手を振る秀
21世紀のハレルヤ
#5
Nu Hallelujah



 カーテンの隙間から差す日射しが、昨日よりも一層輝いて見えた。
 ほんのちょっとした切っ掛けで世界は変わる。他の誰かにしてみたら、今日も只管天気の良い夏の日と言うだけだが、今この部屋に居るふたりの持てる世界は、確実に変化した筈だった。
 三十六年間の孤独な秘密。
 秘密は秘密のままだが、少なくとも孤独ではなくなった。また、出会えたのは単なる同志ではなく、過去の同じ時に同じ刹那を感じていた人だった。そんな現実の経緯に、これまで過ごした時間は救われただろうか。否、これまでよりこれからの方が遥かに長い、我々と言う種族の人生だけれども…。
「さあ、今日は忙しくなるぞ」
「…ん?」
 今朝は少し早く目が覚めた征士。ベッドの中でうつらうつらしながら、心地良く、様々なことに思いを巡らせていると、横に眠る伸が突然起き上がっていた。
「呑気に寝てる場合じゃないよ」
 そして征士には意味不明な言葉を続けた。
 彼としては珍しいことだが、もう暫く怠惰な幸福感に微睡んでいたいと思っていた。しかし伸の方は起き出すなり慌ただしく、バスローブを羽織ってバタバタと行ってしまう。忙しい、と言われても、昨晩までにそれに当たる予定は聞かなかった。無論昨晩はそれどころではない、彼等に取って重大な事件が起こった夜に、観光計画など話す流れはなかった。
 しかしそこで、観光ではないと征士は思い出す。
『そう言えば、着いて来たのには訳があると言っていたな』
 正に昨晩、伸は何らかの目的があって来たと打ち明けていた。状況から言って恐らくそれも、自分達の秘密に関わることなのだと、漸く明瞭になった思考で征士は考え始める。
 出会い頭から賑やか過ぎると、伸の態度について些か疑問に感じてもいたが、今思えば始めから、当麻達研究者を邪魔しに来たのかも知れない。種族全体を考え行動しているのかも知れない。ただ、何故彼がそんな役目に、私財を投じてまで必死になるのか解らない。
 と、彼はそこまで考えたところで、多少重く感じる半身を起こした。
 暫く感じることのなかった気だるさが、却って体の細胞を賦活させるような不思議な感じがした。それは人種的な作用かも知れないし、単なる恋かも知れないと思った。
 彼の人は忙しなく視界から消えてしまったけれど、まあ、征士はとても幸福な朝を迎えていた。昨日一日悩んだ甲斐があったと言うものだ。

 クロゼットにあったガウンを適当に身に纏い、身繕いをしに部屋の廊下へと向かうと、サニタリールームからはシャワーの音が聞こえて来た。征士は一応注意を払いながらドアを開ける。と、幸いバスルームはドアに面していなかった。
 そこでふと思い立つ。先程掛けられた言葉の意味を確認しようと、彼はバスルームに歩み寄った。煙が漏れていないところを見ると、ドアは閉まっているようだ。だから故意に覗くつもりはなかったが、
「意気込んで何をしようと言うのだ?」
 と、やや声を張ってドアの前に立った時、素通しの一枚ガラスのドアであることを初めて知った。モダンでお洒落な建具ではあるが、プライバシーも何もあったものではない。中に居た伸も困ったような顔で振り返る。ひとりで使う分には何の問題もない部屋だが…。
 しかし振り返った相手より、征士の方が驚き青褪めていた。
「…何故戻っている」
 そう、ついさっきまで二十歳そこそこの姿だった伸が、今は三十代半ばの容姿に戻っていた。何が本当の姿かは判らないので、「戻る」と言う言葉は適切ではないかも知れない。それはともかく、
「何故じゃないっ!、突然誰かが入って来たらどうすんだよっ!。君も早く三十代に戻るんだっ!」
 固まっている征士に、伸は叱りつけるように言った。今が幸福だろうと不幸だろうと、いつ如何なる時でも警戒を忘れない伸は、ある意味で優秀な吸血鬼と言えるだろう。
 ところで征士が驚いたのは、三十代の伸の容貌が醜かったからではない。勿論まだそこまで衰える年ではないし、彼は二才くらいサバを読んで見た目を調整しているのだ。ただ直前まで抱いていた征士のイメージと、かなり違って見えただけだ。実際二十歳前後の伸は線も細く、まだ少年の面影を残した風貌をしていた。成熟する時期が遅いタイプなのか、十年以上経過するとすっかり男っぽくなっていた。
 流石にそれでもガッチリ型とは言えない体型だが、中性的な印象は形を潜め、適度に筋肉の筋が浮き出るくらいの、一般的な成人男性の様である。
 そんな伸は、征士の反応には特に興味もなさそうだった。前途の通りどれが真の姿とは言えないのだから、老化を意識して悩むこともない。彼は寧ろ征士の態度を愉快そうに見て、体に残った石鹸を流しながら言った。
「何をするかなんて愚問じゃないか。仲間の為に無償で働くのは尊いって言っただろ、僕は」
 ドアの横の壁に凭れ、座り込んでいた征士だったが、返された言葉は確かに記憶に残っていた。昨日の中華料理店の席で、友人を心配するオーナーの行動に対する発言だ。あの場では多少大袈裟な表現にも聞こえたが、意味的には同意できる意見だった。
 何故なら同胞の秘密を守る意識は、幼い頃から徹底して叩き込まれている。それが吸血一族の慣習であり掟だからだ。
 と、征士は店のふたりに同情できた気持を思い出し、同時に伸の目的にも気付く。
「もしや、吸血鬼騒ぎが起こっていると知って…?」
「そうだよ、もし本当に居るんなら、真実が漏れないよう助けてあげなきゃね」
「そうだったのか…」
 成程、と妙に腑に落ちていた。邪魔しに来ただけにしては、伝説の研究にはそれなりに関心を向けている、伸の態度は常に不可解なものであったけれど。そんな目的があったなら理解に難くない、と征士は今目覚めたように目を見開いていた。
 けれどその結果はどうなのだろう?。征士を同族と判別できたのは偶然であり、今疑われているのは地元の住人だ。昨日までにそれらしき人物に遭遇しただろうか?。
「だが彼は、」
 と征士は、研究者達の注目を集める遼について話そうとした。ところがそれを遮って、
「いやバイアルの持ち主」
 伸ははっきり聞こえる口調でそう返した。現状、怪し気な行動を見せる人物を疑うより、遺留品の持ち主を見付ける方が、自分の目的に取っては確実だと彼は考えているようだ。
 日本では滅多に見ないラテン語ラベルの薬瓶。文字の発祥場所と血に関する表記から、柳生博士はこじつけのような推理を展開したが、実はほぼ当たっていた。現代の吸血一族は血を吸う代わりに、この薬品によって支えられているのだ。製法が確立したのは百年ほど前で、その頃から彼等は異国への移住を始めた。
 と言っても議論にあった通り、流通が難しい時代はヨーロッパの、陸続きの国へ移住するのがせいぜいだったろう。各国で生産され始めたのは五十年前と言われている。そう、輸入ではなく、住人の多い国は国内で生産しているので、怪しい密輸品でも何でもない訳だ。
 そして彼等はひと月に一本、一年で十二本この薬を服用する為、年に一度程度まとめて注文をして常備している。使用後は速やかにラベル表記を削り落とし、瓶を破壊しなければならない決まりだが。
「見付かったのか?」
 征士がその持ち主の発見を尋ねると、何故だか伸は暫し沈黙し、「その前に」と言うように質問とは違う話を始めた。
「『血』は僕が作ってるんだよ、日本では。他にもうひとり生産者がいるけど、君も知ってる通り、全て善意の寄付で成り立ってるシステムだ。僕はみんなの為に働く、代わりにみんなが僕の生活と秘密を守ってくれてる訳だ」
 システムと言うのは、政治的、経済的な力のある同胞が過去に、製薬会社に『血』と呼ばれる薬品の製造を潜り込ませ、秘密裏に成り立った製造ラインである。表向きはそれこそ栄養剤とでもしてあるのだろう、現在は多くの国にそれが存在している。そして一族の存亡に関わる薬品である為、代金は原材料費のみ、代わりにそれぞれができる範囲で寄付をし、システムの維持に努める形を続けている。
 つまり伸は職業上、日本に住む吸血一族には必要不可欠な存在なのだ。それと同時に彼自身も、充分な報酬を受け、様々な待遇保護を与えられて暮らしている。
「そんな立場だからね、率先して仲間を助ける義務があると思うんだよ」
 と続けた彼の行動の動機は、聞いてみれば当たり前の環境から生まれたものだ、と征士は感じた。最初から『血』を作るつもりで、製薬会社に入社したのかどうかは知らないが、彼の学生時代の選択は賢かったと今更ながら思う。
 それぞれが無理なく生き延びられるように、身の丈に合った寄付金を払う美しいシステム。それは現代を生きる吸血鬼達の誇りでもあるからだ。
 しかしながら、
「その割に、随分色々と話を助けていたように感じるが」
 征士にはそんな印象も感じられていたようだ。確かに、同胞を守りに来たと言いながら、伸はふたりの博士に合わせ随分と真実を導く発言をしていたような。注射器の件に然り、生産国の話に然り。
 けれど、
「馬鹿だな。上手い嘘を吐くには、真実を織り交ぜながら話す必要があるんだよ。鼻から否定するより混乱させた方が、身の安全を守れるってもんだ」
 それについてはそう一蹴された。本当に、あらゆる面でガードの固い伸だった。
「成程…」
「って、まだそんな格好してんの!」
 いつの間にかシャワーの水音が止み、ドアを開けて出て来た伸は、その横に座り込む征士を見付けてまた声を荒げる。注意したばかりだと言うのに、征士は未だ二十歳前後の姿のままだった。
 別段、普段の彼は警戒心が薄い訳でもないのだが、夢にも思わなかった現実の時を過ごし、今はまだ名残惜しさを感じているようだ。また、
「ああ…憂鬱だ…。体の時間を進めると確実に疲労が早くなる」
 と、征士は呟きながら自身の時間を進める。そう、見た目の老化と細胞年令は同調するらしく、例え不老長寿と言えども、老人の姿なら老人並みの機能性になってしまうらしい。二十歳前後の体と、三十代半ばの体とでは体力、能力がかなり違うことに彼は溜息していた。
「しょうがないだろ、僕らも生物的には人間と変わらないし、年には逆らえないよ」
「これから四十、五十と、わざわざ老いた姿にならなければならないかと思うと」
「人に紛れて暮らしてる以上しょうがないったら」
 濡れ髪にタオルを当てながら、征士の愚痴に付き合う伸の方は、生物的な限界についてもう少し達観できている様子だ。笑いながら元の姿に戻った征士を覗き込む。
「僕が居るだけじゃ不満なのかい?」
 人間の視点から言えば、本来の自然な年令のふたりがそこに居た。
 何故彼等、吸血族が長寿になったのかは、その素性を隠して生きて来た歴史に由来する。彼等は頑なに己の秘密を守る、故に他の誰が同種族なのかを見付けにくいのだ。基本的に人間と変わらない体では、特殊能力で相手を嗅ぎ分けるような芸当は難しい。
 その為、固まって住んでいる地域以外では、個々のパートナーに出会う年令が必然的に遅くなって行った。それでも種の存続に間に合うように、彼等は独特の進化をする道を辿って来た。それこそ当麻が泣いて喜びそうな事実だった。
 種の保存の観点から言えば、同性である彼等に重要な話ではないけれど。
 まあそれでも、三十代半ばで家族的な仲間を得られた彼等は、充分運に恵まれていると言えそうだった。否その前に彼等は出会っていたのだから。
 昔の君も好きだったけれど、今の君もきっと好きになるだろう。
「急いで。今日は当麻の予定からうまく消えなきゃならないんだ」
 平常の様子に戻った征士の肩をポンと叩いて、伸はまた慌ただしく出て行った。
 結局肝心の、「誰が吸血鬼なのか」の部分は教えてもらえなかったが、今は、伸の気分の乗った状態を見ていると、不思議と結果を楽しみに思える征士だった。
 我々ふたりに、そして研究者ふたりに、地元住民のふたりにこれから何が起こるだろうと。



 ホテルの窓から見える朝の景色は、昨日も一昨日も変わらない、蒸し暑い一日を思わせる快晴の空が背景にあり、今日も幸先の良いスタートだと当麻は思った。
 今夜は遂に月が満ちる。例の満月の下での実験が行われる予定だ。雨の可能性は低いが、どうかこのまま雲が多く集まらないことを願う、と言うところだった。
「…ああはい、分かりました。じゃあお伺いします。宜しく」
 昨日と同様にロビーの片隅で、当麻が柳生博士に連絡をつけると、それが終わるのを見計らって伸が声を掛ける。
「おはよう。今日は何処にお出掛けかな?」
「今日はこれから夕方まで博士の家だ。満月を前に実験のミーティングをする。手順の確認と必要な道具の確認、撮影器材の分担、諸々」
「そっか、実験は今夜だっけね」
 と他人事のように返す、伸は憶えていながら忘れた振りをして見せた。恐らく最初の日からずっと、彼の呑気な行楽気分は演技だったのだろう。元々そんな「楽しみ優先」の気質も持つ彼だからこそ、疑問視されなかったのは確かだが。そして何も覚られないまま会話が進んで行った。
「でも変わった実験だから、何をどうするのか全然想像つかないんだけど?」
 まあその発言は嘘ではない。聞かれた当麻自身も実際、何をどうするのか明確なイメージは掴めていなかった。
「ああ、大体のことは博士の助手がやってくれるんだ、お前達が直接する事は何もないだろう」
「そうなんだ…、つまんないの」
 つまりこの後ミーティングに出席して、初めて満月実験の全貌が見えて来る、と言うことのようだ。そう聞くと多少興味をそそられる伸ではあったが、無論今はそれどころではなかった。彼の計画上、絶好のタイミングを示してもらえたのだから。
「あ、じゃあ、僕らは今日はお休みってことでいいよね?」
 と伸は明るく提言した。
「はあ?」
「まだ全然観光してないしさ?。ミーティングに出たって僕らは何もしないんだろ?、別府の温泉街くらい見に行きたいよ」
「はあ…」
 そんなことを言われるとは想像しなかった、当麻は些か面喰らった様子ではあったが、会話の流れには何ら疑問を抱いていない様子だ。何しろ昨日の朝も、伸は耶馬渓にドライヴに行こうと言い出していた。怪しめと言う方が無理かも知れない。
 すると当麻は、言われる通り確かに、手伝いをする訳ではないふたりを拘束しても意味がない、と良心的に考え、
「まあ、そうだな。夕方までならいいか。実験は町の北西にあるサンタ・フランシスコ公園の体育館で、六時丁度に始めると聞いてる。それまでに必ず戻って来るならな」
 と返してくれた。彼のそんな性根の良い所を知っていて、騙していることには多少申し訳ない気持もあったが、そこは何かで埋め合わせてやろうと伸は笑う。
「やー!、ありがとう!、了解だ。お土産買って来るよ♪」
「気楽でいいよ…」
 こうして伸と征士は、すんなり研究者達の予定から外れることができた。当麻と同様に伸も、今日は幸先の良いスタートだと感じたに違いない。
 ところで、伸と共に部屋を出て来た筈のもうひとりだが、
「征士!、夕方までは出掛けて来てもいいって!」
 その姿を見付けて呼び掛ける伸の、声が届かない場所にひとり佇んでいた。レストランとは反対方向の廊下の先、他の部屋の入口とは趣の違った、木製の扉に向かって彼はじっと立っている。否、身動きこそしないが何かをしているようだった。
 話していたふたりはその様子が多少気になった。注目してみれば確かに異質な気がする、特殊な扉がそこに存在する理由を確かめたくなる。
 長い廊下の突き当たりへ、伸は小走りになって征士を呼びに行った。
「何してんの?」
 と、五メートルほどの距離に近付いて彼は言ったが、その前に征士は足音を振り返っていた。そして伸の方も、尋ねなくともそこが何であるか見当がついていた。
「礼拝堂だ」
 征士の前に四枚並んだ扉の、一部に1センチほどの隙間が開いていた。彼はそこから中の様子を覗き見ていたようだ。そして伸は、
「ああ。って言うか結婚式場じゃないの?、ホテルだし」
 そう答えながら自分も、興味の向くままに中を覗いてみる。
 すると確かに、征士が式場と言わず礼拝堂と言った意味が判った。現在結婚式専用の教会は珍しくないが、宗教的理由でそれを利用する者は滅多に居ない。なので大概は、形ばかりのシンプルな十字架があるのみで、他に意味を為す物は置かれていない。
 だがここは市民の教会でもあるようで、正面の壁には木彫の聖画、周囲の壁や柱は金色を基調にしていて、マヌエル様式と言う、ポルトガル独特の内装がされているのが見えた。並ぶ座席の奥に見える教壇には、アルファとオメガを合わせた、キリスト教の象徴マークの布が下がっている。紛れもなくここは教会だと伸も思った。
「奥に祭壇と巨大なメノラーがある」
 と征士は、半信半疑だった伸に説明したが、百聞は一見に然ずだっただろう。なので伸は、
「じゃあ後でお祈りをしてこう、今日もいい一日でありますように」
 ドアから顔を放すと、今日は一層明るい笑顔を見せてそう言った。目的が希望通りに叶いそうな予感を彼は、何かから感じ取ったのだろうか。
 ところでその時、既に彼等の傍に到着していた当麻は、
「そう言えば、吸血鬼は十字架に弱いと言われているが、今はどうなんだろうな」
 その部屋がホテルの附属教会と知って、ふと頭に浮かんだ疑問を口にした。伸と征士がそれと知っているなら当然、答は明白だっただろう。伸はしれっとした様子で、
「今と昔は違うのかい?」
 などと返した。この際当麻の考えを知っておくのも身の為だった。
「昔のように信仰心の厚い時代じゃない。ましてここは日本だ」
「そうだねぇ、どうなんだろうね」
「ニンニクも魔除けだったそうだが、現代の世界でニンニクを避けるのも難しい。あらゆる物に使われてるだろ」
 当麻の話からは、宗教的な習しの効力は薄れ、微量ずつ口にしている内にニンニクにも慣れた、と推測していることが判る。それは事実だったので、伸と征士には改めて「馬鹿じゃない」と認められていた。
 そこで征士が、
「なら韓国などは魔物が寄り付かない土地だ」
 と、単なる思い付きなのか、会話の流れを変えようとしたのか、あらぬ方向の話題を持ち出すと、伸も同調して笑い出していた。
「あぁ、空港に着いた傍からニンニクの匂いがするもんね!。すごいね、神聖都市だよ」
 流石にその表現にはげんなりした当麻。
「ひどい例えだ」
 と一言言うが、彼は現地に足を伸ばしたことがないので、他に何とも言えない状況だった。実際はニンニクと判るほどの匂いはしないが、イメージ的にそう感じる程度だろう。蠅さえ寄って来ないのだから、魔物が避けるほどの濃度があるとは思えない。
 しかし図らずも面白い場面となったので、
「一家にひとつキムチ壷があれば安心だよ。ハハハハ」
 伸はそう引っぱりながら、その場を後にしようと歩き出した。彼の思惑に乗って他のふたりも、正反対の位置にあるレストランへ向かうこととなった。
「あー、そんなこと言ってたらクッパが食べたくなった」
「朝のビュッフェにはなさそうだが」
 伸の頭に浮かんだ料理は、雑炊と言う意味では朝食向きだが、基本的に焼肉屋か居酒屋のメニューだと、返した征士も知っているようだ。ここはお粥で我慢してもらうしかないだろう。すると当麻が、
「俺は一時骨付きカルビに凝って、半年くらい焼肉屋を回り歩いたことがある。旨い肉かどうか見分ける自信はあるが、まあ置いてないだろう」
 他のふたりには知り得ない話題を出していた。研究と関わりない雑談に加わって来るとは珍しい。それだけ骨付きカルビに詳しいと言う証拠だろうが、
「クッパより望み薄だな」
 その知識を披露する機会はなさそうだと征士も同意した。
 そうして今朝の話題は、すっかり韓国料理に収束していた。女性の集団であれば、食の話題は何かと出易いものだが、面白いことに食事の種類が違うようだった。独身男性で外食ばかりしている、好きな物ばかり食べている、或いは酒を呑むついでに食事を済ますことが多い、そんな彼等の生活状況が窺えるようだった。
 まめな伸ですら、この不況下で仕事が忙しくなった為、最近は週に三日は外食で済ませているようだ。



 今日は初めて徒歩でホテルを出た。
 滞在期限のある研究旅行の、時間を節約する為これまで車ばかり使っていたが、当麻とは別行動になったことで、他のふたりは歩いて町へと向かう。
 彼等の最初の目的地は目と鼻の先と言って良かった。なのでのんびり、気の向くままの歩調で歩いていると、これまで気付かなかった建物の装飾や町並みの、詳細な景色が見えて来たので、却って贅沢な気持にもなっていた。
 赤煉瓦の柵で囲まれた庭地には、色とりどりのベゴニアやペチュニアが咲いていたが、花壇の柵に埋め込まれたアズレージョのタイルも、似たような花の絵が描かれている。ホテルの内装で見た図柄は、人物、動物、天使などの絵だったが、嵌め込まれる場所によって図柄を変えているようだった。
 そう思って、改めてホテルの外観を振り返ると、丁度彼等の泊まるデラックスツインの、バルコニーの下には大きな孔雀のタイルがあるのを知った。反対側にも対になるように、同じ図柄のタイルが貼られている。明るい空の上に、正に羽搏こうとしているようなそのデザインは、恐らく見る人には優雅さと高揚を感じさせる、感じの良い装飾になっていると思う。
 古のポルトガル王家が残した文化。
 ヨーロッパの端に位置する遠いラテンの国の、陽気さと陰湿さ、情熱と惰性、富と貧困、あらゆる落差が独特の陰影を作り出た彼等の文化。そこに加わる日本と諸外国の様々な文化。そんな町に触れていると確かに、何処の誰だろうと共生共存できないことはない、と明るい気持にもさせられた。
 まだ危機的状況が去った訳ではないが、ふたりは快晴の空と共に、晴れ晴れとした心持ちで出掛けて行った。
「おはよう、オーナーの秀さん」
 そう、最初の目的地とは、ここに来て毎日通う中華料理店だ。店のドア越しに伸がそう声を掛けると、
「おまえら今日は早えぇな」
 店のゴミを纏めていた彼は、すぐに寄って来てドアの鍵を開けてくれた。
 言われた通り、まだ午前九時になったばかりだった。秀が些か驚いているのも解る、今夜は実験があるとは言え、通常通り昼間の営業はすると柳生博士に伝えてあった。もしかしたら何か変更があったのか?、と不安に思うのが普通だろう。そして彼は、
「ああ、遼は今ジムに出掛けてるぜ?。誰かに呼んで来させようか?」
 訪ねて来たふたりに親切にそう話した。ところが、
「いやいい、君に話があるんだ。今はふたりの博士もいないし、僕らの個人的関心で申し訳ないけど」
 伸の返事は、秀の予想とは掛け離れた内容だった。個人的関心とは何だ?。研究者じゃない奴らが何を聞きたいんだ?。その前に何で俺が??。頭に浮かぶ疑問をありありと表情に表しながら、
「今夜の実験の話じゃねぇのか?」
 と秀が返すと、特に不審な様子も見せず伸は続ける。
「この場を外せないかな?、少しの間でいい」
「ああ…。三十分くらいなら構わねぇけど。じゃあ、この裏に回ってくれ」
 秀は言って、店の裏の小さな庭の方向を指し示した。それに頷くと伸は、征士と共に外から店の裏へと回って行った。
 奇妙な申し入れだが、別段怪しい雰囲気でもない。これまでもあのふたりは、何かを探ろうと言う感じではなかった。もうひとりの博士が忙しいのか、内密の伝言を頼まれただけかも知れない。変に警戒することもないか、と最終的に秀は考え、手早くゴミ袋の口を縛って店を出る。
 無論事実はそうではない。この時間に訪ねたのも伸の推理に拠ることだった。以前聞いた話からすると、遼の方は午前の自由時間に当たる。自室に居るか外出しているか、ともかく秀とは違う行動をしていると考え、その時を狙ってやって来たのだ。
 酷くデリケートな話をすることになるので、他の誰にも聞かれないように。
「ここは例の茶畑だよね?、ウェイターの彼が抜けて来たらしいって」
 裏庭に秀が現れると、先に着いていた伸が振り向いてそう言った。エプロンやテーブルクロス、店の洗濯物が翻る小さな庭の背景には、道路沿いの茶畑が細く長く続いていた。征士はそのお茶の葉を摘んで、何やら状態を確認するような仕種をしている。その理由を伸は、
「何か荒れてるね?」
 と、まず秀に尋ねた。これまで見て来た道路脇の街路樹、公園の花壇など、この町の植物は皆手入れが行き届いていたので、本題とは関係ないが、流石に聞いてみたくなったようだ。
 すると秀は大きな溜息を見せながら答えた。
「ああそれも、多分遼なんだと思うぜ。ただここを走り抜けただけなら、土や葉っぱにまみれることもねぇだろ」
 何気なく聞いたことだったが、意外にも今回の騒ぎと繋がっている話だった。
 確かに脇を通り過ぎただけではない。ある場所を中心に陥没したような見た目の様は、多くの枝が特定の方向に折れ、傷付いた葉が枯れ落ちたことが原因だ。満月の晩、遼の身に何が起こるのかを想像しながら征士が続ける。
「何かがあって暴れていたか」
「そ。何かあンだと思うんだけどよ」
 秀がすんなり同意するのを見ると、暴れていた、と言う表現に当て嵌まりそうな行動をしている、それは間違いないようだった。
 そうとするとやはり、昨日の聞き取りの席で伸を始め三人が、秀の勇気ある態度を誉めたのは自然な流れかも知れなかった。遼の行動は恐らく誰にも予測できない。また彼はジムに通っているくらいだから、平均以下に非力な人間でもないだろう。そんな条件下で身の心配より、友人を思えるのは素晴しい心掛けだと、伸は今も改めて感じている。
 ただ、伸の共感は別の所にあった。
「冷静だね、世間を騒がす異常事態だって言うのに」
 と、伸は多少態度を変えて、誘導訊問でもするように言った。
「えっ!?、そんなことねぇと思うけど…?」
 途端、秀は慌てたように言葉を濁した。そう言えば昨日も誉められると、却って畏縮したような態度を見せていた。世の中には確かにそんなタイプの者も居るが、秀に限って言えばどうだろうと思う。このエネルギッシュで気前の良い性質の男が、人に誉められて畏縮するだろうか?。寧ろ冗談半分に、「何でも任せろ!」などと言い出しそうだ。
 そしてそんなことは、伸にはもう判っていた。
「うん。君は本当はそう言うタイプじゃないようだ。ものすごく慌ててたし、」
 また言いながら、伸は着ているジャケットの内ポケットを探り、満を持したようにある物を取り出す。秀の目の前に差し出されたのは…
「これを見た瞬間」
 バイアルと呼ばれる薬品の小瓶。体積としてはごく小さな存在だが、ある種の人間は絶対的な価値を置く存在。突然それを目の前に出されて、
「いや!、ああ!、それ、昨日柳生博士が持って来た奴だっけ?」
 秀はひどく狼狽えながら返した。
「違うよ、あれは瓶だけ。こっちは中身が入ってるだろ?」
「え…?」
「君はこれが何だか知ってるんだよね。だから驚いたんだ、人目に触れちゃいけない物なのに」
 伸は持参した『血』を自分で眺めながら、昨日の秀の驚きようは征士以上だったと、思い出し笑いする余裕さえあった。とにかくそれが決め手だったからだ。
 相手の素直で単純な性質が、今回の騒ぎの中では幸いした。
 但し、状況が呑み込めずに真っ白になっている、秀の方は声も出せずに、身動きを止めて固まってしまった。目の前の相手が何者かは知らないが、他人に素性が知れたことに恐ろしい恐怖と、責任の重さを感じているに違いない。仲間思いの彼だからこそだ。
 故に、この状態を長く引っ張るのも可哀想だった。
「そして僕らも知ってる」
 と、伸は同胞に向けて極めて穏やかな笑顔を向けた。そして秀の目の前で、自らの顔を見る見る変化させて行った。昨日へ、去年へ、遠い過去へと。
 また本来なら、恐れ戦く筈のそんな変化を見て、逆に秀の凍り付いた表情も溶けて行った。
「え…?、おまえ…??」
「不用心な奴だな、バイアルの処理は迅速確実にしなければ」
 続けて征士もそう声を掛ける。秀が目を向ける頃には彼も、既にやって来た時の姿とは変わっていた。そして伸は隠していた事情を説明する。
「こんなこともあろうかと、僕ははるばる東京から助けに来たんだよ」
「あっ…」
 安堵の溜息と驚きの沈黙。
 恐らく秀に取っては、見付けられた事実に対する驚きよりも、こんな時に同族の人間に会えたことの方が驚きだったのだろう。何故なら彼は驚愕しながらも喜んでいた。一時は絶望に青褪めた顔色が、途端に血の気を戻してパっと明るくなっていた。
 それだから彼は、居ても立っても居られない様子になると、その場で勢い良く頭を下げる。
「す、すまねぇっ!、いい加減にしてた訳じゃねぇんだ、変な事が重なっちまって…!」
 本当は誰かに聞いてほしかった、と言わんばかりに秀は言葉を繰り出していた。
「丁度遼がおかしくなってる時で、外で変な音がして、そっちに気を取られてたらうっかり瓶が転がってっちまってよォ…。その夜は遼が心配だったから、朝ンなって探したんだが見付かんねぇし、俺も心底ヒヤヒヤしてたんだ。町じゃ『吸血鬼だ』って騒ぎんなってるし、もうホントにヤバイと思って…」
 偶然吸血種の家で起こった偶然の事故だった。
 また初対面では判らなかったが、彼は日々戦々恐々としながらも、精一杯平常心を保とうとしていたのだろう。ヘマさえしなければ自分が疑われることはない、としても、ひとりだった研究者がふたりに増え、紛失したバイアルを目の前に出され、昨夜からは特に緊張していた筈だった。
 秀の話からはそんな近況が窺えたが、そこで征士がひとつ疑問を持ち掛ける。
「それでよく相談に行ったな?」
 吸血鬼を探す張本人の柳生博士に、わざわざ近付こうとはそれもまた度胸があると感心してしまう。けれど秀はやはり、
「いや、だってよ。ひとりで夜逃げしたら増々怪しまれるだろ?。その前に遼をどうにかしなきゃなんねぇと思ったし」
 自らの保身よりも友人の異常を心配して、行動を選択したことを話した。すると、
「そうだね、不思議な状態になったよねぇ」
 彼の冒した失敗はともかく、人間的に快く受け入れられる仲間だと、よくよく知れたので伸は何も咎めずに同意した。ただ、どうしても忠告したいことだけは続けて話した。
「でも、柳生博士には気を付けた方がいいよ。女性特有の勘なのか、本質的なものを嗅ぎ分ける能力のある人みたいだ」
「あ、ああ…」
 前途の通り、雲を掴むような説話の話を熱心に研究する、彼女は一見夢追人のようで、実は優れた閃きを持つ人物だと彼等には判る。しかし専門分野は重要視されない学問で、人の間では変わり者扱いで、なかなか注目してもらえない立場なのが不憫だ。そのお陰で自分達が隠れていられることを思うと、多少申し訳なくも感じるけれど。
 そして、
「まだ僕らと遼君との違いには、気付いてないみたいだけどさ」
 と伸が、自分達にも判らない謎の現象について触れると、征士もそれを受けて言った。
「そうである内に、今の方向の研究を止めさせなければ」
「ああ、そうだな、確かに」
 秀も漸く落ち着きを取り戻してそう答える。彼には会ったばかりと言って良い、何の背景も知らない来訪者のふたりだが、同じ種族と知れば、現状に対する考えは自然に纏まっていた。
 すると秀は、今さっきまでの己の危機も忘れたように続ける。
「でもおまえらは大丈夫なのか?」
「何が?」
「あのもうひとりの博士だって研究者なんだろ?」
 そう、考えてみれば、秀の方は四六時中柳生博士と過ごしている訳ではない。対して征士と伸は、この旅行中はほぼ一日中当麻と一緒に過ごしている。今の秀にはやって来た彼等の方が、危険の多い立場だと感じられたらしい。
 全く、見た目の豪快な印象と違って、人助けが好きな性格だと伸は笑って返した。
「ああ大丈夫、彼は長い付き合いの友人だし、どう誤魔化せばいいかは心得てるから」
 そして、当麻とはほぼ同様に付き合って来た征士も、
「天才的頭脳の持ち主だが、意外と抜けた奴でもあるのだ」
 と、ある意味余計な追加情報を話していた。それらが悪い印象でなく、微笑ましい話に聞こえるのは、彼等三人が友人として良い状態を保っている、確固たる証なんだろうと秀は思った。
「ハハッ、そっか、そうだよな」
 無論彼にも大切な友人が存在するので、そんな信頼関係は理解できる。そして、人には話せない事情を持った人間でも、種族や人種を越えた繋がりを持つことは可能だと、より前向きにも感じた。ならば必ず遼の抱える問題を解決してやらなければ、と、秀は改めて意を強くする。
 まずは今夜、遼の様子を見た博士達の意見を参考にして…。
「今夜だね。今夜の結果によって今後の研究の方向性も決まる」
「ああ…」
 伸も丁度今宵の実験を想像していて、丁度秀と意識が合っていた。
「君は証人として立つんだろ?。僕らの方に注目が集まらないように、会話は注意深くだよ?」
「ああ、わかってる」
 念を押すように顔を近付けて言った伸だが、まあ、三人がやって来る前までは、瓶の紛失以外に困ったことはなかったようだ。実際はそこまで心配してもいなかった。種族に取って最も大切な秘密に軽率な人間は居ないと、体の何処か、細胞に刻まれた幽かな記憶が信用している。
 人に紛れて生き延びる為に、我々は決して真実を明かさない。
 血の繋がり以上に強く継承される掟だ。
 そんなことを暗黙の内に、相手に確認すると伸は言った。
「ところで、大分のお土産って何が有名?」
「へっ?」
 突然、百八十度も方向が違う話題を出され、秀は違った意味で再び言葉を詰まらせる。しばしばあることだと、征士なら伸のこうした切り返しに慣れているが、普通は「何処からそんな話に?」と思うかも知れない。大概の場合、暗い流れを断ち切ろうとする彼の配慮なのだ。
 故に、
「できれば甘いものがいいんだけどさ。友人の人類学博士が甘党なもんで」
 そこまで話を聞けば、如何に秀でも話題の関連性は見える筈だった。しかし暫く考える仕種を見せ、あまり良いアイディアが浮かばない様子で彼は返す。
「そうだなァ…、超メジャーだが『ざびえる』とか」
「知ってる、ベルベットみたいな黒い箱に入ってる奴だろ?」
 因みにバターと赤ワインの香りがする、白餡とレーズンの入った焼き菓子で、大分土産として全国に知られているものだ。伸もその名前にはすぐ反応したが、一般に甘い物と言って思い浮かべるほど、甘味の強いお菓子ではない。だから秀にはイマイチな発想だったのだが、
「キリシタン大名の土地らしいな」
 征士がその名称に興味深そうな顔をしたので、意外とそれが良いかも知れない、とすぐに秀は思い直した。何故なら、
「大昔だったら、そんな菓子には近付けなかったかも知んねぇな!」
 中世期の先人なら恐れ兼ねない、宗教的意味合いの強いデザインの『ざびえる』である。菓子箱のデザインは幾つかあるようだが、それをお土産に持参することによって、何も感じていないとアピールすることもできる、と思った。
 しかし上手には上手がいるものだ。
「僕の家なんか一応カトリック教徒だよ」
「そりゃすげぇ」
 否、秀が知らないだけで、現実にそんな者は多いそうだ。今や彼等に取って絶好の隠れ蓑と言って良い、教会に関わることは身の為でもあった。

 さて、征士と伸は一番に大事な用を済ませ、土地の名物も聞いて、この後はアリバイ作りに別府まで出掛けなければならない。ここからの移動時間を考えると、ゆっくり温泉に浸かる暇もないだろうが、まあ、楽しめそうなことは楽しんで帰るつもりだ。
 既に見慣れた中華料理店の周囲の景色。そこから立ち去ろうと歩を進めると、
「プレカーリ!、フォルトゥーナ!」
 背中から声が聞こえた。英語で言う「グッドラック」の意味だ。歩き出したふたりが振り返ると、秀が大きく手を振って笑っていた。
「うん!、ありがとう、君もね」
 伸はそう答えて、それぞれの望みが叶うよう願いながら、派手に両手を振って返した。



つづく





コメント)また今更な解説になっちゃうけど、今回の話は職業(と言うか専門分野)の割り振りが珍しいです、私の中では。伸が完全に理系で、当麻は中間的な分野と言う(征士は大概文系だけど)。
でも元々のキャラの設定を考えたら、これでもいいなって感じてます。当麻は広い分野に知識があるし、伸は動物(主に海洋系)が好きそうだし。
当麻の父親は科学者らしいけど、必ずしも蛙の子は蛙じゃないですよね。いや、変わった博士って意味では同じ道を辿ったか(^ ^;。




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