には誰も居なかった。でもそのお庭から、隣の大きいお店の裏口が見えて、お店で働いてる男の人が、大きい袋を持って歩いてるのが見えたよ」
 とシンは答えた。大袋を扱う業種と言えば、幾らか該当するものが思い当たるところだが、リョウは地図に書かれた文字を具に見て、これと思う店鋪を見付けられた。
「大きいお店で大きい袋…。ここか、穀物卸店だな!」
「なら間違いなく空白部分が工場だろう、廃業したものは地図に載せていないらしい」
 リョウの指摘が正しいと見て、セイジも補足するように言った。
「だな。…で、それで?。煙突が何だって?」
 そして再びシンの話に戻る。
「工場のお庭にね、変な煙突があって、音が聞こえるから何だろうと思って、帽子みたいな蓋を取ったら、中に入れそうだったんだ。だから…」
「狭い所ってそれか!?」
 そこでリョウは、シンが薄汚れた格好で戻った理由も知ることができた。
「うん、僕は入れたから、続いてる所まで行ってみたんだ。そしたら小さい部屋の上の方にくっ付いてて、部屋に白髪のおじちゃんが居たんだ」
 そこまでを聞けば、その煙突と表現されたものが何だかは見当が付く。そしてそれは、恐らくシンくらいの子供でないと通れないことも。
「そりゃ煙突じゃなくて通気孔だな、地下室の換気用の。アジトから離れてるから、これまで見付かんなかったのかも知れない。あんまり利用価値はなさそうだな」
 と話して聞かせた、リョウの考察は至って正しいものだった。何故なら、店のすぐ下の地下室に繋がっているなら、催眠ガス等を流し込むのに利用もできるが、通気孔を設けなければならない地下室とは、恐らく店の地下ではない。秘密裏に他の土地に繋げているのを考えても、店の地下の他に、離れて作られた隠し部屋と想像できるのだ。
 そしてそんな場所に居るのは…
「しかし白髪のおじちゃんか…。そんな年の奴いたかなぁ…?」
「いや、もしかしたら老人ではなくて…」
「うん、僕のお父さんぐらいの人だよ。でも真っ白な髪なんだ、長くてさ」
 セイジの予想を裏付けるようにシンが言うので、リョウにもそれが誰であるかは判ったようだ。
「それは銀髪だろう」
「例の植物学者じゃないのか!?。あ、って事は生きてるのか」
 そう、そして秘密の地下室とは監禁場所である事も知れた。ただ、学者が生存していることを確認できたのは、保安局に取っては紛れも無い朗報だった。当事者が死亡していれば、判る筈の事も判らなくなってしまう。更にシンはもうひとつ、現状を把握する上で重要な情報を伝えていた。
「それでね、おじちゃんは帰らせてもらえないんだって」
「何?、シンはそいつと話したのか?」
「うん。でも煙突の出口がね、網みたいになってて出られなかったし、おじちゃんも動けないって言うから、そこから話しただけだよ」
 成程、監禁部屋には見張り等は付いていないらしい。無論全く人が来ない訳でもないだろうが、シンがたどたどしく話をするに充分な時間、そこには誰も来なかったのが窺える。
「そうか。それで何を話したんだ?」
「んーと、僕が『保安局の人を知ってるよ』って言ったら、騙されたんだって言ってくれって」
 そしてシンは今、確かにふたりに伝えたところだった。
「やっぱりそうか!」
「だろうな。だから監禁されているのだろう」
 まあ、大方の予想通りであったとしても、本人がそうだと訴えているのが判れば、より確実な捜査ができると言うものだった。シンはまた更に詳しい内容を語ってくれた。
「おじちゃんはね、珍しいお花を交換してくれる人に、遠い所からお花を持って来たのに、他のお花がほしいって言われて、嫌だって言ったら、帰れなくなっちゃったんだって」
 ところが、シンの話し方が稚拙で伝わらないのか、或いは言葉通りなのか、これまで考えられている筋とは食い違う話になっていた。
「んん?、どう言う事だ?。持ち込んだ花はホントに問題なくて、取引の口実を作る為に持って来させただけなのか?」
 シンの話からはどうも、学者は相手が芥子を欲しがっていることを知らずに、ただ珍しい植物の交換にやって来て、そこで話を持ちかけられたようにリョウには聞こえた。報告書には、予め芥子の取引をしに来たように書かれていたが、事の順序としてその可能性も無くはない。だが、セイジはその矛盾点をすぐに指摘できた。
「いや…、それにしては入国の際の報告に、『挙動が怪しい』とされていた。だから徹底マークをしていたのだろう?。希少な花の交換だけが目的と騙されていたなら、公明正大にしていて良い筈だ」
「確かに。少なくともそれ以外の事に何かしら関わってるな」
 けれどリョウがセイジに同意するのを見て、シンは強い口調に変えて反論した。
「でも!、おじちゃんは断ったんだよ」
 暫く話をしたことで情が移ったのかも知れない。勿論犯罪を起こす全ての者が、根からの悪人と言う訳でもない。むしろ普通の人間に魔が差した事件の方が、数多くこの世に存在する。シンにはまだ理解できない事かも知れないが。
「わかったよ。それで、騙されて掴まってるから、助けてほしいんだな?」
 リョウは敢えて犯罪の理屈については触れず、シンの言い分を通して諌めることにした。
「そう!。おじちゃんは悪くないんだよ?」
「わかったわかった。取り敢えず、お手柄だったな」
 そう言ってシンの頭を撫でてやると、本人はやや不服そうな態度を残しながらも、リョウの評価に対しては満足そうに答えた。
「ねぇ、僕役に立ったでしょ!、リョウ」
 確かにこの、全く予定外のシンの接触に拠って、相手側の現在の様子がかなり掴めて来た。実際問題として、八才の子供が考えられる範囲で最大限の、充分に誉める価値のある行動ではあった。ただそれを認められないのも確かだ。リョウはそんな事情を考慮して、
「そうだな!、重要な情報だった。ありがとう。でももう充分だ。明日は大変なんだ、怪我人が出るから絶対近寄っちゃ駄目だぞ?」
 と、労を労いつつ釘も差した。喜ばれたからと言って、より働こうとされてはとにかく困る。明日は今日とは違い、本格的な活動に入るから尚更だった。
「…はぁい」
「よし、本部に連絡しなきゃな」
 シンが答えるのを見届けると、リョウは早速得られた情報を伝達しようと、テーブルの通信機に向かっていた。時刻は夜十時をかなり回っていたが、新しい情報に熱中していた所為か、そこまでの眠気は感じられなくなっていた。この作業を終えた後は、少なくとも四時間程度は眠れるだろう。そんな見通しが立った分だけ、リョウは安堵して連絡作業に能れたのだから。



つづく





コメント)これでギリギリの容量なので、コメントもまともに書けない状態ですが、取り敢えず、やっぱりシンがまだあまり目立ってなくて済みません…。トホホ。しかも変な所で切れてしまった…。



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