ロザリオのママ
Passenger
#6
パッセンジャー



 銀座の外れにあるバー『ロザリオ』。
 ここは羽柴が新卒警部だった頃に、先輩警部に連れられて来て以来の馴染みの店だ。賑やかな銀座の隅にひっそりと、隠れ家のように存在する小さな店だが、その下界と隔絶されたような雰囲気が妙に落ち着く。ひとりで考え事をするには最適な場所だった。
「いらっしゃいませ…」
 藍のベロア壁の店内、ブロンズ色に統一された調度品、白熱灯のオレンジ掛かった明かりの下に、変わらず年令不詳のママが居た。
「あら、暫くじゃない、警部さん?」
 ママの名前はなぎ子と言うが、源氏名ではなく本名が鈴木凪子と言う。又敬虔なクリスチャンであることから、店の名前をロザリオと名付けて、それをそのまま店のモチーフとしたのだそうだ。ほっそりした美人で物腰は柔らかいが、彼女はなかなかのやり手で、この店の他に銀座にもう一軒、繁盛する大型のクラブを持つ女社長なのだ。しかし本人はこの店に愛着があり、クラブの方には殆ど顔を出していない。
 彼女について、過去にそのくらいの知識は得ている羽柴だが、
「ここでは『警部』と呼ぶなって…」
「わかってるわよ、だから小さい声で言ったでしょ?。でも一応敬意を表してみたの」
 低く見積もってもひと回りは年上と思われる、このママにはてんで子供扱いされてしまうのだ。まあ、それはそれで居心地の良いものだった。勤務中はほぼ人を使う立場に置かれる所為か、双肩の重さを忘れ気楽に過ごせるのは嬉しかった。なぎ子の方も恐らく、生意気な弟といった扱いをしているに違いない。他のお客には申し訳ないが、いつも少しばかり特別待遇で彼を迎えていた。
 羽柴が何も言わない内に、なぎ子はてきぱきと水割りを作って、カウンターの端の指定席に着いた彼の前に置く。余裕のある時は三日と空けずやって来る、彼に対する習慣的な行動でもあった。すると、内緒話の続きでもするように、彼女は妙に顔を近付けて言った。
「ねえねえ、今小田原の殺人事件を担当してるんでしょう?」
 羽柴が警察関係者であると知るなぎ子だが、無論その仕事内容や状況を聞くことは、どんなに仲が良くても矢鱈にはできない。しかし彼女は敢えてそんな話を持ち出していた。
「何処で聞いた?」
「さあ?。別に聞かなくても、私は何でもわかっちゃうのよ」
 そう答えて、ややからかい気味に彼女は笑って見せた。それもまた、なぎ子と羽柴の間での習慣のようなものだ。そして更に羽柴も冗談で返す。これが挨拶代わりの会話といったところだった。
「刑事に向いてるよ、なぎ子さん」
「フフフッ、なーんてね。テレビに映ってたわ、あなた。ニュースで葬儀の様子が出て」
「成程ね…」
 確かに今は、特別誰かの話を聞かなくとも、世間の注目を集める事件の担当では仕方がない。本来はあまり顔や名前を知られたくないのが捜査員だ。知った顔はマークされ易い上、素性を知られれば弱味を握られ兼ねない。警視クラスになれば現場の一線からは退く為、名前や顔が知れるメリットもあるだろうが。一介の警部に於いては、テレビ映りなど良ければ良いで有り難くはなかった。
「普段羽柴くんがどんな働きをしてるかなんて、私全然知らないでしょう?。びっくりしたわよ、ここに居る時と違って凛々しく見えるんだもの?」
「クク…、誉められてるんだか何だか…。で?、何か話したいことがあるんじゃないの?」
 羽柴はここまでの会話をただ、何となく遣り過ごしていた訳ではない。この店に居る間の彼は、仕事に関する話を極力避けるようにしている。なぎ子もそれを知っていて、故意にこの話題を向けているのだろうと、とっくに気付いていた。
「ま、よくわかりますこと」
 けれどあくまで冗談めかした口調で、彼女は明るい表情のまま本題に触れた。折角の店の雰囲気を壊さないように。
「それなんだけど…、私のすぐ近くに、あの事件に関わってる人がいるのよ」
 聞いてみれば正に意外な告白だった。小田原の大学のエリート博士と銀座のバーのママに、共通事項があるとは普通は思い付かない。それ以前に報道などでは、容疑者として名前や顔が公開された者は居ない。つまりその本人から聞かなければ、事件との関わりなど知りようもない筈だ。
「誰?」
「千石迦遊羅さんって言うの」
 しかもそれが、今丁度調査の中心に据えられた人物だ。
「えぇ?。なぎ子さんの知り合い?」
「私の住んでるマンションの住人なのよ、彼女」
「えぇぇ??」
 因みに羽柴はママの住所までは知らなかった。毎年届く年賀状にも店の連絡先しか載せていない。勿論客にはそれで充分な情報だからだ。まあ彼女なら恐らく、広々とした高級マンションに住んでいるだろう。千石大学の学長もかなりの資産家だと聞く。孫にそれくらい買い与える余裕はあるだろう、と想像できた。
 ところで何故今、千石迦遊羅が特に注目されているかと言えば、彼女は学長の孫であると同時に、耀者会出版の社長の孫でもあることが、戸籍を調べた部下から報告されたのだ。現在は耀者会グループの会長となっている、彼女のもう一人の祖父は阿羅醐帝人と言う。耀者会出版の代々の社長の親戚筋に当たる人間で、能力を買われて社長に就任したとの話だ。
 しかし前の報告にあった、千石迦遊羅の両親の心中を切っ掛けに、何故か母方の祖父である千石迦雄須の養女となり、両家は一切の交流を断っている。この辺りの経緯を詳しく調べたい、今はそんな捜査局面を迎えた時だった。
「話したことがあるのか?」
 羽柴の態度は急速に変わって行った。その眼光が鋭く何かを見据えている様子を、なぎ子は無言の内に信用を秘めて話した。
「あるって言うか、結構仲良しなのよ。私はこういう商売をしてるから、大体いつも朝帰りになるじゃない?。彼女は仕事が看護婦だから、夜勤の日は私と同じような時間に帰るのよ」
 同じマンションに住んでいれば、確かに出会うことがありそうな状況ではある。
「何度も朝方に会うもんだから、てっきり向こうも水商売だと思ってたの。彼女すごく綺麗な子じゃない?。だから私のお店にスカウトしようと思って、思い切って話し掛けたら勘違いだったんだけどね。でもそれからは友達みたいな間柄なのよ。日中時間がある時に、会ってお喋りしたり買い物に行くこともあるわ」
 そしてなぎ子の話した出会いの状況には、何ら不自然さは感じられなかった。彼女は繁盛するクラブの方には滅多に顔を出さないが、経営自体は確と自身の手で行っている。店のホステスも全て自ら面接をして決めるそうだ。千石迦遊羅はやや陰のあるタイプの美人だった、ママが目を付けるのも納得が行く気がした。
 なぎ子自身に疑わしいところはないと思える。では千石迦遊羅の方は?。
「じゃあなぎ子さんから見て、彼女は良い印象だってことかな?」
「そうよ、それは確かよ」
 なぎ子は念を押すように返した。
「それで、あの事件が起こった日ね。午前中に彼女が私の部屋を尋ねて来たのよ。夜勤明けで、その日は七時頃に帰ったらしいけど、私が起きる十時頃まで寝ないでいたらしいわ。目を真っ赤に腫れ上がらせて、一目見て焦躁し切った感じだった。聞いたら、朝のニュースで事件のことを知った後だったの。私も慌ててテレビをつけたわ。
 あの亡くなった博士、学生の頃の友達なんですってね。何でも敬遠されがちだった彼女達に、お互い初めてできた親友だって言うじゃない。彼女には本当に大事な人だったらしいわ。見ていて私が辛くなるくらい、ひどく悲しんで泣き続けていたわ。
 それが、少し前からその博士に辛く当たられるようになって、理由がわからないから困っていたと言うの。周囲の人が、あ、博士には婚約者がいたでしょう?、そういう方から『彼女は今ノイローゼ気味だ』って聞かされて、早くそれが治るようにって日々思っていたそうよ。
 心配事があったなら、何故自分に話してくれなかったのかを思うと、自分は何だったのかと、すっかり自信を失ってしまうって言ってたわ。本当に痛々しい様子でね…」
 千石迦遊羅の様子は、部下からの話とほぼ相違無いと思えた。彼女は被害者の死を酷く悲しんでいる。そして嫌われていた理由は解らなかった。だが、
「…彼女の生立ちを聞いたことがあるか?」
 羽柴はまだ謎に包まれた、耀者会グループのことを知りたがっている。そしてそれになぎ子は気付いたのかどうか、彼が望む方向に話を進め始めた。
「ええ、少しね。彼女はまだ幼かった頃で、後から養父に話を聞いたそうだけど、彼女のもうひとりの祖父の悪行に耐えかねて、彼女の両親は共に自殺したってことよ」
「悪行…、耀者会グループの会長が?」
 なぎ子はもっと何かを知っているらしいと踏んで、羽柴は敢えてその名前を出してみる。すると、
「そう、当時はまだ耀者会は教育関連のみの企業で、阿羅醐会長はその取締役部長だったそうよ。経営手腕は確かにある人みたいだけど…」
 そこで彼女は一度話を止め、注意深く周囲を見回しながら言った。
「本当はね、上客を密告したくはないんだけど、羽柴くんには話すわ。私も犯罪の片棒を担ぎたくはないのよ。内緒にしといてね」
 それは恐らく、おいそれと口外できない内容と見えた。羽柴もただのお客の時とは違う、至って真面目な態度で答えた。
「ああ、わかってる。クラブの方の客か?」
「そうなの、月に一度は幹部職員を連れて遊びに来るわ。店に取っては大金を落としてくれる存在だから、彼が来る時は私も挨拶に出るのよ。それで彼等の話すことを色々耳にするんだけど、あの会長、耀者会出版にいた頃から、かなりあくどい方法で昇進して来たらしいわ。今の幹部達はみんなその頃からの部下らしくて、酔ってるから共通の昔話を面白そうに話すのよ」
「あくどいとは?」
 企業社会にはよく有る話だが、その内容は今後の捜査の為に是非聞いておきたかった。
「うん…、あの会社は元々学生が相手じゃない?。だからアルバイトみたいな形で、学校の中に協力者が居たんじゃないかと思うけど、幾つかの大学でねずみ講を仕掛けたり、怪し気な奨学システムを紹介したりして、その利益を他の業績に書き換えていたらしいのよ。それをやっていた仲間なのよ、幹部達は。…あとは何だか要領を得ないんだけど、千石大学の話をしていたこともあったわ。それから復讐に来たの何のって、穏便でない話もしていたわ」
「復讐に来た?、逆じゃないのか?」
 そう、羽柴の頭の中では既に、阿羅醐帝人が千石迦雄須を恨んでいる様相が形を為していた。息子を自殺に追い込んだばかりか、孫を奪い取られた形になるからだ。その場合復讐者は阿羅醐の方だが、今の話からでは彼自身にも狙われる要素があるらしい。
「ううん、ガードマンを増やすって言ってたもの。会長が襲われたのよ。でも変なのよね、そんなニュースって全然聞かないから。私お客さんと話をする為に、普通の新聞二誌と経済誌も読んでるし、テレビのニュース番組も欠かさず見てるのよ。例え未遂だったにしても、今や金融界にも知られた人でしょう?。だから…」
 なぎ子が言おうとした言葉を羽柴が先に口にした。
「揉み消したんだな、恐らく」
「そう思うわ。何か都合が悪いことがあるのよ。過去を暴かれたら終わりだもの」
 きな臭い、というレベルでは既になかった。耀者会グループそのものが事件に関わっていると、羽柴は確信を深めていた。何故なら被害者を取り巻いていた環境は、本人の意思や行動とは特に関係のない、過去からの因縁話に満ち溢れているのだ。被害者は大学の看板とも言える著名人、そして阿羅醐帝人は『あくどい』事をして来たと言う。
 もしその線で正しければ、被害者は当て付けに殺されたことになる。他の理由もあるかも知れないが、孫の友人なら情報も得易い相手だ。そして被害者をつけ回した者が実際に居たとすれば、それは間違いなく耀者会絡みの人間だろう。思い当たるのは町を歩く耀者会絡みのセールスマン…。
 もしかすると、被害者はそれに気付いていたのかも知れない。
 だから千石迦遊羅を避けていたと仮説が成り立った。親友として相手を思うからこそ、他の者には理由を話せなかったのではないか。警察に届けることを躊躇ったのではないか。しかし、被害者は何処からそれを知ったのだろう?。消えた私立探偵を何としても探し出したいところだ。
「…知ってるのはこのぐらいよ。でも私には、阿羅醐会長が犯人かどうかは判らない。迦遊羅ちゃんは彼とは全然会ってないそうだけど、会長の方はずっと彼女を気にしてる筈よね?。そうなると、孫の親友を殺したりすれば、尚孫を悲しませることになるのに、それでも博士を殺したい理由があったってことかしら…?」
 なぎ子は最後にそう話して、
「私の話、羽柴くんのお役に立てたかしら?」
 といつもの調子で締め括った。
「もー、流石だよなぎ子さんは。今度来たらヘネシーのボトルでも入れよっかな」
「あらありがとうっ」
 そうして明るい銀座の夜は、眠ることのない人々の欲望と共に更けて行った。



 翌日、羽柴は早朝から耀者会に関連する場所を回り始めていた。
 昨日は結局『ロザリオ』で一晩を明かした為、都心部を回り易いスタート地点ではあった。有楽町で捕まえたタクシーに乗り、都内目黒区の住宅地まで運んでもらった。
 朝六時前の寺の境内。まだこの時期の早朝は冷え冷えとしているが、庭を掻く住職は草履に裸足で何とも寒々しく映る。そして場所が寺だけに、彼の仕事の邪魔をするのは気が引けたが、羽柴はその広い中道を真直ぐ歩いて行った。
「お早うございます…」
 その足音に気付いて振り返った、小さく痩せた老住職が会釈をして来る。羽柴はそれに軽く頭を下げて応えると、住職の前に立ち止まって手帳を差し出した。
「警察の者ですが、こちらの住職の婆蛇悶さんですね?。少しお話を窺いたいのですが」
 住職は特に顔色を変えることもなく答えた。
「はあ…、ここでよろしければ…」
「構いません。大した時間は取らせませんから」
 羽柴はそう簡潔に返して、早速本題を切り出そうとしていた。まだ周辺の人通りが少ない静かな内に、他に気を取られることなく、相手の様子を確と観察できるように。
 ここは、阿羅醐帝人が耀者会出版の社長に就任後、永世の菩提寺として墓地を購入した寺だ。「牛に引かれて」でお馴染みの善光寺同様、特に宗派には属さない独立した仏門らしい。羽柴はあまり宗教には明るくないが、阿羅醐帝人を始め、耀者会グループの社員は信仰熱心な者が多いそうだ。仕事の合間に、足繁くここに通う者も少なくないと言う。
 しかし仏教なら特に、それぞれの家に伝統的に伝わる宗派があって然りだ。会長が信仰しているからと言って、簡単に宗旨替えできるとも思えない。ところが社員の多くが、カルト宗教に熱狂するかのような状態で、この寺への帰依を望んでいると言う。いつか、宗教を隠れ蓑にしたテロ集団の事件があったが、「マインドコントロール」と言う言葉を連想させた。
「今、小田原の女性博士の事件を調べてるんですが、御存知ですか?」
 羽柴ままず単刀直入に聞いてみた。
「ああ…、新聞に載っておったな」
 惚けた様子でもない住職が、そう簡単に尻尾を出すとも思えない。
「この事件については、まだ容疑者と言える者は居ないんですが、何か思い当たることはありませんか」
「いやぁ…。何で私なんぞが…」
 しかし今はこの調子でも、しらを切り続けることはできなくなると、羽柴は既に確信を以って臨んでいる。だから余裕を持って話を続けた。
「亡くなった博士は、小田原の千石大学に所属していましてね、その学長は千石迦雄須さんと仰る方だ。聞き覚えがあるでしょう?、こちらのお寺には、この千石さんと姻戚関係の方が檀家におられますね」
 実際このようなくどい説明をするのは面倒だが、決定的な状況を示さねば話ができない。犯罪に関わる者は皆、追い詰められなければ口を開かない。
「…ああ、阿羅醐氏のことかな。…御子息の嫁がそんな名前だったな」
 やっとその名前を出して来たか、と羽柴は予定通りの進行を確認するように続けた。
「その通りです。しかし何故でしょう、こちらにはその息子夫婦の墓石は無いですね?。二十年程前に揃って他界された筈ですが、そのすぐ後にこちらの檀家になられたでしょう?」
「あー、それは…」
 さてどんな説明をするか。
「夫妻が亡くなる前から、両家はひどく仲が悪くなっておったと…」
 それは大体予想できている。ふたりが結婚したことで、千石家は初めて阿羅醐帝人の実像を知ったのだろう。問題は阿羅醐帝人が何をしていたかだ。
「何故です、そこまで険悪になる程の理由とは?」
「さあ…。どちらも頑固なところのあるお人のようでな、教育関係の職の上で、意見の食い違いがあったようだと聞いておるが、夫妻は板挟みになって…」
 それは答になっていないだろう。と、羽柴の頭に不満の声が過った時だった。
「あれっ?」
「!」
 羽柴と老住職の立つ境内の道に、鮮やかな紫のジョギングウェアの男が現れた。そして彼は気の抜けるような明るい調子で言う。
「おはようございます!、先日は失礼しました刑事さん、こんな所でお会いするとは」
「確か…、耀者会ゼミナールのセールスマンだったよな?」
 そう、やって来たのは秀の先輩だと言う男。名前も既に憶えていた、営業二課・中学生担当の蜘蛛谷忍。
「そうですとも!。だからここに来るんじゃないですか」
 彼は何の衒いもなくそう話した。この寺と耀者会は周知の縁である事実が判る。
「そういうもんか」
 羽柴はこの、企業を信じて疑わないような彼の口調に、気後れ気味に適当な相槌を打った。しかしそれが意外に良い方に転んでいた。
「あれ、知らないですか?、ここは耀者会グループの社員研修をする寺ですよ?。私は新卒の頃に来て以来、時間がある日は必ずここにお参りに来るんです。心が洗われますよ?」
 蜘蛛谷ははきはきとそんな説明をしてくれた。言われてみれば、耀者会グループは一風変わった社員教育に拠って、社内活動を円滑にし、業績を伸ばしていると業界では知られている。それは経営者だけでなく、所属する社員にも誇りに思えるもののようだった。
「社員研修…。じゃあ入社試験に合格するとみんなここに来るのか」
「大概の者はそうです」
 そして愈々怪しい向きに思えて来た。確かに最近の企業には、寺で禅修行をさせる、ボランティアに参加させるなど、業務とは関係ない経験をさせる所もある。殆どが成人である社員の教育にも、まず精神を重要視する流れがあるのは確かだ。但しそれは個人個人の成長を願ってのことで、統一的な思想を生み出す為では決してない。思想の自由が憲法で守られたこの国では、それは人権侵害に当たるからだ。
 にも関わらず、社員のこの寺への信仰心はどうだろう。蜘蛛谷の話が事実なら、自由で豊かな国に於いては異常事態と捉えられる。そもそもこの企業は、教育に関してはエキスパートなのだ。何かしらの洗脳的理論、手法と言った知識は豊富に持っている。社員教育と称して、それ以上のことをしているのではないか、と容易に考え着く環境だ。
「『大概の者』の他には?」
「私のようにモニター奨学生だった者は、学生の頃からここに来てるんですけどね」
「モニター?。どういうものだ?」
 それはなぎ子が言っていた、学校内の協力者に当たりはしないか?。と羽柴は考えたが、しかし蜘蛛谷の話の続きからは、あまり怪し気な印象は受け取れなかった。
「いやいや、よくある商品モニターと同じです。耀者会出版の教材で勉強するだけです。私は雑誌に付いていた葉書で応募したんですが、契約時から受験までの教材一式を渡されまして、大学に合格すると、その後教材費代わりに耀者会グループの仕事を手伝う訳です。今でもやっていますよ?」
「手伝いとはどんな?」
 すると彼は多少困ったように笑いながら、
「ははは、それが今と大して変わらなくて。学生や学校職員に本や教材を勧めたり、チラシを配ったり、要するに宣伝活動ですよ。だからもう、随分長く社員をやっている気がします」
 退屈な境遇であることを恥じるように語っていた。まあ確かにそれだけなら、至極平和な奉仕活動のように思えるが。
「ふーん…、そのモニター卒業生は何人くらい居たんだろうか」
「全体の数は知りませんが、当時私の通った大学には私を含めて三人いましたね。各大学に数人ずついたでしょう、今も一人から四、五人ってところです。勿論いない学校の方が多いですが」
 秀の高校時代の先輩とすれば、自分と同じ世代だと羽柴は知っている。三、四年前までは大学に通っていただろう。つまりつい最近の話のようだ。しかし、千石大学のように学長がこの出版者を嫌っていれば、大学での宣伝活動などまず許しはしない。又その学生が信用の置ける者でなければ、耀者会としても誤ったイメージを植え付け兼ねないリスクもある。
 過去の新聞に、阿羅醐帝人が耀者会出版の社長に就任後、多数の学校が一斉にその関連企業を離れ、二部上場したばかりの株価が急落したという記事を見付けていた。十七年前のことだ。その当時モニター制度があったかは不明だが、阿羅醐一派が仕掛けていたと言う学生絡みの何らかの活動、それと株価の急落には関連があるような気がする。
 その他の大学の様子はまだ報告されていないが、過去、現在を通して、耀者会出版の活動がどんな形で続いているのか、是非とも内容を知りたいところだ。
「そうか。いやありがとう、参考になった。…あ、それから住職も、どうも」
 羽柴は簡単にお礼の言葉を並べた。新たな調査対象を幾つか得られたところで、今日のところは満足に退散できそうだ。まだこの後に、黒幕と思える人物の所へ出向かなければならない。情報の混乱を起こさない程度に良い情報収集ができた、と言うところだった。
「あー、あのー…」
 すると、あっさり帰ろうとする羽柴に、追い縋るような目をした蜘蛛谷は言った。
「秀の奴はどうしてるんでしょう?、昨日家に居なかったみたいなんで…」
 やはりそう来たか、と思った。己の態度は明らかに耀者会を疑うものだが、それにしては蜘蛛谷が嬉しそうな態度を示していると、羽柴は奇妙な感覚をずっと持ち続けていた。
「ああ、あいつは今出張中です。もう暫くしたら戻りますよ」
 羽柴は至って冷静に嘘を吐いた。早ければ今日中に、遅くとも明日の朝には戻る筈だった。
「あっ、そうなんですか!、それならいいんです♪」
 彼はそうして、楽し気に寺の本堂の方へと走って行った。この蜘蛛谷忍に取っては、耀者会グループの一員であることも大切ではあるが、それより重要とされることもあるようだ。



 同じ日、こちらも朝から忙しかった。
 コンビニエンスストアで六缶組のビールを買うと、征士は「冷蔵庫に入れておけ」と玄関先で伸に渡し、その足で小田原へと向かっていた。品川から小田原までは二時間弱の長い道程。無論電車賃も結構かかる。しかしスポンサーは今のところ財力がない為、この自前での出張が成果なく終われば、厳しい現実だけが残る不安もなくはない。
 だが、今優先すべき事もあるだろう。そうしなければ己に幸運が齎されることも、あまり期待できないような予感があった。取り敢えず目先の利益、不利益は今は考えずに、与えられた疑問を解いてみようと征士は考えている。ふと、巡査長である父親の立場が解ったような、とても妙な気持がした。

「えーとー…、俺が真田遼だけど、あんた誰?」
 千石大学の正門を少し入った所で、征士は適当に捕まえた学生に遼を連れて来てもらった。何故なら征士の予想通り、この大学の敷地はとにかく広かった。過去は都心に集まっていた大学が、年を負う毎に郊外への移転を続けている昨今。設備の少ない大学には人も集まらないので、この大学のような郊外型の設計が今は有利だと思える。
 しかし来客には多少不便だった。この敷地内の、大体どの辺りが西校舎かは聞いていたが、西校舎に含まれる建物が複数存在する。征士は無駄に歩き回るより、先に遼に会った方が良い思った訳だ。
「私は伊達征士と言うが、今私のアパートに、毛利伸と言うここの学生がいる。君は彼の友達だと聞いて来たのだが」
 征士がまず簡潔に状況を説明すると、遼はすぐさま反応を示してくれた。
「えっ、じゃあ、伸に頼まれて来たのか?。あんた伸の知り合いか何か?」
「そんなところだが、まあ少し待ってくれ」
 そう返して、征士は上着のポケットから自分の携帯電話を出すと、自宅の番号にかけて遼に手渡した。前もって伸には、何かの折に電話を掛けるかも知れないと伝えてあった。
『…もしもし?』
 他所の家の電話に出る時は、誰でも多少畏まった態度で応答するものだが、
「あっ俺だ、遼だ!。一体どうしたんだよ!?、急に居なくなったから心配してたんだぞ!。変な行動すると余計疑われるのに、誰にも何にも言わないで行くなんてよ!」
『あー、遼…』
 伸が電話に出た途端、弾丸の様に捲し立て始めた遼に、伸は言葉を返すタイミングも掴めない。
「知り合いの所に居たんなら、一度くらい連絡くれよな!。無事ってわかれば、こっちだって余計なこと考えなくて済むんだ!。それがわからないってことないだろっ!?」
『ご、ごめん…』
 けれど彼は怒りを噴出しながらも、伸の立場を理解できない訳ではない。
「はあ…、思わず怒鳴っちまったけど、あの状況じゃ逃げたくなるのもしょうがないと思ったよ。何処行ってもやな感じだったからな」
 事件の当日、伸の周囲は見知らぬ顔ばかりが取り巻いていた。まだ捜査が始まっていない内から、何故か彼はマスコミや近隣の人の注目を浴びていたのだ。
 休講になった大学構内では、事件現場のついでに、わざわざ彼を見に来たと思われる学生が多く居た。そして敷地を一歩出ると、今度は近所の住人やそうでない野次馬、カメラやマイクを持ったレポーターに追い掛けられ、やっと自宅マンションに逃げ帰ったと思えば、既にそこで待ち構えていた記者に捕まりそうになり、後で大家にも説明を求められる始末だった。
 それよりはやや軽度だったが、遼も同じような一日を過ごしたのだ。
『うん。…今はどうなってる?』
 遼の言葉が落ち着きを取り戻したのを知り、伸は漸くまともに受け答えをした。
「ん、もう騒々しくはなくなったけどな。西校舎以外の学部は授業を再開してるし。でもまだ毎日何かしらウロウロしてるぜ。俺のアパートにもあれから、ぺったり貼り付いたような奴等が居るしな。御苦労なことさ」
 事件から一週間も経っていないのだから、それは仕方のないことかも知れない。いくら大衆はすぐ飽きると言っても、未だ殆ど解明されない事件では、そう早くに引き上げてはもらえないようだ。
「だからまだ無理して出て来ない方がいいと思う。俺昨日、清掃に来たおっさんに聞いたんだが、前に変な噂が立っただろ?。あれを近所に住んでる人がわーっと思い出して、マスコミの奴等に次々話したらしいんだ。何でかわかんねーけど、あんな噂話にこだわるなんてどうかしてると思うけどな。とにかくそれで注目されてたらしいんだ、俺ら」
 黙って電話中の様子を見ていた征士だが、その遼の話にはやはり不思議な印象を受けていた。この町一帯の顔の様な存在だった博士に対し、悪いイメージの噂話を真っ先に思い出すとは、普通の感覚ではないような気がするのだ。それがひとりではなく大勢だとしたら、この町自体が異常だと言うしかない。警察はそれに気付いているのだろうか?。誰か気付いた者は居なかったのか?。
『そうだったのか…、うん、ありがとう遼。じゃあもう暫く様子を見ることにするよ』
「ああ、そうした方がいい」
 必死の状況説明に対して、伸の返事はほんの僅かの言葉でしかなかったが、それに拠って、遼も安心して居られるようになったのは事実だ。「今はまだ近付かない方がいい」。それだけのことを伝えられなかった毎日から、彼は漸く解放されてほっとしていた。
『あ、それでさ、今そこに居る奴だけど、僕の代わりにそっちに行ってもらったんだ。ちょっと調べたいことがあって、悪いんだけど案内してやってくれる?。それと、刑事さんから聞いたけど、博士のお葬式に出てくれてありがとう』
「はは!、ちゃんと伝えてくれたんだな。わかった、頼まれてやるよ」
 電話をかけてくれたことで、結局伸は自らの口でお礼を言う機会にも恵まれた。小さな事ではあるが、その喜びは幾許のものであったか知れない。
『じゃあ宜しく、遼』
 そうして電話を切った後、多少訝し気な顔をしてそこにやって来た遼も、今はすっきり割り切った笑顔で征士に言った。
「いや助かったぜ!、ありがとう。下手に出て来るなって、ずっと言いたかったんだが、警察にはそんなこと頼めねーからさ」
「確かに」
 その砕けた話し振りには、征士も携帯電話を受け取りながら笑っていた。

 それから、征士は無事遼の案内を借りて、目的の西校舎へとのんびり歩いて行った。
 煉瓦に縁取られたガーデンと丸い屋根の鐘楼、小さな野外スタジアムを持つ広大な広場、テニスコートや幾つかの運動場が連なる向こうに、その校舎群は寄り添って建っている。そこまでの道程で、事の経過や詳しい自己紹介などをしながら、彼等は伸を介してすっかり打ち解けたようだ。否、ふたりの疑問が合致したから打ち解けたのかも知れない。
 博士が殺された件と、伸との関わりは本当にあるのだろうか?、と。
「最近伸の様子が変だとは思ってたが、そんな事が起こってたのか…。うーん、でも催眠術ねぇ…。そんな本があるのかどうか…」
 無論門外漢の遼には、例えそれが存在したとしても、まずその分野の書棚に行ったことはないだろう。
「ここに無ければ医学部の図書館に行けと言われたが、私の感じでは総合的な分野の方だと思う。何か見付かることを期待するよ」
「ああ、まず『催眠』でタイトル検索してみようぜ」
 千石大学では二年前から全ての図書館について、所蔵している書籍を完全にデータベース化していた。その閲覧には学生コードを必要とする為、早速遼に感謝する場面が来たようだ。
 西講堂の図書館にふたりが到着すると、その入口近くに三台並んだ端末に、遼は早速向かってデータを呼び出し始める。検索語に『催眠』の二文字を入力すると、画面はウェイト表示に切り替わり、彼等は暫し画面を眺めて待っていた。
 すると意外にも、検索結果には十六冊もの蔵書が引っ掛かって来た。
「『催眠と暗示の科学』、『催眠術とフロイト』、『自己暗示と催眠療法』…これは違うな」
 征士はそのタイトルをひとつひとつ、注意深く読み上げて行く。そして最終的には七冊の本が、目的から逸れていないだろうと判断された。
「じゃあ俺が探して来るよ、その辺の席で待っててくれ」
 図書館の内部に於いても、勿論遼は勝手を知っている立場だ。プリントアウトした紙を片手に、彼はデータに載せられている分類記号の書棚の方へ、迷うことなく真直ぐ歩いて行った。そうは言っても、七冊の本を探し出すのに一分とはいかないだろう。ぼんやり待っているより、今検索されたデータを再考してみようと、征士は各書籍の詳細データを読むことにした。
 最初にリストアップされた『催眠と暗示の科学』のデータを開くと、それは征士が予想していたものとは違っていた。内容や執筆者に関するデータかと思えば、単なる貸し出し記録だったのだ。宛てが外れたような気がして閉じてしまったが、すぐにまた、それこそ重要な情報だと思い直す。そしてそれぞれの本の貸し出し記録を開いては、記述されている内容を注意深く眺めて行った。
 そして何冊目かのデータに、征士は意外な名前を見付けた。己が目を疑い、思わず呟いた。
「…どういうことだ…?」
 本のタイトルは『催眠の手法と有効性』。遼が探して来る七冊の内の一冊だった。その貸し出しデータには今年の二月三日の日付けで、柳生ナスティの名前があった。
 殺された博士が何の目的でこの本を?。
「おい、おい、一冊だけ見付かんねーんだ、貸し出し中かな?」
 丁度そこへ遼が六冊の本を持って戻って来た。しかし今重要なのはその内の一冊。
「その中に『催眠の手法と有効性』と言う本はあるか?」
 征士はやや声高になりながら遼に告げると、机の上に下ろした本を改めて、
「ああ、ある。これだが…、何かわかったのか?」
 遼はかなり厚みのある、重厚なハードカバーの書籍を持ち上げて見せながら、征士の只ならぬ様子に応えるように、自ずとその足を彼の方へ進めていた。そして遼が端末の傍まで来ると征士は言った。
「その本、亡くなった博士が借りているようだ。貸し出しデータに名前がある」
「…えぇ?…」
 博士の身近に居た遼ですら、彼女と催眠術は結び付かないイメージだったらしい。どちらかと言えば博士は楽天的な性格で、あまり深く思い悩むこともなく、又おべっかや陰口と言った行為も嫌っていた。何でも「正面から堂々」のタイプだったのだ。それが催眠など、他人の人格を無碍にするような方法で、何らかの行動を起こすとは考え難かった。亡くなった今にしても考えられない。
「まさか…。博士はこんなことに関心を持つような人じゃない、と思う」
 遼の驚き方が余りにストレートなので、彼の見方が誤りでないことを、征士も信じたいのは山々だった。
「まあ借りたからと言って、それを使うことが目的とは限らない」
 そう言うに留めて、話題の向きを少々変えることにした。つい今しがた思い付いた提案についてだ。
「このデータベース、名前から検索することはできないのか?」
「名前って、著者名か?」
 ややぼんやりと答えた遼だったが、はっと我に返る。
「そうか、博士が借りた他の本を見れば、関連がわかるかも知れないな…」
 但しその権利は一般の学生には許可されていない。理工学部の学生ならハッキングも可能だろうが、残念ながらそんな知識は持ち合わせない遼だった。ここは担当教員に正直に話し、何とか頼み込むしかなさそうだった。

「特別扱いはできませんね。学長が許可したならともかく…」
 しかし案の定、その日の当番であった国文科の准教授の答は「否」だった。
「学長の許可なんて、降りるまで時間がかかるでしょう?。こっちは急いでるんです!。友達の名誉に関わることなんです!、大事なことなんですっ!!」
「そう言われてもね…」
 遼の訴えは多少芝居掛かって見えるのだが、どうもこれが彼の地の侭らしい。と征士は思いながら、遼から数歩下がった場所で、頑な准教授の顔をじっと見詰めていた。デジタル時代の大きな問題と言えば、個人情報の保護がまず真っ先に思い浮かぶ。これは無理な相談かも知れない、征士がそう思いかけた時、貸し出しカウンターに繋がる司書室の奥から、
「見せてやるだけならいいじゃないか、悪さする訳ではなかろう」
 そう言いながら、体育顧問の剣舞講師が姿を現した。あまり参加できないでいるが、遼はこの大学の剣道部に所属している。その顧問をしているのも剣舞講師だ。
「何だ真田か。何処かで聞いた声だと思えば」
 ここでよく知る教員に会えたのは幸運だった。運が良いのは遼なのか、征士なのかは判らないにしても。或いは、亡くなった博士の意思が助けてくれたのかも知れない。
「向こうで聞いていたが、柳生女史のデータを見たいんだって?。それは事件に関することでかね?」
 落ち着いて淡々とそう話し掛けた彼に、遼は変わらない調子で訴えた。
「そうです!。マスコミなんかでは色々、勝手なことを言われてるけど、事実と違うとわかってることもあるし、俺達少しでも博士がどんな状況だったのか、本当のことを知りたいんです!。それが博士と、疑われてる友達の為になるんです!。どうかお願いします!!」
 すると、その必死な様子を微笑ましい顔で眺め見て、
「わかったわかった。但し勝手に操作はさせられないぞ?。私がここの端末でデータを呼び出すから、それを見ると言う形なら許可してやろう」
 と剣舞講師は言ってくれた。眉間に皺を寄せていた遼の表情がふっと弛む。
「それでいいです!、勿論」
「ちょっと、あんた勝手にね…」
 遼の明るい返事と共に、そこに居た准教授が怪訝そうに口を挟む。しかし、
「何だね?、君は大学の規則が何の為に存在すると思うんだ。在籍する者の安全を守る為ではないのかね?。人が殺される事件が起きている、他の者に更なる被害が及ばないとも限らん。彼の訴えを聞いて、彼が何の為に頼んでいるのかわからないのか?。それとも彼はデータを悪用するとあくまで決め付けるかね?」
 そうまで言われては誰も反論できない。人として。
 そして大人しくなった准教授を後目に、剣舞講師は貸し出しカウンターに据えられた、専用端末の前へと向かった。
「よし、少し待ってくれよ」
 遼の気持を特別に汲んでくれた体育顧問は、ある意味では身勝手と捉えられるかも知れないが、彼なりの理論でこの大学を大切に思っているようだ。そのことだけはこの場に居た誰もが理解できた。



つづく





コメント)なぎ子さんいいですね〜、ステキですね〜。実は他のパラレル話でも、なぎ子さんは銀座のクラブのママだったりします(笑)。そっちは書くかどうかわからんけどね。すずなぎは「少女」より「お姉さん」の方が好きです。ではでは次へどーぞ。



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