宝石店
恋は永遠の輝き
#1
The Something Glitter



 その町は『地上の宝石』と呼ばれ、美しい自然と町並みの調和する豊かな国に在った。
 気候も良く、立地条件から物流も盛んで、今や世界一とも言われる大繁華街は、常に商人達の活気で満ち溢れている。末端の庶民や農民もそれ相応に潤い、また王族や貴族には巨万の富を築く者が続々と現れ、華美で豪奢な貴族文化が花開いて行った。
 勿論歴史の流れの中では、そんな幸福な時代が永遠に続くことはない。これはこの町の、最も豊かで大らかな時代のお話だ。
「セイジ様、お出掛けですか?」
 真昼の太陽がやや西に傾いた頃、全ての居室が南西向きに作られたその館は、一日の内で最も明るく照らされる。その一室に呼び出された黒服の青年は、窓から差す光を眩しそうに、黒い瞳を細め、部屋の奥に居る人物に声を掛けた。
「ああ、時間があるから町に買物に行こうと思う」
「そうですか、では馬車の支度をさせます」
 侍女に身支度を手伝わせながら、しげしげと鏡を覗き込むのはこのお屋敷の主、ダンティーン伯爵の孫に当たる若き後継者だ。伯爵は御年八十才にもなるが、大変御健勝の為、二代下の彼はまだまだ自由に遊んでいられる御様子だ。
 今日もまた、上質で趣味の良い衣服に身を包み、身だしなみを整え、たかが買物とは思えぬ出で立ちで出掛けて行く。実のところ彼には、そこまで衣装や持ち物への関心はないが、常に社交界での注目を集める身とあらば、日頃からそれに相応しく在ろうと考えるようだ。即ちいつ何時も、人生を愉しむことにアンテナを張り巡らせていようと。
 元々何をせずとも人目を引く、恵まれた容姿を持ちながらそんな努力もする。彼は正にこの時代を謳歌し思うままに生きている。
 あまりにも恵まれた貴族の御曹子。但しひとつだけ頭の痛い事情もあった。

 伯爵の館は町を挟んで、王宮の西の小高い丘の上に建つ。正面玄関の前庭からは、赤い屋根の連なる美しい町並みと、一際壮麗に聳え建つ王宮の塔や庭園、その向こうに広がる海の水平線が一望できる。日々そんな景色を見下ろしていると、まるでそれらが全て自分の物であるような錯覚を起こしそうだ。生ける宝石箱とも、神の箱庭とも表現できるようなその眺望が、ここからは両手に掬えるように見渡せるからだ。
 だからと言う訳ではないが、ダンティーン伯爵家は長くこの地に栄え、土地の隅々までを把握する、国の御意見番として認められる一族だった。ある面では国王よりも、臣民からの支持の厚い名門一家である。それだけに本来、後を継ぐ者には大変な重責が架せられるのだが、今のところセイジにはその重みは感じられていないらしい。
 屋敷の門前に用意された馬車に、セイジが乗り込むと対面の座席には既に、彼のお目付役であるリョウが座って待っていた。先程部屋に呼び出された黒服の青年である。そして彼が合図をすると、馬車の扉は閉められ、軽い鞭の音と共に馬の足が緩やかに進み始めた。
「それでどちらへ?」
 と、リョウは尋ねる。高級店の建ち並ぶ繁華街までは少々時間が掛かるので、走り出してから確認すれば充分だった。すると、
「一昨日の夜会で耳にしたが、目抜き通りの南端に店を構える宝石商が、最近評判らしいのだ」
 セイジの目的を知ったリョウの表情が、見る見る冴えない方へ変化する。
「宝石商…ですかァ…?」
「そう明ら様に嫌な顔をするでない」
 実はそこに、リョウがお目付役を命じられた理由が存在する。続けて彼は、
「また何処かの御婦人への贈り物でしょう?、どうせ。もう飽き飽きですよ」
 言葉通りげんなりと言う仕種をして見せた。そう、自由で恵まれた貴族の御曹子セイジは、それだけに多少素行に難のある人物なのだ。礼儀正しい社交家で、人受けするキャラクターは良いのだが、彼についての評価は一様に「恋多き男」だった。
 社交界、上流社会、一般庶民の娘に至るまで、これと思う人には雷電の如く速やかにアクションを起こし、必ずモノにしてしまうと言う恋愛の達人。そう書けるのは勿論、これまで問題らしき問題を起こしたこともないからだ。余程アフターケアが上手いのか、とにかく彼は相手に恨まれることなく、次々新しい恋を追い求めながら生きている。
 ただ、本人にはそれが無上の喜びであれど、周囲の身近な者にはたまらない状況だった。仮にも土地の名士の御曹子とあらば、様々な評判を気にせずにはいられない。
「リョウに興味がないのはわかるが、貴族には貴族の儀礼と言うものがあるのだ」
 セイジはしれっとしてそう返すが、リョウの方は立場上、どうしても説教をしなければならなくなる。
「単なる儀礼ならよろしいが、セイジ様はゼウスのようだと噂されてますよ?。気に入った人がいるとすぐ行動を起こして、みんなお手付きにされてしまうと」
「それは何とも光栄な噂だな」
「と、とんでもない…!」
 セイジはただ、ギリシャの第一神に例えられたことに御満悦だったが、無論リョウは正しい解釈で話さねばなるまい。
「光栄どころか!、お家に取っては不名誉以外の何でもないんですよ!。お父上やお母上が何と仰っているか御存知なんですか!?」
「あー、わかったわかった」
 因みに両親は、セイジの性質を「プリマベーラ」と呼んでいる。意味するところは恐らく「春の病気」、「サカリ」と言ったところだろう。
「お館様まで自分に、若い娘の集まる所にはなるべく近寄らせないでくれと仰る!。名門一族の後継者が色キチガイじゃ困るんですよ!、当たり前ですが!!」
「まあまあ、そんなに血圧を上げなくとも」
「俺には監督責任ってものがあるんです!!!」
 つまりこれがセイジの頭の痛い事情。リョウは代々伯爵家の侍従長を務める家の息子で、一族の信頼も厚く、性格傾向は正反対に高潔で生真面目だ。そんな彼をお目付役に指名したのは偏に、奔放過ぎるセイジの行動を抑制したいが為だった。
 故に今はこのように、事ある毎にリョウの怒声が飛び交い、確かにセイジは多少の窮屈さを強いられている。まだリョウも若く、セイジとは元々兄弟のような間柄でもある為、思い通り相手を指導することはできていない。だがそれでも伯爵家の作戦は、それなりに成功したと言える状況のようだ。
 まあだからと言って、根本の性格を変えられる訳ではないのだが。
「解っている、だからこれまで面倒事は起こさなかっただろう?」
 セイジは言い訳がましく返したが、そんな話はもう既に聞き飽きて、リョウの思考には何の影響力もなくなっている。
「そう言うことじゃありません!、事件がなければ何をしてもいい訳じゃない。俺の首が飛ぼうと関係ないことです」
 と、無情に切り捨てた彼に、取り付く島なくセイジは溜息を吐いた。
「リョウは頭が固過ぎる」
「俺は普通に真面目なだけです。セイジ様が不真面目過ぎるんです」
「不真面目ではない、私はいつも大真面目だ」
 その言葉を聞いてふと、真面目さとは何なのかをリョウは考える。もしセイジが本当にそんな自己評価をしているなら、恐らく本人の意志に対し真面目に生きている、と言う意味だ。それも確かに真面目の内かも知れない。向きが変わればセイジの良い面であるかも知れない。咎めるべき点を間違えてはいけない、とリョウは思った。
「ご自身の話でなく、社会に対して不真面目だと言ってるんです!」
 ところが、折角リョウが良心的な配慮で話し出すも、その頃馬車の窓には賑やかな町の様子が見え始め、セイジの関心はすっかり窓の外へ移ってしまった。もうこれ以上、何を諭しても馬の耳に念仏、と思い、
「まったくもう」
 リョウはいつもそうするように肩を落として見せる。お目付役として一年少々働いて来た彼だが、今のところセイジには目立った変化はない。しばしば己の存在意義や無力さを考え、落ち込んでしまうこともあるが、まあ彼は彼なりに楽しんで仕事をしているようだ。道徳的には問題あれど、セイジは常に話題を運んで来る人物だからだ。

「それで?、今度は何処の御令嬢ですか?。最近の話題からすると、シャロス子爵家のカユラ嬢とか?」
 そんな話なら、恐らく食い付いてくれるだろうと言うリョウの予想は当たった。
「興味がない割によく知っているな?」
 セイジは「おや」と言う顔をして、暫く外に向けていた顔をリョウの方へ傾ける。すると、
「新聞くらい読みますよ。侯爵家のパーティで大変な人気だったそうじゃないですか。濡羽色の真直ぐな髪に黒い瞳、とても可愛らしいお嬢様だそうで」
 そう話したリョウの様子は、以前は社交界の話題など全く疎かった自分も、今は勉強しているんだぞ、との明るい気概が感じられた。それもセイジに話を合わせる為、序でセイジの行動を理解する為なので、彼には大事な仕事の内だった。
 しかし、振られた話題に対し、
「う〜ん…」
「違いましたか?」
 楽し気に唸って見せるセイジの、意中の人は他に存在するようだ。
「当たらずしも遠からず。その侯爵家の方だ」
「えェ〜〜〜?」
 途端にリョウが青くなったのは、言わずもがな家の格差を思ってのこと。全く以って怖れを知らないと言うか、大胆不敵と言うか、厚顔無恥と言うか、これに懸けてはセイジは天性のハンターだ。
「まずいですよ、そりゃまずい。何かあったらただじゃ済まない!」
 多少声を震わせながら、本気で先行きを心配するリョウの前で、
「何もないと言うのに。これでも私は危うきに近寄らず主義だ」
 セイジは相変わらず楽しそうに、また落ち着いた態度で笑っていた。彼に取って家の格などの障害は、苦悩より楽しみを生み出す仕組みと捉えられていても、何ら可笑しくない様子だった。
 尚、話に上ったイエーガー侯爵家には、希代の才女として知られる一人娘がいる。名をナスティと言って、王族の血を引く高貴な生まれのお嬢様だ。実際現国王の第一王子の、お妃候補に一にも二にも名前が上がる女性で、治世的手腕をも期待される人物である。
 そんな立場の女性に、セイジは一体いつ何処でコンタクトがあったのか、身近に接している筈のリョウにも全く見当が付かない。セイジの守備範囲が広過ぎて、リョウにはとても着いて行けない状態だ。ある意味その行動力は羨ましいものでもある。が、
「本当に!、家名に傷が付くようなことはやめて下さいよ!?」
 今度ばかりは自重するよう、しつこく働き掛けなければと思うリョウだった。
「解っている」
 本当に解っているのかいないのか、セイジの瞳にはもう、追い求める対象しか映っていないのだろう。



 目抜き通りの南端、話に聞いた通りのその場所に、店構えは小さいが小奇麗な印象のその店はあった。一見すると社交界で話題に上るような華やかさは感じない、ごく大人しい外観の店鋪だった。
 リョウがまず先に店の前に降り立ち、呼び鈴を鳴らしながらドアを開ける。すると中からは、高級な装飾品を扱う店らしく、品の良い香りがふんわりと漂って来た。セイジが一歩店内に入ると、落ち着いた調度の明るい部屋の奥から、
「いらっしゃいませ」
 と、店員らしき青年が歩み寄って来る。すると彼は、やや遠目にセイジの姿を確認し、
「あ…、ダンティーン伯のお孫さんではございませんか?」
 恐縮しながらそう話し掛けた。前に訪れた誰かが話したのか、まだ写真と言うものが存在しないこの時代、このように初見の相手を特定するのは珍しい。それほどセイジは、市民の間でも知られた存在なのだろうか。
 本人もリョウも、それについて少々驚かされたが、
「如何にも、伯爵家の者であるが」
 と、この場は取り乱すことなく答えた。セイジがそう答えるのを見て、店の青年は会釈と共に、挨拶と簡単な自己紹介を始めた。
「このような店にわざわざ足をお運び下さり、ありがとうございます。私はこの店の店主でシン・モーリと申します。まだ店を構えて間もない若輩ですが、御注文の際はできる限り御要望にお応えしますので…」
 シンと言う名の、宝石商にしては若過ぎるほど若い青年。彼が顔を上げて間近に向き合うと、セイジも、リョウもまたはっとした。何処かで見たような微妙に違うような、何とも言えない不思議な印象がある。そしてとても綺麗な顔立ちをしていた。
 またそのせいで、訪れたふたりは食い入るように彼の顔を見ていた為、シンは多少戸惑いながら話を進めることとなる。
「本日はどんなご用でしょうか?」
 シンがそう尋ねると、途端に意識が戻ったように、やや辿々しくセイジは返した。
「ああ、いや。贈り物をと思ったのだが…」
「贈り物と言うと女性ですか?」
 すると、返事はないのだが、それらしきことを暗黙の内に覚り、
「それでしたら良さそうな物がこちらにございますよ」
 体の向きを変えたシンは、手前にあるショーケースを示してセイジを促した。その自然な動作も、嫌味を感じさせない話し方も、こうした格の高い客が来る店には打ってつけの人物だと思えた。否、何処でそんな学習をしたのか、年頃から考えると増々不思議だった。
 それからシンは、ショーケースのガラス扉を開き、幾つかの商品を手に取って話し始める。彼の洗練された手捌きと柔らかい物腰が、受け取る側の気持を引き込んで行くようだった。
「こちらはモルガナイトと言う石がメインで、綺麗なピンク色が女性にとても人気です。エメラルドやアクアマリンと同じベリル鉱石で、硬度も高いですが、その割に多く産出されますから、この大きさでも比較的安価ですよ」
 ペンダントヘッドに加工された淡いピンクの石は、一見して十カラットほどあろうか。その周囲を水滴型に小さなダイヤが囲んでいて、確かに若い女性に受けそうなデザインだ。
 しかしそんなことより、語られた宝石の知識の方にリョウが関心を寄せる。
「同じ石でも色によって値段が違うのか?」
「はい。石の色と言うのは、元となる石にどんな物質が混じっているか、その後どんな変化があったかによって決まります。エメラルドは地中深くにできるので見付け難いのですが、その他の色はもっと浅い所で、広範囲に採掘できるんですよ」
「成程!」
 と、閃いた様子のリョウは、これまでそうした説明を聞いたことがないらしい。否、聞いたのかも知れないが、記憶にないのは偏に関心のなさからである。ただここに至って、全く関心のない者が興味を持つと言うのは、店主の深い知識と話の上手さに拠るところだろう。
 因みに宝石と呼ばる物は一般に色、大きさ、不純物の少なさ、カットの良さで価値が決められるが、各石の価値の差は産出量と需要で決まる。需要とは単に人気のあるなしでもあるが、工業用に使えるかどうかもひとつのポイントである。ダイヤカッターやサファイアガラスなど、硬度の高い石は生活用品にも加工される為、需要が高くなり高価になると言う訳だ。
 尚その程度のことは、買物に慣れたセイジなら既に知っている。リョウのような反応は示さない彼に対し、シンはすぐ次の商品を取り上げて続けた。
「もうひとつ、より高級な物をお望みでしたら、こちらのブローチはいかがでしょう?」
 するとまたリョウが先に出て、
「これはルビー?」
 と、台座のメインに据えられた赤い石を見て言った。御存知の通りルビーはポピュラーな宝石であり、リョウも国王の王冠に煌めく大粒のルビーやら、父親の着けているカフスピンやら、様々な場面で目にしたことがある石だ。だから何の疑いもなく言ったのだが、
「のように見えますがサファイアです」
 予想した通りの反応を見て、シンは楽し気な様子で返す。当然そこで誰もが大きな疑問を持つ筈だ。
「サファイアは青いだろう?」
 と尋ねるリョウの横で、今度はセイジも注意深くその石を見ている。そして、
「こちらも同じです。ルビーとサファイアは同じコランダムと言う石ですが、クロムが混じったものをルビー、鉄が混じるとサファイアと呼ばれるんです」
 シンがそう説明すると、リョウは一応それで納得したのか、
「そうなのか。ややこしいな」
 と呟いた。しかしセイジの方は流石に、それだけでは情報が足りないことに気付いていた。
「ならばこれはルビーだろう?」
 商品について初めて質問した彼は、同じ石が色によって呼び名を変えることは知っている。ここでも前にそう説明したのだから、赤ければルビーでなくてはおかしいと感じて然りだ。だが広い世界には、セイジが考える以上に面白いことがあるものだ。
「ところが、これは赤いサファイアなんです。鉄によって赤く発色したもので、ルビーよりルビーらしいと言う評価から、『サファイアの王』と呼ばれています。かなり珍しい石なんですよ」
 そう、通常はクロムが赤く、鉄は青く発色するが、何らかの要因で鉄が酸化し、赤いサファイアが誕生すると言う仕組みだ。シンの言うように珍しい形成過程を辿る為、ルビーより高価で取り引きされている。
「へぇぇ…」
 思わぬ事実を知って、リョウはまた素直に感心していたが、何故だか隣に居る、買物に来た本人の乗りが今ひとつ悪いようだった。珍しい石に興味を示したものの、その先へと言う意欲が感じられない。シンはそんな困った状況を見ながらも、お客様には変わらずにこやかに対応して見せた。
「いかがでしょう?、お気に召しませんか?」
「う〜ん…、面白いのだが…」
 だがと言って、セイジが何を考えているかは他の誰にも判らない。リョウには紹介された宝飾の、どちらもとても素晴しい物に見えた為、予算が足りないのか、贈る相手のイメージが違うのか、そんなところだろうと想像されていた。シンには何も判断できないので、正に戦々恐々の状態だ。
 すると、ふたりの耳にまさかと言う言葉が。
「贈り物はやめよう」
 セイジは唐突に流れを覆して言った。
「えっ!?」
 思わず声にしてリョウは驚く。何故なら過去に、こうすると決めて中途で放り出すことは、一度たりともなかったのだ。セイジに何が起こったのかと青褪めたくもなる。しかし本人は普段通り変わらぬ様子で、更にこう続けた。
「その代わり、私に何か良いものを紹介してくれ」
「急にどうしたんですか??」
「はあ…、ではこちら側のケースの商品をご覧下さいな。当店は世界中から集めた、珍しい石が色々揃っておりますから」
 取り敢えず、買物をする気はあるようなので、シンはホッと胸を撫で下ろす気分だった。このお貴族様は身なりも良いし、人に贈り物をする頻度も高そうな上客だ。あっさり帰られては困る、と、表は穏やかに装いながら、内心どうあっても縁を作りたいと考えている。
 先に紹介したアクセサリーを片付けるシンの横で、今セイジは自分が身に着ける為の、紳士用の宝飾品を見ていたが、明らかに先程までの無反応とは違い、自ら前のめりになってケースを覗き込んでいる。ここを逃してはいけない。シンはギラギラ滾る商魂を溌溂とした足取りに変え、セイジの前に進み出て言った。
「ああ、流石にお目が高い。こんな上質なアレキサンドライトは滅多にございません」
 その時セイジが見ていたのは、タイピンに加工された緑色の石だった。緑と言っても、エメラルドのような淡さもなく、ペリドットのような黄味掛かった色でもない。純粋に緑と言えるような色味の石だ。但しこの石には特徴的な仕掛けがある。
 シンは早速それをケースから取り出すと、窓の光に翳すように見て続けた。
「今は緑色ですが、夜に電灯の下で見ると赤く変わります」
「色が変わるのか!?」
 やはり反応したのはリョウだったが、既にこのことは知っていそうなセイジも、石の色や質を見て気に掛けているようだ。
「ええ、これは不純物が殆ど無く、はっきり変色するので特に質のいい石です。変色特性と言って、特定の波長の光を吸収するせいで色が変わるんです」
 シンがそう説明すると、リョウは聞き慣れない言葉にやや首を傾げながらもこう言った。
「難しい話は解らないが、これは面白いと思う」
 恐らく、彼に取っては初めて確認した不思議な石。美しいかどうかはともかく、子供のような純粋な興味の対象として、熱い視線を向けているのが判る。だが、その微笑ましい様子をずっと見守っている訳にも行かない。シンは現実に引き戻すように続ける。
「ただ、こちらのケースの物はそれなりに高価ですから、もう少しお手頃な物の方がよろしいのでは?」
 その言葉に促され値札を見たリョウは、内心ギョッとして思わず拳を握った。
『た、高い!。家一件買える値段だ!』
 勿論だが、リョウが高いと思う値段と、セイジが高いと感じる値段には大きな差がある。しかしこの石の表示価格は明らかに高かった。流石のセイジにも、ちょっとした贅沢の範疇を越えていた。王室御用達と言う訳でもない一般店で、それはつまりどう言うことかと言うと。
 シンが指定するこのケースの商品は、商品として陳列されていてもあまり売る気のない、客寄せの為のディスプレイなのだろう。恐らく店のコレクションで、「こんな素晴しい物も提供できますよ」、と言うアピールなのだ。だからこそ何れも法外と思える値段が付いている。そしてシンも、石の素晴しさを紹介しておきながら、すぐ他の商品を勧めようとするではないか。鼻から売る気がないと見て間違いなかった。
 勿論そうした商売の仕方は、法律上何の問題もない。商品は全て店主の持ち物に違いないのだから。
 けれどもし、とセイジは思う。どうしてもこれが欲しいと言う客が来たら、店としては売らざるを得ないだろう。身を切る思いで宝物を手放すことになるだろう。恐らく店に取ってそれだけ思い入れのある物だ、他人に譲る結果となればどう考えるだろう?。そうなったら、この店主はどう対応するだろうか?、と。
 そして、発想がやや悪趣味な気もするが、セイジはひとつ頷いて見せると、
「いや、私はこれが気に入った。是非これを譲ってほしい」
 と、高価なアレキサンドライトを指していた。案の定シンの表情は複雑なものに変わって行った。
「本当に…、よろしいのですか?」
「ああ」
 かなり動揺するシンと、大いに動揺しているリョウがセイジの様子を見詰めている。何にしろ決断が早く、あれこれ迷わない性格なのは、この場合吉と出るか凶と出るか。今は忘れられた「贈り物」の遣り取りを考えると、これと思う商品を見付けたのは、彼には運命的なことかも知れないが。
 そしてそれぞれの思惑はどうあれ、一介の商人が高貴なお客様に逆らうことはできない。シンは取引に応じて今一度会釈をした。
「ありがとうございます。…すぐお持ち帰りになりますか?」
 先程までに比べ、少しばかり歯切れの悪い調子だったが、シンは言うなりテキパキと段取りを進めていた。するとセイジは、
「ここで着けて帰ろうと思う」
 思案する間もなくそう返す。余程このタイピンが気に入ったのか、確かに今身に着けている衣装には似合うけれど、と、シンは多少不思議さを感じながらも、
「それでは失礼して、私が着けて差し上げましょう」
 また頭を下げるとセイジの前に歩み寄った。店主自ら商品を着けて差し上げる、と言う行動には特別な意味はない。宝飾店では割とよく見られるサービスらしい。そうしてシンが作業をする間、セイジはそれを眺めながら、
「ここは評判通り、稀少価値の高いものを置いている店なのだな」
 などと、ちょっとした世間話に興じていた。小さな店鋪である割に希少な物が多い、それは確かに珍しいことなのだ。何故なら高価で貴重な原石は、高く買ってくれる大口のお得意様に流れ易いからだ。この店は相当面白いルートを持っているのだろう、と征士は考える。
 するとシンは、その通りだと言うような話を聞かせた。
「ええ、良い採掘人を知っていることもありますが、私自身が珍しい石が好きで、仕入れを兼ねてついつい集めちゃうんですよ。高級なダイヤモンドも勿論綺麗ですが、安価でも個性的な輝きが好きなんです」
 成程、ルートもあるがこの品揃えは店主の趣味のようだ。彼の言うように、ダイヤやルビーなど一般的な品もあるにはあるが、売りはあくまで珍しい石の方らしい。
 ショーケースをざっと見て、ライラックのような紫のジェード、ネオンカラーの水色が鮮やかなパライバトルマリン、派手さでは一際目を引く、フォイルを散らしたようなブラックオパールは、正確には石でなく有機物だが、真珠や珊瑚と同様宝石として扱われている。梱包等をする机の上には、古生代の鳥類の羽を閉じ込めた、薄い緑の大きな琥珀が置かれていた。それもまた珍しい商品だ。
 そんな宝石趣味とは、何も女性ばかりの特権ではない。宝石には財産価値もあれば、一鉱物としての組成の面白さもあるからだ。人によってはダイヤモンドも岩塩も、同じ目線で見て楽しめる物質である。なので、シンの嗜好を疑問に思うことはないのだが、セイジは何故かこんなことを口走った。
「私は石などより、人間の方が美しいと思うが」
「え…?」
 宝飾店に買物に来て何を言う。思わずシンの思考が一瞬止まる。
「面白いことを仰る方だ」
「そうだろうか?」
 悪気も何もなさそうだが、この御曹子は少し変わった人物のようだ、とシンは思う。もしこれが社交の場での会話なら、場を読めない不粋な人間と捉えられるだろうし、そんな風にも見えない風貌を考えると、故意に不粋な真似をしているのだろうか?。
 まあともかく、店のお客様として良い付き合いができれば、シンには何も問題はなかったけれど。
「よくお似合いですよ?」
 と、シンは作業を終えて彼の前を離れ、傍にあった鏡をセイジの方へ寄せる。セイジは鏡に映る自分の姿、タイの様子を確認すると満足そうに笑っていた。
「ありがとう。また来るので宜しく頼む」



 結局その日は、当初の目的とは全く違う買物をし、それだけで御屋敷に戻ることとなったふたり。その帰り道のこと。
「何だったんですか…?。急に目的を変えるし、かと思えばこんな高価な買物をして」
 リョウは変わらず呆れながらボヤいている。あの店の商品が、上流の女性への贈り物として不足だとは思えない。そうならばすぐに別の店を覗いたことだろう。良くも悪くも行動が早い、セイジの中で何らかの心境の変化があったことは、彼にも明らかだと感じられるようだ。
 それについてセイジは、
「リョウの意見を聞いて、侯爵の令嬢はやめておくことにしたのだ」
 と、急に真面目な顔になって返したが、そんな態度は最早、リョウには誤魔化しだと覚られていた。
「見え透いた嘘ですよ?」
「何がだ?」
 寧ろ誤魔化そうとしたのを見て、事実を確認できたようなものだった。
「セイジ様はさっきの店主が気に入ったんですよね?。ええ、何処となく似てますよ、侯爵の御令嬢と」
 リョウと言う青年は男女交際などにはとことん疎い。けれどそんな彼もお目付役をする内、セイジの傾向がある程度解るようになったようだ。つまり誰彼構わずな訳ではない、セイジにも指向性が存在すると。
 そして侯爵の御令嬢とシンの共通点と言えば、どちらかと言うと痩身でどちらかと言うと知的な顔立ち、青から緑の瞳、茶色の髪、それなりの品を備え、話題に富みよく喋ること、と言う辺りだろうか。とにかくそんな感じがストライクゾーンなのだ。そう言えばふたりが最初にシンを見た時、何処かで見たような妙な感じがしたのは、侯爵令嬢のイメージが被っていたのだろう。
 セイジは簡単に言い当てられてしまったので、多少面白くなさそうに言った。
「わかったなら回りくどい言い方をせずともよい」
「まったくもう…」
 しかし、とリョウは考えている。この短時間でターゲットを乗り換えるには、それなりの理由があるのではないかと。無論前に危惧してみせたように、侯爵のお嬢様に手を出すのは危険な賭けだ。例え王族でも無礼はできないが、ましてこちらは爵位も低い立場である。身を滅ぼすことへの怖れを少しは感じてくれたか?、と、好意的な解釈もできるセイジの心変わり。
 ただそれでも、頭を悩める条件が消えた訳ではなく、新たに生まれた障害についてリョウは話し始めた。
「でも、どうするつもりなんです?。侯爵家の令嬢の方が、女性であるだけまだ考え易い。夜会などで会う機会もありましょうし、御縁があれば奥様として迎えることもできます」
「さて、どうするかな」
「小姓と言う年でもないし、しかも宝飾店の店主なんて、それこそ宝石を贈っても意味がない」
 と、リョウが珍しく冗談を交えて言うと、そこでセイジは、途端に生き生きとした顔を見せて答えた。
「その点は任せてくれたまえ、もう考えた」
 何と、もう作戦だけは思い付いたようだ。そしてそんな時のセイジの様子は、それはそれは楽し気で、また何らかの自信に漲り輝いていた。
 健康で意欲的に生きる様子は素晴しいことと思う。ただどうしても腑に落ちないリョウは、
「考えなくて結構!」
 と一蹴する。そしてやはり、いつものように説教を始めてしまうのだった。
「どちらを選ぶにしても、問題を起こさないで下さいよ?。庶民の男性を相手に痴情沙汰など、醜聞甚だしいですから!」
「う〜む…」
 そう言葉にされると、確かに異色の騒ぎになりそうな想像はできる。ともすれば上流社会の女性達などより、慎重に事を運ばねばならぬ相手かも。と、セイジは今になって考えていた。

 ところでその頃、目抜き通りの端に建つ宝飾店では、
「シュウ!、シュウってば!」
 店の奥の階段を下り掛けたシンが、階下に向かって尋常でない声を上げていた。声と共にその足音を聞き、
「あぁ?、どうしたんだよ?」
 と、地下の工房で作業をしていた、彫金師の青年がドアの外に顔を出す。すると階段下に現れた声の主は、全く普段の彼らしからぬ、取り乱した様子を隠さずに言った。
「どうしよう、予想外のことが起こった…」
「予想外って?」
「あのアレキサンドライトが売れちゃったんだ、よりによって伯爵家のお坊ちゃまに」
 するとそれはシュウにも、驚くべき事件だとすぐに伝わったらしく、
「マジか…?」
 彼は口をあんぐり開けて固まってしまった。因みにこの店の商品は全て、このシュウと言う彫金師が制作している。ふたりが何処でどう出会ったのか定かでないが、シンは彼の技術を見込んで、新規店を開店する為のパートナーに選んだ。デザインはふたりの共同アイディアだが、それを格好良く形にできているのは、このシュウの腕に依るところが大きい。
 そして接客に向いたシンが店番をし、経営自体も殆ど彼がしている。
 ただ、「あのアレキサンドライト」と言うだけで、何を指しているか伝わるのは、シュウもそれなりに店の事情を知っていることに他ならない。珍しい石を集めているのはシンの方だが、単なる客引きと言うだけでなく、そこには何か秘密が隠されているようだ。
「絶対売れないように、相場の倍の値段にしてあったのに…。買う方も買う方だよ、僕の大事なコレクションだって判りそうなもんだ」
 今更ながらシンは、売ってしまったことに酷くショックを受けている。セイジが意図してそれを買ったとは当然知らず、理不尽な仕打ちとまでは思っていないにせよ。そんな彼の、消沈する様子を暫し見ていたシュウは、難しい顔をして腕を組むと、
「う〜ん、金持ちの心理ってのはわかんねぇなァ…」
 溜息混じりにそう呟いた。
「まあ…、貴族同士で見栄を張り合う世界なんだよ。借金してでもいい物を身に着けようとするし、他の人が持ってない物には目が無いのさ」
 対してシンはそう話したが、それを判っていて設定した値段が、考えの甘さを後悔することになるなんて、と、増々切ない気持になってしまう。
 宝石に詳しい者なら、まずあの値段では買わないだろう。詳しくない者には手を出し難い値段でもある。希少な石ではあるが、一般に喜ばれるのはダイヤやルビーだから、同じ値段ならそちらを求めるのが普通の心理だ。そう分析したことが何故失敗なんだろう?、とシンは繰り返し考える。そして、
「でも、まさかね…」
 彼はつい先程店を出た、伯爵家の御曹子の様子を思い出していた。少し変わった人物だとは感じたが、実は相当な変わり者なのかも知れない。噂ではあちらこちらで浮き名を流す、社交界の人気者だと聞くが、何を以って人気なのかは聞いたことがない。凡そ変わった理由で人気なのかも知れない。
 そんな人が偶然この店にやって来た。否、正確には偶然ではないだろうが、ともかくそれが不運だとシンには思えた。普通の感覚の客を相手にする分には、予めの設定通り、困った事態にはならない筈なのだ…。
 その時、落ち込むシンを見兼ねたシュウが、
「だ、だいしょぶさ!」
 強気を見せて声を掛けた。少しばかり言葉に詰まったのは、まあ彼にもこの先どうなるか、確信できるものがない状況だからだろう。ふたりして何をそんなに悩んでいるかと言えば…。
 シュウはシンに肩を寄せ、耳打ちするような姿勢で話し出す。
「あの石はよく出来てるからな、本物かどうか素人には絶対見分けらんねぇよ」
「それは勿論だよ、鑑定士である僕が認めた石だもの」
 そうなのだ。シンのコレクションとは実は全てイミテーションなのだ。当然だが、質の高い稀少石を集めるには資金が必要で、まだ宝石商として殆ど実績のない彼等に、そんな余裕がある筈もない。
 だがシンはある時、本物と見間違う程の精巧なイミテーションに出会った。これを商売に利用しようと思うのに、そう時間は掛からなかった。自分自身の趣味もあり、敢えて偽物のコレクションを始めることにしたのだ。
 それ故全く売る気はなかったのだが。
「でも、目敏い鑑定士なら見抜けるんだよ」
 シンはその時が訪れるのを恐れている。庶民相手ならいざ知らず、土地の名士の伯爵家に売ってしまったことは、商売上致命的な失態だ。あの店は貴族を欺いた、などと知れたらもう店を畳むしかない。それで済めばまだ良いが、裁判となったら人生そのものがお終いだろう。
 できることならずっと、自分が生きている間はバレずにいてほしいものだ。と、シンが涙を浮かべる横で、シュウは空元気を発揮しながらこんな提案をする。
「そうだ!、折を見て本物と取っ替えちまえばいいじゃねぇか。何か理由を付けて持って来させればいい。俺そっくり同じに作ってやるよ!」
 彼のそんな意気込みは頼もしい。しかし実行するには粗のある提案のようだ。
「代わりになる石が、うまく見付かればいいけどねぇ…」
「それは祈るしかねぇけどよ…」
 地金はそっくりに作れても、そっくりな天然の石を探し出すのは難しい。どれ程時間が掛かるかを思えば、全く現実的でない話だった。
 あとは神頼みのみ。
「折角、上客になりそうな人が来たと思ったのに」
 そんな予感があったからこそ、余計に落ち込まされる。商才とは目に見える実力だけでなく、運も必要だと考えるシンは、己の才能のあるなしをも疑い始めていた。自らトラブルの元を引き込んでしまうようでは、安定した経営など望めないだろう。
 彼は元々商家の出身ではない為、こんな時に支えとなる家訓なり、伝統と言うものを持たない。今は精神的にとても苦しい状況だ。
『目標までの道は遠いな』
 だが彼にはひとつの夢がある。それが達成されるまでは、苦しみながらも向上することを諦めないだろう。まだ何もかも始まったばかりと言って良い、彼の目には理想が遠く霞んで見えた。



 その夜、伯爵家のセイジの部屋で、リョウは予想しない行動予定を耳にした。
「明日の早朝、馬で出ると厩舎に伝えてくれ。それと昼食を持って行く」
「え…、遠出して何をなさるつもりです?」
 予想できなくとも無理はない、今日のセイジは宝飾店に出向き、自身の身なりを整えたことに満足した筈だ。その次に来る事と言えば、まず目当ての人物に対する遊興の誘い。否、相手が相手なので何をするかは知らないが、高価な宝石を身に着けて山に行くでもないだろう、とリョウは考える。
 ところが、あり得ないことをそのままセイジは言った。
「西の森の何処かに、大層優れた錬金術士がいると聞いたことがあるのだ」
 最早リョウには理解不能。
「聞いたことがあるって、まさかそれを探しに行くつもりですか?」
「無論だ」
「ちょっ、いたとして何なんです?、錬金術とは??」
 まあリョウでなくとも、セイジが何を目論んでいるかは解らないだろう。ただひとつ言えるのは、彼の見据える標的がこれまでと違う為、その行動も変化すると言うことだ。何故朝から馬を走らせ、錬金術士なる者を探しに行くのか、それがあの宝石商の青年とどう関係するのか。今は全く見えないとしても、セイジの中では既に一本の線に繋がっているのだろう。
 彼はそうしたパズルのような思考を楽しんでいる、と言うことだけは、リョウにもありありと伝わっていた。
「まあ見ておれ、私のやり方を」
「そう言われても、俺には何が何やら…」
 些かの期待感と胸騒ぎを残し、明日を待つ者の夜は更けて行った。



つづく





コメント)最初の構想を途中で少し変えた為、数日upが遅れたけど第一回分が出来ました。
征士が主人で遼が下人と言うパターンは、公開した作品では初めてだけど、実はこれよりもっと気に入ってる時代劇があるんです。ただそっちは取り留めない話で、作品にできそうもないので、代わりにこの話を頑張ろうって感じです(^ ^;。
ところで名前なんですが、西洋中世ものなのでダテさんとか、ヤギュウさんとか違和感ありまくりなので、音やスペルから適当な苗字を付けてます。モーリさんだけはそのままでいいかと。モウリーニョなんて人がいるくらいだし。






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