会議の場
恋は永遠の輝き
#5
The Something Glitter



 外が夕暮れの茜に染まる頃、屋敷の広間には夕食を終えた伯爵家の面々が、それぞれ微妙な面持ちで集まっていた。中央の立派な椅子に伯爵と夫人が並び、その横のソファにセイジの父と母が、その反対側のソファに姉妹が座り、中央のテーブルを挟んで手前にセイジ、その後ろにシンとリョウが立っていた。
 何故、家族達が微妙な表情をしているかは、冒頭の会話から御理解戴けると思う。
「何をなさるのですか?」
 と、まず伯爵夫人が促すように尋ねると、セイジは作ったように姿勢を正して言った。
「お集り戴いて申し訳ない。今日は私から、伯爵家に取っても重要な話がございまして」
 するとすぐさま、口数の多い姉君の指摘が入る。
「変な畏まり方。気味が悪いわ。こういう時は大体とんでもないことを言い出すのよ。わかってるのよ」
「・・・・・・・・」
 無言でマルシャを一瞥するセイジには、悔しいが反論の余地はなかった。
 そう、この伯爵家ではセイジがこうして、改まって話をしようとする時には、大概何らかの面倒を抱えていると知っている。過去に自分の気に入った娘の家から、優れた競馬馬を買おうと提案したことがあるが、何故競馬馬かと思えば、牧場を営むその家に莫大な借金があり、可能な限り高いものを買って助けてあげたかったらしい。結局その提案は却下されたが、大体そんな風に、セイジの話には必ず裏事情があると見切られているのだ。
 故に家族達の態度は一様に褪めている。また後ろに着くリョウも、
『マルシャお嬢様の仰る通りだろうな』
 と、密かな溜息を漏らしていた。夕食前に資料室で見たセイジの様子は、何らかの閃きに結果を確信した趣があった。だが、例え本当に重大な情報があったとしても、その前に家族達をどう懐柔して行くかが問題だ。何しろセイジ様は素行に問題のある方だし…、とリョウは、この会合の前途多難な出だしを見詰めている。
 すると、暫しの沈黙の後に、
「まあ良い、話してみなさい」
 老伯爵の鶴の一声があり、心情的にセイジは救われた。そして、伯爵の命には絶対的な忠誠を示す、家族達はそれぞれの意志で、セイジの話に耳を傾けることとなる。
 改めて襟を正すとセイジは口を開いた。
「ええ実は、ここに同席している彼についてですが」
 彼とは無論シンのことだ。セイジは少し立ち位置をずらすと、全員からシンの姿が見えるように気遣う。そしてシンには更なる緊張感が生まれた。
 否、こんな家族会議の場に同席させられるのは、当然偽物事件について話す為だと判る。こうして自分ひとりに視線が集中する状況も、予め予想できたことだが、シンは今それ以上にいたたまれない気持で一杯だった。通して丸一日程度の交流に過ぎないが、良くして下さった人を裏切ることになるかと思うと、仕方のないこととは言え心が痛んだ。
 シンは遂に来た時を固唾を飲んで見守る。そしてセイジはその概要を話し始めた。
「彼がここに居る経緯は、実は店に陳列してあったイミテーションの宝石を、誤って私に売ってしまったと言うことで、謝罪にやって来たのです」
 正しい点もあれば、事実と違う点もあるが、取り敢えずシンにはあまりダメージのない、親切な説明をセイジはしてくれたようだ。何故そうなるのか、未だシンには理解が及ばなかったが、ともかくこれで自分が酷く責められることはなさそうだと、強張った表情を少しばかり緩める。但しそれでも、
「まあ…」
 と声が上がるように、高級店にはあるまじきミスであり信用問題だった。勿論、黙っているよりずっと良心的な上、こうした事は稀に起こる間違いだ。高級宝飾店の多くは店頭の見本で注文を受け、同様の品を客に合わせて作ることが多く、同じ物が複数存在することが普通にあるからだ。
 しかし、管理の良い高級店ではほぼ起こらない間違いでもある。事実を曲げて話したこの内容と事実とで、どちらがどう印象を左右するか気になるところだった。
 始めに、セイジの御母上が口火を切って尋ねた。
「それであなたは、どうされるつもりなのです?」
 当然誰もがそれを聞きたがっている。シンをここへ連れて来て、わざわざ背景を説明するからには、その処置に何らかの迷いがあるのでは?、と誰もが考える。そしてセイジは聞かれたまま答えるつもりだったのだが、
「ええ、色々考えたのですが…」
「そんなことが世間に知れたら、彼はお店を続けられないわ!」
 唐突に、話を遮りマルシャが口を挟んだ。彼女は多分に危機迫る様子で、更に声を大にして続ける。
「あなたはそれで大きな損益を被りました?、今以上に恥ずかしい評判でも立ったと言うの?。必要のない裁きを下すことには反対よ!」
「いや、だから…」
 話の腰を折られ、セイジの表情に苛立ちが感じられる。しかし話が進まないことより不思議な状況だと、リョウは目を見開いてマルシャを見ていた。
『会ったばかりだと言うのに、お嬢様は同情的だな??』
 どころか彼女は攻撃的だ。そして妹のメアも同意するように続けた。
「私も、穏便に済ませてあげてほしいです」
 まあ、この時点ではリョウの他に、誰もセイジの思惑を知る者は居ない。彼がシンに酷い仕打ちをすることはあり得ないのだが、話の流れからセイジには強い反発が向けられていた。
「伯爵家としては何も被害はありません。それをよく考えて決めてほしいわ!」
 マルシャが更にそう言い募ると、自分の話を続けたいセイジは、ひとまず相手を落ち着かせるしかなかった。
「それは勿論承知です。私も騒ぎにはしたくない、彼は親しい知人なのです。だからこうして集まっていただいた訳で」
 またひとつ嘘を吐いてはいるが、尤もらしいことを言って納得して貰わなければ、姉上は黙ってくれないと思うからだった。すると彼女は確かに、
「それなら私達の意見は今話した通りよ」
 と、比較的落ち着いた調子で返し、セイジはホッと胸を撫で下ろす。ところが今度は、
「お兄様はこの方に何か、贖罪を求めたいのですか?」
 決してお喋りでないメアが、非常に答え難い質問を投げ掛けていた。何故なら人道的に酷いと思える、罰を与えようなどとは毛頭考えないが、自分に都合の良いように処理しようとは考えている。シンに取ってはどちらも贖罪に当たるかも知れない、と、セイジにも迷う所があるからだ。
 そしてメアは、殊に真面目な顔で真直ぐにセイジを見ていた。彼女の態度に対しては、兄としてあまりいい加減なことは言えなかった。
「いやそれは…」
 セイジが口籠ると、一度大人しくなったマルシャも再び口調を強め、
「だったら何なのよ?」
 と、流れを再び沈滞状態に戻してしまった。
 過去からセイジと姉君は折り合いの悪いところがあった。ある面では似た者同士と言えるが、それだけに主張を違えると論戦になり易い。だが、少なくともこうした場で、まともに話を聞いて貰えないことはなかった。まだ何も、核となる部分の話ができていないのに、これ程噛み付かれるとはセイジも予想しなかっただろう。それはつまり、マルシャの方が事態にエキサイトしているからだ。
 恐らく彼女は、セイジの勝手からシンを守ろうとしているに違いない。そして、あまりにも侭ならない様子の珍しいセイジを見て、
『どうなってるんだ??』
 と、リョウもまた首を傾げていた。最終的にどんな判断が下されるかはともかく、説明自体が進まない状態は些か異常だった。整然と話をまとめることに於いて、セイジはそれなりに長けた人物でもある。それを聞く耳持たぬ様子で妨害される理由は、リョウにもさっぱり解らないままだった。
 一体何が起こっているんだろう?。
 けれど、若者達の間の混乱を余所に、年長者達は落ち着いて考えていた。
「あなたの一存でよろしいのでは?」
 セイジの母君は穏やかな口調で言った。するとそれまで黙っていた父君が、おや?と思うことをここで初めて発言する。
「そうだ。そもそも何故私達を集めたのか?。間違いがあったと伝えに来たなら、おまえにも彼にもそれ以上の問題はない。まして伯爵家には何も関係がない。相応の処理をして、彼には戻ってもらうのが筋だろう」
 その通り、実は偽物事件はこの会合で決議することではなかった。セイジが個人の資産で買物をし、そこで起こったトラブルなのだから、他の家族が口出しする問題ではそもそもない。それは当然、この後に続くセイジの計画の為の前振りだからだが、話が進まない為に余計な疑問を持たれてしまったようだ。
 そして同様に話の道筋が読めない面々は、次々に質問を始めた。
「それもそうだわ?。何が目的なの?」
 マルシャはセイジが、やはり何らかの裏事情を隠していると気付き、一層厳しい追求姿勢に変えてそう言った。彼女が最初に話したように、何かとんでもない事実が出て来るのではないか、と言う警戒心も露にした態度だ。その横でメアは、
「他に何か事情があるのですか?」
 酷く心配そうな顔をして尋ねる。自身にはほぼ何も関係のない話でありながら、彼女の様子はまるで、大事な友人を気遣うように怯えていた。またそんなふたりを見て、
『お嬢様方は、あの店主をよほど気に入ったと見える。でも…何で?』
 リョウはその不思議な状態を考えていた。確かに彼は人当たりの良い人物で、礼儀もあり、話すことにもそれなりの教養が感じられる。年齢的にも姉妹に馴染み易くはあるだろう。だが、それだけなら他にも多くの若者が存在する。同じ貴族の中にも、貴族ではない豪商の子息などにも似た性質の者は居て、姉妹達は様々な人に会っている筈だった。
 なのに何故、彼には特別な思い入れが集まるのだろう?。特別と言えばまずセイジだ。大体始まりの段階から何がどう気に入ったのか、見当が付かない所があった。綺麗な顔立ちをしてはいるが、シンは目を惹くような華やかなタイプではない。しかも本来ならターゲットにならない成人男性だ。一目惚れと言うにはあまりにも、理由として弱過ぎる気がした。
 そう何か、他の理由があるのかも知れない。セイジも姉妹達も自らは気付かない、何らかの理由がこのシン・モーリと言う商店主にはあり、皆それに靡いているのかも知れないとリョウは思った。
 リョウにしては、それは珍しく冴えた閃きだった。なまじ四六時中セイジに貼り付く立場だけはある。そしてこの場の誰もが彼のように考えられれば、セイジも困窮することはなかったのだが。
 会議が予定とは全く違う流れになり、セイジはこの後どう話を続けるか考え倦ねている。その前に姉妹達の質問に答えるかどうか、それとも、後に回して肝心の話を先に述べるとするか…?。
 些か行き詰まった雰囲気がセイジに感じられた、その時、
「待ちなさい…」
 静かに成り行きを観察していた老伯爵が口を開いた。
「どうなさいました、伯爵?」
 横に座る伯爵夫人が、穏やかに主への注目を促し尋ねる。伯爵の命令は絶対だと言う話の通り、誰もがふと伯爵の方へ視線を向けた。すると、彼は議題とは関係なくこんなことを言った。
「うーん…。やはり会った気がするなぁ」
 そして見られているシンがピクリと反応する。昼下がりの廊下で、確かにシンはそう声を掛けられたが、残念ながらそんな事実は存在しなかった。けれど、記憶力に優れた伯爵がそれにこだわるとすれば、シンには幽かに思い当たる事情が存在した。自分は過去にお目にかかったことはない、けれども…。
 また伯爵の言を受け、伯爵の能力に疑いを持たない家族達は、口を噤んで注意深く話の続きを聞いている。伯爵夫人が再び問い掛けると、老伯爵はシンに向けた視線を動かさずに話した。
「この鑑定士さんに、何処かでお会いになったのですか?」
「だが、確かに最近ではない。お主は何処の生まれかね?、良く似た親族に会ったのかも知れん」
 その言葉を集う面々は、それぞれどんな意識で受け止めただろうか。考えられる可能性は様々にあったけれど、それはともかく、伯爵の発言のお陰で風向きが変わった。これでセイジは漸く、家族に伝えたいことのひとつを話すことができた。
「その件について御報告があります」
 と彼が言うと、伯爵の為の沈黙がそのままセイジへの注目に変わる。そしてシンに取っては、決定的なマイナスの事実が語られた。
「彼は没落したモーリスモ子爵家の、直系の子息のようです。資料室の年代誌を調べて判りました」
「!」
 シンは途端に、硬直したような表情で身動きを止めていた。何かを調べているとは聞いていたが、まさか自分の出自を調べているとは思わなかった。何故?、何の為に?、と、理由が知れないことへの混乱と、こんな場でそれが明かされたことへの驚きで、アクションを起こせる状態ではなくなっていた。
 ただでさえ商売上の失敗があるのに、更に秘密を暴かれてしまうなんて…。
 尚、マイナスの事実と言うのは、話に出て来たモーリスモ子爵家の没落に際し、親族の行いにかなりの醜聞が聞かれた為、子爵家の評判が地に落ちてしまったことに因る。故にシンは、子爵家の出である優位を示すことができず、寧ろそれを隠して生きるしかなくなったのだ。殊に庶民の間では、詳しい内状など誰も知る筈がない。噂話で悪く言われる家の名を出すことは、間違っても出来ないことだった。
 にこやかで人当たりの良い宝石店の店主、シンがそんな苦しい事情を抱えていることは、これまで彫金師のシュウしか知らないことだった。そして、今知らされた者の中にも当然、驚きと共に恐れ多い気持になった者も居る。
『何だって…!?』
 リョウは口を開けたまま、自分の横に立つシンの横顔を凝視していた。そして我に返ると、これまで自分の態度に問題はなかったか、偉そうな調子で説教を垂れたりしていないか、途端に改まった様子で姿勢を正す。例え没落した家の人間でも、正統な貴族の血筋であることには違いない。使用人と言う立場の者には、正にとんでもない逆転の事実が出て来た、と言うところだ。
 けれど、他の面子はリョウほど驚いていなかった。
 誰もが事を吟味する静寂の中で、最初にマルシャが口を開いた。
「やっぱりね…。そんなことだと思ったのよ、話せば話すほど庶民って感じじゃないんだもの」
 流石に、長く傍に居た姉妹達は、シンの肩書の違和感に薄々気付いていたようだ。貴族ではなくとも、少なくとも名の知れた家の出身でなければ、貴族風の洗練された振舞いなど知りようもないからだ。シンには基本的にそれが身に着いているのだろう。また、
「そうですね、このような家のしきたりに慣れた方だとは思いました」
 伯爵夫人もそう続けた。それは宝石の鑑定をしていた際、シンの様子を見て感じたことなのだろう。大切な宝物の扱い方、それを普通のこととして受け入れる態度など、単なる鑑定士とは捉え難かったに違いない。
 そんな風に、シンについては誰もが良い意味で疑問を感じており、今はこうして穏やかに受け止められている。が、本人の気持としては、とてもじゃないが喜べる状況ではなかった。何故彼はこれまで、それをひた隠しにしてやって来たのか。出身が判ったからと言って、誰も助けてはくれないからだ。まして悪い噂のある家など、誰も再興に協力しようとは思わない。
 それなら誰にも知られないままの方が良かった。変に情けを掛けられれば尚心が辛くなる。今の自分には手が届かないものを、既に持っている伯爵家になど知られない方が良かった。と、シンは伏せた目の奥で考えていた。
 するとそんな彼を気遣うようにメアが、
「じゃああなたは、爵位を買い戻そうとしているの?」
 と話し掛けた。彼女の素直ないたわりの気持が伝わると、そこでシンは漸く自ら話し始める。気持は乗らなくとも、伯爵を前にして失礼のないよう、シンは間違いのない事実を言葉にしていた。
「隠していて申し訳ございません、その通りです…。私は、過去の子爵家の悪い遺産を受け継ぎたくはないので、独立してやっていくことを選びました。幼い頃から身近にあった石や宝石について、詳しく教えてくれる教師がいたもので、幸いその知識を生かして仕事を始めたのです。いつか自分の家を取り戻す為に」
 その話は、最早誰にも納得の行くものだった。前に述べたように、シンには利用できる過去の遺産は何も無い。汚名を受け継ぐくらいなら、存命する親類とは縁を切ろうと考えたのだろう。未来に希望を託した若者には、それもひとつの正しい選択に違いない。
 そして彼の希望を叶える方法は、それひとつだけとは限らないが、最も堅実で現実的な手段を取っていると、より好感に感じられていた。
 即ち、セイジがわざわざ紹介するだけあって、性質の良い人物だと評価が定まっていた。
 そんな雰囲気を感じ取ったか否か、そこでセイジはタイミング良く、自身の提案を聞いてもらおうと口を開く。
「それで、私は思うのですが…」
 ところが、今度は何故かセイジの父親が話を中断させた。
「しかし、子爵を買い戻すのは大変なことだぞ…?」
 それなりに親身になって考えてくれている証だろう、彼は酷く考え込むようにそう言った。そう、前に「爵位は買える」とマルシャが話したが、それは最も低い男爵の位の話だ。実際金に困った男爵家は、豊かな商家に爵位を売り渡すこともあるくらいで、基本的に血筋を必要とする位ではないからだ。
 だが子爵となると敷居が高くなる。シンは元より子爵家の人間なので、それを要求できる立場ではあるが、それなりの財力や信用を審査されることになるだろう。そこまで商売を発展させるには、単なる努力では難しいと言う話だった。
 けれどシンはこう答えるしかない。
「はい、承知しておりますが、他にどうしようもないので」
 確かに、他にどうしようもないのだろうが、それだけに彼の目的意識は健気に映る。すると、
「なら尚更、事を公にするべきじゃないわ!。私達には何も損害はないんだから、わざわざ足を引っ張る必要はないでしょう?」
 マルシャが思い出したように喋り出した。始めの話題に戻り、とにかくシンが不利になることはするなと、セイジに訴え掛けていた。
「勿論です。だから…」
 更に、彼女はセイジの出方など気にせず、どうすれば最善かを切に考えているようだった。
「私達が後ろ盾になってさしあげたらいいんじゃない?、ねぇ?」
「これ、そんな軽々しく…」
 母君がその軽率な発言を嗜めている。流石に伯爵家としては、単なる同情だけでは動けないところだった。個人個人はどうにかしてあげたい意志があっても。
 しかし、それにしても。
『こんな話になっちゃってるけど、いいのか…?』
 リョウがそれなりに平常を取り戻した頃、セイジを窺うとやはり困った顔をしている。シンの背景を憂慮する気持は同じなのに、他の家族に話の邪魔ばかりされている。何故こうなるのか。何故ならセイジが予想した以上に、家族達がシンを気に入った様子だからだ。こんなこともあるんだなぁと、リョウはこの時ばかりは神の存在を信じた。大概のことは、本人の資質もあって思い通りにして来たセイジだが、そうは行かない事情も存在するのだと。
 特にシンのような、不遇に遭いながらも道を開こうと努力する人物に、身勝手な対処をするべきじゃない。一方的な感情で事に当たるべきじゃない。相手を尊重してこそ真の愛情ではないか、と、機会があればセイジに話したい。リョウはそこまで考えていた。
 始めはどうなるかと思われた家族会議の場が、今は会議らしく纏まりつつあった。リョウの思考も大分整理されたようだが、そこで、
「落ち着きなさい」
 老伯爵も議論を纏めるように言った。これまでの経過と条件、それぞれの家族の心情を考慮し、家の主が明言する答は当然、シンに配慮するものとなるだろう。
「売買についての間違いはセイジの問題だ。それはセイジが処理するとして、我々は彼の立場について考えてあげようじゃないか」
 そしてその決定には、姉妹達も満足する様子で答えた。
「そう、それでいいと思います、伯爵」
「私も賛成です」
 その時、固い表情で身動きを忘れていたシンが、ふと口の端を緩ませる。これまで偽物の取引の問題と、突然降って湧いたような身の上の話で、体と共に頭も硬直した状態で立ち竦んでいたけれど。
 人間的に立派な人物と思える老伯爵が、自分に心を掛けてくれている現状、そして、良くしてくれた姉妹達や伯爵夫人も、変わらぬ態度で自分を見てくれること、など、周囲の暖かい様子が漸く見えて来ると、強張った気持が少しずつ溶けて行くようだった。
 そこで更に、セイジの父親がこんな話を始める。
「モーリスモ子爵家は不幸なことが続いた。南部で戦争など起こらなければ、没落することもなかっただろうに」
 シンやセイジはまだ十くらいの頃だが、その親の世代は事情をよく知っていた。モーリスモ子爵家は町の南方側に影響力を持ち、町から海に達する南部地域の産業を監督する家だった。ある時までは、特に問題のない豊かな家柄で、この地方の住民の衣食住を支える存在だった。
 ところがある頃から、更に南の地域の他民族の干渉を受けるようになり、度々小競り合いが起こるようになる。子爵家はその対応に頭を悩ませるようになり、その内南部地域の一部で戦争が勃発した。更にその渦中に於いて、直系のモーリスモ子爵が事故死する。家の支柱であった存在を亡くし、子爵家は家系毎にばらばらな行動をするようになった。
 本家にはそれを纏める力がなかった。直系の男子はまだ十を過ぎたばかり、子爵夫人は病弱で床に伏せることが多かった。姉君は他家に嫁いで久しく、もう子爵家の実権に関れる立場ではなかった。その内親族の中で権力闘争が起こり、それぞれの家系が別の部隊に加担するなどして、南部の戦争は長期化していく。同時に南部の農地や工場等が荒れ果て、産物の流通が止まり、避難者が町へ多く流入するようになると、遂に国王からのお達しが子爵家に突き付けられた。
 即ち子爵家を解体するべしと。
 またそのショックからか、子爵夫人も他界され、子爵家の善き伝統は終わりを遂げたのだった。
「そうですね…。運の悪い出来事が重なりました。あなたのことは、同じ土地の名士として助ける義務もあると思います」
 夫の話に合わせ、セイジの母親も痛ましさを禁じ得ない様子で言った。ひとつの家の不幸な過程を知っているからこそ、年嵩の者達はシンへの配慮を、自ずと考えるようだった。丁度この家の子供達と同世代の人物でもある。
 そして、両親の素晴しい気遣いを見ると、
「そうですとも、私達は土地を守る家なんですから!」
 マルシャは嬉しそうに、また力強い調子で続けた。恐らく、この家の人々は澱みのない意志で、シンを応援してくれるだろうと感じる空気。頼もしい理解者となってくれる心意気が、今はシンの周囲に溢れ返っていた。そんな事態の変化には驚くばかり。
 直接関係のない事で連れて来られた自分に、まさかこんな場面が巡って来るとは。
 と、驚くばかりで、シンは己の気持を言葉にすることができなかった。けれど、
「あ…」
「どうなさいました…?」
 言葉の代わりにシンは泣き出した。これまでダムのように堅固に塞き止められていたものが、一気に壊れてしまったようだった。



「落ち着いたか?」
「申し訳ございませんでした…」
 居室へ戻されたシンは、暫くの間部屋のソファで顔を伏せていた。突然訪れた幸福な展開に驚きと、歓喜の気持が交錯して沸き起こり、何も言えぬまま屋敷の広間を後にすることとなった。
 その間も伯爵家の人々は彼を労り、無理を強いないよう会合の場を解散させた。またシンを部屋へと下がらせる際、心配する姉妹達が付き添いたがったが、それも伯爵の気転により止めさせた。シンの周囲を静かな状態にすること、それをセイジにだけ伝え、今はセイジとリョウだけが付き添っていた。
 テーブルの上の、少し冷めたカモミールティをシンは、ここで初めて手に取り口にした。それもセイジの思い付きでリョウに運ばせたものだ。無論セイジは、一連の出来事の発端を作った立場なので、相手への配慮にも一番の責任を負わねばなるまい。まあ、誰に言われなくともセイジの意識は、常にその人に向いているのだが。
 そして、漸く話ができる程に落ち着きを取り戻したシンは、セイジの方に姿勢を正して続けた。
「それより、私は更に謝らなくてはなりません。偽物を売ってしまったこちらが悪いのに、私個人のことをこんなに気遣っていただけるとは、思ってもみませんでした。伯爵家の皆様の温情に対し、今は感謝の言葉もございません」
 言い終えるとシンはまた、その場で深々と頭を下げていた。またそれを見て、
『俺も思わなかった。流石は伯爵様だ』
 リョウは心の中で呟いた。シンの身の上のことは、セイジが何らかの思惑で掘り起こした事実だと、誰もが容易に予想できる状態でありながら、偏見に迷わされることなく、家族の意見を良い方向に束ねられていた。伯爵が状況をよく見ていることの現れだ、とリョウは思っている。
 よく見ていたと思うのは、シンがこれまでひとりで頑張って来たんだな、と思える点だ。真横に立っていたリョウには、他の家族達からは見えない、シンの微妙な表情の変化が見えていた。これまでどれ程、口惜しい思いをして来たのだろうと、リョウには彼の苦労が幾許か垣間見られる場面があった。しかも今この時さえ、本来はそこまで謙る必要のない立場なのに、わざわざ平民に身を落として受け答えしている。
 彼を知れば知る程、まだ半分騙している現状がたまらない。
 しかしセイジの方は相変わらず、流れに乗るように調子の良いことを話し続けていた。
「いやなに。この家は古来から市民の相談窓口として続いて来たのだ。我々としては当然のことをしたまで」
 とセイジが返すと、シンはその言い種にほんの僅か顔を綻ばせて言った。
「何の偶然か、私の店にいらしていただけたのは幸運でした」
 確かに、セイジが店に現れなければ、シンを見初めることもなく、またシンの人となりに疑問を抱くこともなかった。その偶然の不思議さだけは本物だけれど。
「このことで君に運が巡って来たのなら、私も良いことをしたと思う。今後何かに窮することがあれば、何なりと相談してくれたまえ」
「格別の御配慮ありがとうございます…」
 セイジの進言も嘘ではないだろうけれど。ただ、あまりにも恩着せがましかった。まだ何か策を興じようとしているらしいと、セイジの言動に堪え切れなくなったリョウが、
「そろそろ、本当のことを言ったらどうなんです?」
 遂に口を出してしまった。
「な…、何を言うか」
「可哀相な身の上の方に、余計な呵責を与えるなんて酷いですよ!。監督役としてこれ以上黙っておけません!」
 通常なら主人に対する裏切りは絶対に許されない。セイジは逆に厳しく叱っていいところだったが、流石に、リョウの訴える内容はセイジの良心を刺激する。
「あ…、待て…」
 強く反論できなくなった相手を後目に、リョウは勢い良く事のからくりを話し出した。
「あの青いアレキサンドライトは、元々偽物なんです。セイジ様が錬金術師に依頼して作らせた物なんです」
「え…?」
 終始俯いていたシンが顔を上げ、何が起こったかと言うように目を丸くしている。当然だろう、これまで聞いていた話とは全く違う事実。
 否、多少おかしいとは感じていたのだ。昨日から伯爵家の持ち物を鑑定して来たが、誰も青いアレキサンドライトの話をしなかった。存在を疑われるレベルの珍しい石について、まるで気に掛けていない様子だったのだ。疑わしい物は除外して考えているのか?、と、シンは自分なりに解釈していたけれど。
 つまり本当は、伯爵家の財産などではなかったことを知る。そしてそうなると、
「でも、何故そんなことを…?」
 自然にその疑問も湧いて来る筈だった。前にトーマが考察したように、買ったタイピンが偽物であると気付き、脅しをかけるつもりで更に偽物を作ったとしたら、あまりにも時間が短か過ぎるからだ。トーマの作品は容易に鑑定できない精巧な物だけに。それとも、アレキサンドライトを気に入って、本物そっくりの石を作れることを見せに来たとか…。
 そんな馬鹿馬鹿しいことがあるだろうか?、とシンは考えている。
 けれどシンの普通の思考からは、考え付かない成り行きをリョウは続けていた。
「あなたの気を惹きたいからですよ。あの高価なタイピンを買ったのもそう、自然界に存在しない石を作って貰ったのもそう。あなたに関心を持ってもらって、どうにかしてお近付きになろうとしただけなんです!」
「・・・・・・・・」
 シンの思考は止まってしまった。そして傍に立つセイジは頭を抱え、みんな言っちまいやがった、と苦い顔をしている。最悪でも何処かをぼかして話してくれれば、と思ったが、リョウにそんな期待をするのは無理があるようだ。
 ただでさえ、家族達が自分の計画をねじ曲げてしまった上に、こんな馬鹿正直な話をされては、もう当初の予定通りには行かないと嘆くしかなかった。セイジはこの時初めて、恋のゲームの上での敗北を感じる羽目になる。何処で何がどう狂ったのか知らないが、この侭ならなさはセイジにも信じ難い結果であって…。
 強く念じることがそうならないとしたら、それは念じ方が足りないからだ。そんなつもりは全くなかったのだが…。
 しかし別の見方をすればこうなる。
「でも、セイジ様が関心を持って見ていたことが、今の結果に繋がったとも言えますから、良い方に纏まって良かったじゃないですか」
 と、リョウが言うように、真の意味で相手を助けることができるのだから、それで納得するのもひとつの選択だった。
「まあ…そうだが…」
 セイジは腑に落ちないのか、リョウに諭されることを癪に思うのか、ただ歯切れの悪い返事をするばかりだ。するとそこで、
「あの…」
 暫く放心していたシンが再び口を開いた。
「お近付きになろうとは…?、どう言うことでしょう?。私はただの商店主ですが」
 言われてみれば、リョウの言い方では意味が取り難かった。訳あって権力者に取り入ることも、「お近付きに」と言う表現を使うだろう。否、その前の説明から、セイジの意図は大体判って来たシンだが、今度こそ間違いのないように、確認したい気持が働くようだった。
 またリョウも、気を惹いてどうするつもりだったのか、その先のプランには未だ疑問を持っている。全て打ち明けた後なのだから、是非その種明かしをしてほしいと、真直ぐな視線をセイジに向けていた。
 まあそんな状況下となると、意地を張って隠しておくメリットもない。渋々ではあるが、セイジは自身の考えをふたりに披露した。
「いや…君は、それなりの家の出身のようだったからな。偽物の件は不問にする代わりに、私の秘書でもやってもらおうと…。ゆくゆくはこの家の執事長にもなれるし…」
「成程、そう言うことだったんですか」
 それもまた流石だ、とリョウは思わず感心している。相手が男性であることを考慮し、いつものような御婦人の扱いとは随分違う、かなりまともな射止め方を考えていたのだと、改めてセイジの臨機応変さに恐れ入る。但し、
「今でも良い話だと思うのだ。執事を勤める家は後に男爵になる者も多い。君の代では無理かも知れないが、後の世代の為になるだろう?」
 と、セイジが続けると、調子に乗って口説き始めたりしないよう、リョウは落ち着いて釘を差した。
「それは確かに名案ですが、子爵を買い戻したいと言う方には無理な相談だ」
「うう〜ん…」
 再びセイジは頭を抱えてしまった。まあ、セイジの提案も気遣いのあるものだったが、確かにシンの目標とは格差がある。言い換えれば爵位の差。それはセイジの力ではどうしようもないことだった。
 そしてリョウは、今や伯爵家全員に応援されるシンに、
「とにかくそう言う訳なので、あなたが一方的に悪く思う必要はないと思います。騙したと言うならこちらも騙そうとしたんですから、ここは公平に始末していただきましょう」
 自分も応援していると意志を見せ、笑顔を向けて言った。
 かくして事は差し引きゼロに戻る。
 しかしシンはそれを聞いても、まだ複雑な感情の入り混じる様子で、何とも表現し難い不思議な表情をしていた。窓から差し込む月明かりと、部屋の明かりに淡く照らされたその顔は、陶器の人形のように凛として涼し気に映る。リョウはその時はたと気付いた。
 この人はよく観察すると、妙な美しさを持っている。みたいだ。
 そして、彼の顔立ちに見られる魅力は、不幸な背景から来るのかも知れないと思った。良い血筋に生まれた上品さの上に、覆う悲しみが彼を際立たせているのかも知れない。だからこの家の人はみんな彼に恋する、こぞって彼を助けようとするのかも知れない。とも感じられた。
 陰陽が常に隣り合うように、繁栄と退廃が常に寄り添うように。

 その夜、伸は様々なことを考えながら眠りに就いた。



 翌日の朝からは、シンの身の回りには特に何も起こらなかったが、伯爵家の西端の使用人入口から、トーマがこっそり通されていた。リョウが昨夜の内に使いを出し、店に連絡をつけていたようだ。
「おっ、やっぱり無事だったんだな」
 そこにシンが現れると、今は特に危機感を感じる様子もなく、トーマは明朗な調子で声を掛ける。
「無事って。シュウに手紙を書いたんだけどな?、こっちは大丈夫だって」
「そのシュウが心配するからさ。そんな非情な目には遭ってないって、俺はわかるがあいつは感情的だからな」
 話を聞くと、シュウの様子は容易に想像できたので、シンは声を上げて笑った。この家に来て初めて自然に笑えた、と言う状況だったが、それは馴染みある人間に会ったからなのか、問題が片付いたからなのか、トーマには判断できないところだった。
 シンの、それなりにリラックスした態度を観察しながら、トーマは最も重要な件を尋ねる。
「それで?、どうなったんだ?。偽物のやり取りについては?」
 まるで他人事のように言う、トーマの様子もシンには面白く感じたようで、一頻り笑った後にシンは答えた。
「うん、まあね」
「まあね?」
「受け取ったお金はお返しして、偽物についてはそれで不問にしてくれると思う」
 まだ確定事項ではない、と言う感じがシンの返答からは伝わって来たけれど。ただ、酷い仕打ちどころか、事件そのものを無しにしてくれそうな気配には、トーマも素直に喜べていた。勿論、最終的には自分に降り掛かって来る問題でもあるし、シンがどう扱われるかは気が気でなかった。伯爵家には住処を知られている分、この先商売を続けることも怪しくなってしまう。
 まあ、トーマの職業の怪しさと、この事件とはまた別の話だが。
 すると、シンの控え目な説明を聞いたリョウが、補足するようにトーマに聞かせた。
「セイジ様はこの件については、公平に温情をもって処理して下さるだろう。俺もその場にいたが、買わそうと売り込んで来た訳でもないし、彼にそんなに罪があるとは思わない」
 リョウは言いながらニコニコしていた。恐らく、自分が言う通りになってほしいと言う願望が、実現されそうな予感に喜んでいるのだろう。今度ばかりはセイジも勝手な判断を許されまい。伯爵家の意向を組み、きっと納得できる結果になる筈だとリョウは考えている。
 だがそれならそれで、トーマにはひとつ大きな疑問が残された。
「うーん…、それなら後から作った、青いアレキサンドライトは何の意味があったんだ?。あれだけ大金を費やして」
 その質問は非常に答え難い。
「あ…、あれは別の件で…。ちょっとした出来心と言うか…」
「・・・・・・・・」
 リョウだけでなくシンも、事実を知った今となってはあまり吹聴したくない話題だった。トーマ個人がセイジの性癖をどう思おうと構わないが、街の噂になどなれば、伯爵家にもシンにも困りものだ。ここは慎重に黙っておくしかない。
 けれどトーマが問い掛ける目的は、ただ己の身の安全を確認することだったので、
「なら俺には何もお咎めはないんだな?」
「ない。おまえが偽物の出所だとしても、この件には全く関係ないことだ。偶然どっちにも関わっていたと言うだけで」
 リョウがそう答えれば、トーマはそれで満足したように頷いて見せた。一時はシンの店の存続、シン自身の安否、自分の微妙な立場に頭を悩めていたが、これでその全てに於いて安心できると言う、保障の言葉を得られたのは大きかった。
 すると、その上でトーマは言った。
「それなら…、もう話は決まってるようだし、シンはもう帰してくれてもいいだろ?」
 それについてもリョウは、現状の流れで間違いないと力強く明言して返す。
「ああ!、それはもう近日中に」
「じゃあ、穏便に済みそうだとシュウに報告しておく。受け取った金はどうするんだ?、持って来させるか?」
「ああ…、どうしようか」
 トーマが早速実行段階の話題を振ると、シンも穏やかにそれを考え始めた。今はもう、そのひとつの行動だけを考えればいいと判るので、殊にトーマは気楽な様子で話を進めている。
「一度店に戻ってから、シンが改めて持って来る方がいいのか?」
「どっちでもいいんじゃないか?。俺も聞いた訳じゃないが、そんな細かいことを気にする方じゃない」
 と、リョウとトーマが話し合う横で、けれどシンはふと考えるのを止め、言った。
「トーマ」
「何だ?」
 シンの様子はここに現れた時から、特に変わらず落ち着いた笑顔を見せている。故にここで呼び止められたことにも、それ程重要な意味を感じなかった。まさかそんな言葉を耳にするとは、トーマには全く予想できなかった。
「…僕は、戻らないかも知れない」
 シンの中で何が起こったのか、と、トーマもリョウも、暫く惚けたように見詰めて続けていた。



つづく





コメント)ここら辺全然コメディじゃなくてすいません(- -;。こんなシリアスになる筈じゃなかったのに、書いちゃったからにはもうしょうがないっ。ページ容量もギリギリなので先に進んで下さい…。
あ、因みに「モーリスモ」と言う名前は、フランスのテニスプレーヤーにそう言う方がいまして。日本の報道では「モレスモ」って表記が多いけど。




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