おやすみ前
トロイメライ
#7
Traumerai



「付き合わせちゃって悪いねぇ」
 強硬に言い迫ったかと思えば、一応済まない気持ちも持っているらしい。
 しながわ水族館の前には、今日は特に目立った行列も人混みもなかった。冬の寒空の下ではそこまで、海洋生物の涼やかさに惹かれることはない。寧ろこんな時期に来るのは物好きかも知れない、と思いながら、征士は喜々として前を行く伸を見ていた。
 前に訪れたのはほんのひと月前だと言うのに、気候は随分変わったものだ。けれど館内の様子はその時と何ら変わっていない。薄暗い通路に並ぶ、水色の水槽が点々と淡い光を放っている。自然環境に似せて作られた岩床に、のんびり暮らしている海亀の群れも、以前と同様にあまり身動きをしない。そしてしばしば立ち止まりながら歩いている征士の、視界に映る人も、着ている服も、取り立てて違うと言えるものは何もなかった。
 傷のあるレコード盤が同じメロディを繰り返すように、同じ場面を見ていると錯覚し兼ねない状況だ。
 勿論、極力変化しない日常を望む者と、そうでない者がこの世には存在すると思う。征士はどちらかと言うと後者に属するだろう。けれど今身を置いている現実は、不思議に心地良く感じられていた。戻れなくなった故郷に帰って来たような、この場所が消えずに済んで安堵するような、それでいて新しい時間を感じている、奇妙な心地良さだった。
「イルカのショーがもうすぐ開演時間なんだ、見てってもいい?」
 前方から走って戻って来た伸は、答を急かすような調子でそう告げる。
「ああ…、好きなようにしたら…」
 本当に繰り返しだ、と征士は呆れ気味に返事をした。伸にではなく自分に。
『何をしているんだろうな、私は』
 しかしそう思いながらも、何処かで何かに安心していた。「ある筈のないものを失いたくない」と言う、矛盾した状態が征士の現実だが、そんな虚ろな感覚さえ温めてくれるこの場所。嘗ては歪んだ希望が詰められていた、今は空きだらけの壷を大事に抱えている状況を、この空間は優しく受け止めてくれている。傷付いた記憶のひとつひとつが慰められて行くように。
 こんな情けなさは前代未聞だ。
 またショーが始まると、会場のアナウンスや音楽、観客のざわめきが耳を劈くように、征士にはひどく煩わしく響いた。初めてならまだしも、さして関心のないものを二回観るとなると、うんざりする気持ちが先に立ってしまうものだ。そして横に座る伸がまた、それらの騒音に合わせるようにはしゃいでいる。大人しくそれに付き合っている自分に、征士は密かな卑しさをも感じていた。
 自分は何を期待しているのだろうか、と更に落ち込んだ。
「…あんまり興味なさそう」
 すると、そんな征士の様子を見て伸は言った。
「面白くないかな?」
 至極穏やかな顔をしている彼には、どう答えても怒りはしないだろう。
「うーん、同じ内容だからなぁ」
「そっか、前にも見てるんだ」
 やはり素直に納得して伸は笑って見せた。
 彼のことが、日を追うに連れ段々と見えて来る。表面では勝手な振る舞いを見せて、常に人の心の動きを細やかに感じ取っている。そんな本質的な優しさを垣間見る度、些細なことは許してやろう、という気にはなるけれど、
「でもさ、デートでそんな顔してちゃ駄目だよ」
 と、伸が故意に厚かましい言葉を列ねると、
「あのなぁ…」
 何故そうなるのか、理解に苦しむ態度の変化に、征士は憎まれ口を叩くしかない。
「いつからそんな話になったのだ?、おまえは押しかけ女房か?」
「あ、不満そー」
 まともに言い返すのも、本当は馬鹿馬鹿しい。伸はと言えば結局、冗談とも本気ともつかない様子で返すばかりなのだ。
「べっつにいいじゃないか、どう呼んだって。僕はデートだった方が楽しいんだけどなっ」
 そして調子良く答えた彼を見れば、やはりそんな理屈なのかと、征士は馬鹿を見たような気分になるのだった。自分もさることながら、彼も何を期待しているのだろう?、と思う。何を求めているのだろう?。女性ならまだしも、始めから恋愛対象になりたくて近付いて来たとは、あまり考えられなかった。だから余計に混乱する。
 そうなのだ、これがもし女性だったら話は早かった。征士が気に入るか気に入らないかだけの問題だ。現状の複雑さを思うと、男女の恋愛など如何に単純なことか。
 ところが、
「…君は僕が嫌い?」
 時折そんな風に、心配そうな顔を向ける伸も伸だった。若々しく強気な物言いをすると思えば、途端に捨て猫のような目をして情に訴えて来る。過去のショックが原因で、情緒が不安定になることは知られているが、それがまた思考を堂々巡りさせる原因だと、気付いていてどうにもできない征士。
「そういう話ではないだろう」
 と、安心させる言葉を吐いている自分に、また落ち込んでいた。

 結局その後、一、二時間の間に、征士は予想通りアシカショーにも付き合わされていた。漸くその時間的拘束から解放され、ショーの会場から出て行く人混みを抜けると、何があった訳でもないのに、口からホッと安堵の溜息が出た。何やらひどく疲れている。
 彼は草臥れた様子を露にしたまま、のろのろとトンネル水槽を歩いていた。やはり以前と何ら変わらない様子の、頭上を囲む水槽から照らす水色の光が、ゆらめく彼の心を宥めているようだった。耳障りな音がないだけ、そこは居心地良く感じられていた。
 水中の生物は居るだけで何も語らない、近付く音さえしない、まるで誰かのように。
 こうして事ある毎に思い出す、一度覚えてしまった優しい記憶。それを追ってしまう心を征士は制御できない。普段は忘れた振りをして、けれど未だ記憶の中の景色に、立ち戻りたいと何処かで願っているようだ。同じ場面を繰り返す不毛な安心感に、何かが寄り添いたがっている。
 良くないと思いつつそうなってしまう。似ているようで似ていない、別人のようでそうでもない伸の上に、過去に居た人を重ねて見てしまう。否それでも、せめて彼がもう少し素直な思考で生きているなら良かった。彼の身の上に起こった不幸が自分にも、苦悩を及ぼしていると征士は感じている。
 そう、幸福のようで不幸だ。奇跡的に出会えたところで、まともに渡り合えないのはただ不幸だと。
「僕ってうるさい?」
 ぼんやり考え続けている征士に対して、対照的に一人で喋りまくっている伸は、虚ろな雰囲気を漂わせている彼に、それは自分の所為かと尋ねていた。けれど、
「はあ、うるさいと言うより、よくそれだけ言葉が出るものだと感心する」
「ハハハ、ごめんね。駄目なんだ、黙って大人しくしてるとさ、段々色んな事を思い出して、暗い考えに行き着いちゃうんだよ」
 そんなことだろうと、征士には察しも付いていた。
 元来の彼は恐らく見た目通りに、控えめで大人しいタイプの人間に思える。みどりがそうであったように、どちらかと言えば受動型の性格だと思う。今がそうでないのは、それだけ彼の負った傷が、根深く彼を支配している現れだろう。しかしそんな良心的な観察を続けている現状は、或いはその根底にある下心らしき感情は、征士に取って歯痒いばかりだった。伸について何も知らなかった当初は、もっと強く出られていた筈だった。
 今は共に、どちらも思うように生きられなくなった。事態を打開する為に足掻くしかない時もあるが、今に於いて、我慢をし続けることが得策かどうかは判らない。置かれている状況は似たようなものだ。抜け出したい今の位置から、何かを必死に手繰り寄せようとしている、彼等の現実は似たような顔をして横たわっている。
 けれど、掴み所のない様子の伸を相手に、征士は一方的に苦労を押し付けられているような、立場の理不尽さをも感じている。人の弱味に付け込んで、我侭を聞いてもらう相手として選ばれたような、そんな節も感じられなくない。否、そこまで不審に思ってもいないが、結局ただ解らない、それが全てだった。征士が何かを求めているように、伸も何かを求めていると思う。それが何なのかまるで見えて来ないからだ。
 勿論伸は、悪い感情から彼に近付いた訳ではないけれど。
 征士の目の前で、子供のような振る舞いで、視野に飛び込んで来る珍しい魚の姿を追っている、他人からの見え方など気にしない様子の伸は、今は天使のようにも見える。
「いいなあ、魚は悲しいなんて感情は知らない。僕もそうなりたいよ」
 誰に話すともなく呟きながら、彼は天井の魚に釘付けになって歩いていた。無表情のまま、楽し気に腹鰭を揺らしながら、ゆったり天の海を渡って行く魚の群れ。
 なので当然、自分の前後の様子は見えていなかった。
「あ、おい…」
「わっ…!」
 征士の方も、考え事をしていた為に声のタイミングが遅かった。前方から歩いて来た清掃婦に、伸は自ら体当たりをしてしまった。
 いくら細身の伸でも、勢い良く歩けば人を跳ね飛ばせるものだ。反動で壁面にぶつけられた格好の女性に、伸は慌てて駆け寄ると、ひどく済まなそうに彼女の様子を窺う。
「すいませんっ、大丈夫ですか?」
 伸が問い掛けた、その中年の女性は何とか自力で起き上がると、多少裏返ったような声で返した。
「いえ…、大丈夫です。危ないので注意して歩いてくださいね」
 怪我をする程激しく打ち付けられてはいない。それは誰にも判っていたが、相手も冷静にそんなことを言って、俯いていた顔を上げてくれた。すると、
「…あら、あなた…」
「はい?」
 不思議そうに見合わせているふたりの顔を見て、征士が思わず口を挟んでいた。
「ああ、先日もお会いしましたね」
 伸の後ろから、作り笑いでそう声を掛けた征士を見ると、清掃婦の女性もあやふやな記憶を明確にできたらしい。何しろ征士は嫌でも記憶に残るような、目立つ外見をしているので。
「あらあら、またいらしてたんですか。もうすっかり治った御様子で、良かったですね」
 そして途端に表情をにっこりと綻ばせて、その人は社交辞令にしても、気持の良い言葉を征士に返してくれた。なので征士も疑わしい言動をすることなく、
「ええ、まあ」
 と返すことができた。この際、ひと月でまたやって来た水族館マニア、とでも思われたらしきことは我慢しようと思った。
「どうぞごゆっくり」
 そう言って、彼女は軽く頭を下げてその場を去って行った。けれど状況が解らない伸は、その後ろ姿を腑に落ちない面持ちで見詰めていた。
 その人が視界から消えてしまってから、
「今の人知り合い?」
 と、伸は征士に向き直して尋ねる。すると征士は密かに笑い続けていた。
「偶然とは恐ろしいな…、前に来た時もあの人にぶつかったのだ。その時おまえが喋れない理由を、咽の手術の所為だと言ってしまってね」
 一瞬話の内容が見えなかった伸だが、ままあって、
「ああ、トラウメンだね」
 と自ら納得していた。そう言えばトラウメンは喋りもしなければ、食事もしないと聞いた。長く傍に居る者でなければ、自分とトラウメンの区別は付かないかも知れないと。
 そして、だから征士は笑っていることを知る。彼はふたつの事実を知っているから笑う。自分には知り得ない過去を懐かしんでいる、自分ではない自分を思い出し喜んでいる。流石に癪だと、伸が感じずに居られる筈はなかった。
「まさかな、名前も知らない従業員に、もう二度と会うこともないと思ったが…」
 思わぬアクシデントに、多少ひやっとさせられたことを打ち明ける、征士は珍しく愉快そうな表情を見せていた。それを伸はからかうように、
「あはは、あのおばちゃんの念力だね。君がもう一度来るように『気』を送ってたんだよ、年輩にももてちゃってるんだねー、あははは」
 と言って征士の失笑を買って見せる。これで平等に不満な状態。そうしなければ収まらなかった伸の思いは、結局征士の考えとは平行線を辿るばかりだった。過去を見ようとしている征士と、過去を忘れようとしている伸の。
 下らない、と思える発言には征士は答えなかったが、代わりに、
「それよりいい年をして余所見をするな。どうも危なっかしいなおまえは」
 と切り返していた。
「あっ、またそんなこと言うんだ」
 そしてこんな時の伸の反応はいつも同じ、何処か楽し気に怒った顔をした。
 自己を表現するのが下手なのか、或いは歪められた心を隠しているのかも知れない。素直な表現ができなくなってしまった可哀想な人。それでいて己の存在を見てほしいと訴える。思えば難しい作業だ。己を取り巻く悲しみに、ただ子供のように泣き喚く心を伸は、どうしてほしいと言うのだろう。恐らくその答を自分でも、掴めていないのではないかと思う。
 否、自己を正確に分析できる者も少ないが、ただそうして闇雲に積み重なる、彼の口から出る言葉にはまるで先行きが見えず、征士を混乱させるからだ。
 ある面では言葉などない方が、容易に理解し合えるのかも知れない。トラウメンを思えば、相互理解のツールが伸には役に立っていない。言葉を募れば募る程に、邪魔な目隠しに成り下がっているようだ。恐らく本人にも、それは判っている筈だった。
 それでも、何も言わなければ始まらないのだろう。
「君だって、僕の年の頃はこんなもんだっただろ?」
 口を尖らせながらそう言って、人指し指を征士の胸の辺りに押し付けた伸に、
「冗談ではない、二十歳くらいならもっと落ち着いていた」
 と、征士は呆れたような口調で答えた。確かに彼の大学時代は、まず誰にも文句を言わせずに独立する目的で、着実に前へと進んでいた日々だったけれど。
「そりゃ随分早く老け込んだもんだね」
 その、続けられたどう言うことのない軽口に、何故だか征士の心は軋んだ。
「その言い方どうにかならないか」
 ポーカーフェイスに慣れた人の微妙な変化には、今の伸には気付きようがなかった。
「君ってかわいそ、今頃って一番楽しい時なのに。色んな事に興味を持って、色んな事に手を出してる時間がなかったんだね。あんまり抑圧的なセーシュン送ってると、後で欲求不満が爆発したりするんだ。だからこーゆう大人になっちゃうんだよ?」
『それは私の所為ではない』
 と、征士が今になって苦悩していることを、伸はあっさり言い当てていた。
 例え今は軌道から逸れてしまったとしても、切望するものに真直ぐに進んで来た、生き方を批判されるのは不愉快だった。そしてその為に何かが犠牲になったことも、立て前にしても、後悔するつもりはなかった。優先する順序が必要だった。身の回りは華やかな環境だったけれど、一度に多くを望めば失敗する。だからひとつに絞るしかなかったと征士は理解している。今、空虚な日々を抱えていてさえそう思えた。
 個々の持つ条件は同等に、それぞれ持てる物と持たざる物、得る物と失う物がある。伸が大事な家族を失ったように、征士には与えられない経験があった。それだけのことだ。そんな縛りの中で今の自分に至ったことは誰にも、批難させまいと征士は思った。
 人には触れてはいけない尊厳もある。その人がその人であることを否定してはいけない。
「悪かったな、もう喋るな」
 そう言った、征士の様子は明らかに変わって行った。冷たい意志を感じさせる言葉、見据えている凍てついた瞳を、「しまった」と言う思いで伸は受け取るしかなかった。もう他愛無い会話を続けることもできない、畏縮させられるばかりの威圧的な視線は、僅かな迷いもなく焦点を定めていた。
 それが自分に与えられたものだと、伸は認めざるを得なかった。
「・・・・・・・・」
 それきり、踵を返して行ってしまおうとする征士を見て、核心に触れたと同時に離れてしまう、最悪の状況が展開するのを感じた。伸の不安が頭の中で、胸の中で騒ぎ出して止まらない。
「待ってよ…」
 苛立っていても、本気で怒ったことはなかった。迷惑そうにしていても、無視して先に行ってしまうことはなかっただけに、伸は必死に彼を追い掛けて歩く。このままではおしまいだと、物語る彼の後ろ姿を悲しく見詰めて、祈るような思いで追い縋っていた。

 彼等が出逢ったような出来事は、もう二度と、世界中の何処にも巡っては来ない。何故ならその発端は、既にこの世から消えてしまった物体、『トラウメン』なのだから。そしてその不思議な玉が齎したのは、儚く朧げなものさえ信じられてしまう、人の心の愚かさの証明だけだった。
 だが、それなら人の心は信じられるとも言える。
 心は裏切らない、心は忘れない。一度知ってしまった何かを夢見続けると。

 征士は、そうして水族館の館内を追い掛けて来る、伸の気配を知りながら、足音を聞きながら、遂ぞ振り返ることはなかった。



 冬の空をじっと見詰めながら、日暮れの早さを実感したことがあっただろうか。
 子供の頃でさえ、野山を駆け回って遊びに興じている内に、知らぬ間に日は傾き、間もなく夜の闇が迫って来た記憶しかない。征士がぼんやりとそんなことを思ったのは、一本道を歩く中、見える早さで日が沈んで行く様を眺めていたからだ。
 品川の埋め立て地域の、閑散として開けた町から見える海が、冬色にくすんでいた空を一度、鮮やかな赤紫に染めたかと思うと、今はもう水平線も見えない闇となっていた。海からの風が冷たく頬を打っている。道路の外灯も、既に揃って点灯している夜の湾岸。
 その後を、伸も黙って着いて歩いていた。
 ふたりは何処か行く宛てがあって、そうして歩いていた訳ではない。夜景の電飾やネオンには目もくれず、ただ俯き加減に歩いているだけだ。車は水族館の駐車場に置きっ放しになっていた。征士はただ考える時間がほしかった。
 己がこんなに揺れ動く人間だとは知らなかった。己の感情が儘ならない、相手に対する理解も遅々として進まない。迷っている、迷わされている、突き放したい訳ではないのに苛立っている。これまでに感じたことのない混乱。恐らくそれは、この世の物ならぬ物体に触れた時から、紛れ込んでしまった迷路の続きだ。と征士は感じていた。
 そして今、何とも言えぬ気持で暗闇の中を歩いている現実は、正に心の深層への旅と言った風情だった。進めば進む程に、懐かしい微笑みも心の傷も深く強く現れ、たまらない気持ばかりが満ちて来る旅。改めて「何をしているんだか」と、己の馬鹿馬鹿しさを思う。そんな心許ない様子で、当て所なく歩く征士の後を伸もずっと着いて来る。
 彼も苦しんでいることは判る。
 同じようなものを求めていながら、何故こんなに悩まなければならない、と悩んでいる。
 喪失感から来る行き場のない思いを埋める、最良の土壌を探しているだけだ。
 と、様々な思いを巡らせながら、下を向いて歩いていた伸の額が、覚えのある柔らかい何かにぶつかり跳ね返された。慌てて焦点を合わせれば、それは征士が着ていたカシミアのコートの襟だった。彼はいつの間にか立ち止まって、伸が来る方を向いていたようだ。
 もう、先刻のような鋭い視線は向けていないのが判った。それは判ったけれど、次に征士の口から出る言葉が伸は恐かった。耳を塞いでしまいたい気分だった。どうせならこの道をただ歩いている時間が、永遠に続けばいいとさえ伸は思っていた。永遠に離れてしまうより随分マシだと。
 ぶつかったついでに、征士の肩口に頭を預けて止まっている伸の、押し殺した呼吸が死刑宣告でも待つかのように、か細く征士の耳に感じられていた。相手の酷い緊張感がこんなにも、はっきり間近に感じられたのは初めてだった。そして征士は、
「解らんな…」
 と、そんな伸の様子を見て言った。
「文句ばかり言うくせに、何故着いて来ようとするんだ?」
 征士がずっと持ち続けて来た疑問。これまで口に出さなかったのは、その回答いかんに拠って結末を迎えるだろう、と感じていたからだった。お互いに見ているものが違うことは知っている。その上で譲歩して付き合えるならそれも良い。そうでなければ、己が求めている物は何処にも無いと、探してしまう心を切り刻んで生きていくしかない。どちらにしても時は先に進むだろう。
 そして伸も、もう意地を張れないことに気付いていた。咽び泣く心を押さえて笑う、誰にも心の弱点を知られたくない。そんな風に己を制して出来上がった人格は、明るいとは言えど誤魔化しに過ぎない。陽気な仮面の隙間から不意に漏れる、深い悲しみが相手を傷付けてしまう。そんな儘ならない現実が辛かったから、伸はここまで着いて来たのだ。
 漸くひとつ、彼は本当の気持を話すことができた。
「…写真を、貰っただろ」
 そう言えば、と、征士は忘れかけていたもうひとつの疑問を思い出す。伸が持って行ったいつぞやの写真。彼は何故それをほしがったのだろう?。それに写った情景を思い出すに充分な間の後、伸は続けて話した。
「僕は、家族がいなくなってから、あんな風に笑えたことはないんだ。…だから思った、君の近くに居たら、昔みたいに笑えるのかも知れないって」
 そう、その写真には自分と全く同じ顔をして、何の悩みもなく幸せそうに笑っている、別の自分が写っていたのだと。そして確かにそれは存在していたと知った。自分が生きているこの世界にも、征士の心の中にも。その状況を伸がどう思っているかなど、今は簡単に想像できた。
 既に存在した理想の自分に、なりたい。
 地上の夢であった『トラウメン』は、持ち主には最高の友だと唱われていたが、それ以外にどんな効果があるかは恐らく、製造した者達にも読めなかっただろう。予想できない事が起こるから現実、安定して不変のものこそ幻想だと、あべこべに感じるようなこの世は正に、自分の知らない過去を見た伸と同じだった。
 幻だった筈の過去、そして過去である筈の姿を未来に見ようとした、不条理な心の動きは自然な流れだった。伸のトラウメンが作られたことも、征士がそれを買うことになったのも偶然だった。だから夢見ることに罪はない、失ったものを、或いは持たざるものを想うことには罪がない、と思う。
 今に至って征士は、そんなことをぼんやり理解したような気がした。消え入りそうな息遣いの、強がることに疲れた体を預けている伸は、ただ本来の自分に戻れそうな機会を見付けて、その可能性を追って来たのだと知る。それは真直ぐに、学生時代の彼と同じように。
 思えば、始めからみどりと伸は別物だとして、征士は信じようとはしなかった。損得ではない、何らかの純粋な気持ちから自分を見ていると、考えたことはなかったのだ。二度と同じ苦悩を味わうまいと、手痛い失敗の後に心が硬くなっていた。今それを思うと、伸の身の上の淋しさに申し訳なかった。征士は「済まなかった」と、謝る代わりに右手を伸の頭の上に乗せた。
 掌に触れる、滑らかな髪の感触。そして優しい過去の記憶も指先に蘇って来る。実際おかしな話だ、彼はここに居るのに懐かしい、と征士は苦笑いした。素直な意識に目覚めてみれば、これまで何にこだわっていたのか解らなくなってしまった。
 嘗て幸福だった自分を今も感じている。

 腕時計の時を刻む音が、今は穏やかに鼓膜を撫でている。
「…もう会社辞めない?」
 伸がぽつりとそんなことを言った。
「唐突に何だ」
 恐れていた事態にはならず、これまでと変わらない態度で接してくれる征士に、伝えたい事が伸にはもうひとつあった。
「君が事業を立ち上げるなら、僕が出資してあげるよ。人を使えるようになったら、君は今よりもう少し暇になるだろ…?」
 それは今まで、一度も出て来たことのない話題だった。否、伸が多額の遺産を持っていることも、事業を興したがっていることも征士は聞いていたけれど。
「自分の企業を持つのではなかったのか?」
 だから真面目にそう問い返したが、
「うん…、それは僕の夢だからそう言ったけどさ。僕は自分が企業家に向いてないことも知ってるから。…夢は夢のままでいいんだ」
「・・・・・・・・」
 思い付きで言っているとは思えなかった。
 そしてもしかすると、始めからそれも考えていたのかも知れない、と征士は思った。例え大学で学ぼうと、伸の言うように人には向き不向きもある。代行者と認められる者に出会えたら、それを託すのもひとつの手段と考えていたのかも知れないと。
 しかし突然のことに、二つ返事で安請け合いもできず、征士は考え込んでしまった。
 こんな場面で出て来た話でなければ、彼には願ったり叶ったりの筈だったが。



 ふたりが征士のマンションに戻って来たのは、午後十時過ぎだっただろうか。
 あの後、暫くして本格的な夜が訪れると、流石にどうしようもない寒さが堪えて、夕食も手短かに済ませ帰って来た。伸には、自宅に帰るかどうかを聞かなかったが、何も言い出さないのでそのまま連れ帰った。
 すると部屋に着くなり、「昨日の晩は眠り込んじゃったから、今日はお風呂に入らせてくれ」と伸は言った。もう先刻の弱々しい印象の彼とは違う、調子の良い所が戻って来たようだった。
 その前に、まず上着を脱ごうと居間に向かい、伸は後を着いて来る格好の征士に話し掛ける。
「ねぇ、昨日から疑問に思ってたんだけどさぁ、」
 やや言い辛そうな口調で、征士には顔を向けずに質問していた。
「トラウメンは何処で寝てたの?」
 昨日は酔っていたとは言え、自分がソファに寝ていて、征士はベッドに寝ていたのを知っている。それ以外には寝室らしき部屋も、寝具も無さそうだと伸は気付いていた。それを聞き難いと感じたのは無論、征士にも答え難いだろうと予感したからだ。案の定、彼は言葉を詰まらせながら、
「…まあ、一緒に…」
 と答えていた。別にやましい事実はないが、伸の想像通り言い難い話だった。大体それを聞いてどうするんだ、と征士は思ったが、
「じゃあ僕もそうする〜」
 強情な素振りで返した伸は、聞いた通りに実行する気満々のようだった。そのままさっさと寝室の方へ行こうするので、
「待て!」
 慌てて征士はその腕を取る。恐らく何を言っても立て板に水だろうが、一応事情を説明せずにはいられなかった。
「今朝見ただろう、あれはセミダブルだ、正直言って狭いぞ」
 そもそも彼は一人で使う前提でこのサイズにしている。勿論ベッドなど、大きければ大きい程寝心地が良いだろうが、寝室とされた部屋に入らなければ仕方がない。まさか居間にベッドを置く訳にもいかない。だが、その説明では伸は納得しなかった。
「でも一緒に寝てたんだろ?」
「いや何と言うか…」
 しかし断るにしても厄介だった。もし嫌っていると勘違いされたら、折角距離を少し縮められた現状が、元の木阿弥になってしまいそうで。
「人の形をしていても、やはり『物』だったのだろうな。横に寝ていても質量を感じさせなかった。トラウメンとはそういうものだ」
 征士は、人と物質とは根本的に違うと、きちんと説明したつもりだった。が、
「でも落っこちたりしなかったんだろ?、ならだいじょぶだよ」
「おい…」
 やはり伸は、やんわりと聞く耳持たぬ態度を変えなかった。まあ征士の予想通り、取り敢えず何でも同じようにやってみようとする、伸の気持は解らなくなかったが。それに付き合うのは多少面倒なものがあった。何故ならトラウメンの行動は、決して人間らしいとは言えなかったからだ。例えれば犬とロボットの合の子のような、安定的で忠実な行動を人が真似しなくとも、と征士は思う。
 伸はまだ知らない情報なので、今は仕方がない。
「僕の寝巻はあるの〜?」
 程なくして、寝室の奥からそんな声が聞こえた。クロゼットの中に掛けられた、ハンガーや衣類の包装が鳴らす音を暫しの間、小気味良く聞いていた征士だが、すっと部屋の入口から顔を出すと、
「ないぞ」
 と、後ろ姿の伸に声を掛けた。彼は帽子箱にまで手を掛けようとしていた。
「裸で寝ていたからな」
 更にそう言って征士はクスと笑って見せた。その一言で、一緒に寝ると言う宣言を撤回してくれると良い、と考えていたのだが…。
 ふと自分に向けられている、怪しむような、蔑むような伸の視線に気付く。
「言っておくが私の趣味ではないぞ?。現れた時から裸だったのだ。そのまま歩き回っていたから、自ら服を買って来て着せた程だ」
 まあ落ち着いて説明できたので、伸から見て疑わしくもなかっただろう。事実人に近いものとは思っても、肉体を持った人間とは思わなかったからこそ、征士は全く理性的で居られたのだ。ところが説明を聞いた後の伸の反応は、不思議な態度だった。
「ま、いっか。…じゃ僕お風呂使わせてもらうね」
 伸はそれだけ言って、結局何も持たずに部屋を後にした。
『ま、いっか?』
 その一言が征士には何となく引っ掛かっていた。

 暫くの後、バスルームから再び居間に戻った伸は、洗面所に掛けてあった、征士のバスローブをちゃっかり着込んでいた。
「これ借りていい?」
「どうぞ」
 事後承諾ではあったが、征士は特に嫌な顔もしなかった。快くお許しをもらうと、伸はそれから今日着ていた服と、昨日着て来た服を並べて廊下に掛け、誰に言われた訳でもなく、丁寧に埃取りのブラシを掛け始める。
『マメな奴だ』
 それを見て征士は胸の内で笑っていた。キッチンの件も然り、生活態度についても然り、伸の関心はどちらかと言うと、社会的地位やキャリアを求めることより、居心地良く過ごすことに向けられているようだと。無意識の内に靴を揃えたり、目に付く物をすぐに片付けたがる傾向は、共有の空間での、他者への配慮がいちいち感じられた。
 征士にしても、雑然と散らかった状態や不潔感を嫌うので、彼のそうした生活態度は寧ろ交換が持てていた。ただそれが少々やり過ぎな気がして、逆に笑いを誘って見える時がある。昨今『シュミカジ』などという言葉があるようだが、主婦でもないのにそんな様子に思えた。
 何しろ伸は、面倒に感じがちな家事やメンテナンスを楽しそうにやっている。
 そうして笑いながら、交代にバスルームへ歩いて来た征士は、洗面台の横のドライエリアを見て更に、
「マメな奴だ」
 と、今度は声に出してしまった。伸は履いていた靴下と下着と、ハンカチまで洗濯してそこに干していた。雨に濡れた訳でもないのに、こんなことをする人物には会った憶えがない。女性だとしても、身の回りを整えることに相当なこだわりを感じる。
 そして、そんな様子を窺い知る度に、確かに本人の言う通り、集団の先頭で指揮を取る企業家の性質ではない、と征士も納得していた。悪い意味ではないが、伸のようなタイプにはもっと小規模な活動の方が、ストレスを溜めずにいられると思う。経営と言うだけならなにも、世界を相手に展開するものばかりではない。
 そう言えば、とその時征士は思い出した。伸が企業を持ちたいと考えた理由は、亡くなった父親にあったことを。それは結局、自分と同様の環境に縛られた思考だったのだ。家族が消えた代わりに、彼には莫大な遺産が残ったけれど、それ故本来あるべき方向に従わなければならないと、義務のように感じているのかも知れない。
 だから彼は探していたのかも知れない。己の代わりに確実に義務を果たしてくれる人が、必要だと伸は感じていたのかも知れない。
 そう、征士なら恐らくやれるだろう。
 そして彼にも代償を与えて貰える、彼が望んで来た「自由」を。

「…私がこっちで寝てもいい」
 居間に戻って、征士はまだそんなことを言っていたが、
「平気だってば、僕は寝相はいい方だよ。鼾もかかないし歯軋りもしないし」
 伸はもう既に有無を言わせない状態に入っていた。そう言うなり、彼はソファから立ち上がると、いそいそと寝室の方へと行ってしまう。ただ寝るというだけで、何をそんなに楽しそうにしているかと思うと、「身の危険を感じろ」と言っても無理な話だ。曲がりなりにも男である彼に、そんなことを思う頭は普通はない。
 ただ昨夜のような事があると、解らなくなってしまうけれど。
 控え目に、端の方に寄って布団を被っている、伸はもう大人しく眠ろうとしている風だった。そんな様子を見る分には、征士も不快に感じることはないが、実際その横に座ってみるとやはり、
『もう少しこの部屋が広ければなぁ』
 との感想に落ち着いていた。このマンションに住み始めてからもうすぐ四年になる。その間特に不満を感じなかったのは、不満を感じる程ここに滞在していなかったからだ。こうしてふたりで過ごすには都合の悪い点もあるのだと、今更ながら征士は知って、次の契約が切れるのを期に引越すことも、自然に考え始めていた。
 思い立ったが吉日、と言う言葉もあるが、征士の考えることは常に早い。良い方に転ぶ見通しがあるなら決断は早い方が良い、と仕事上の鉄則を下地に生きて来たからだ。無論全てがそれで上手く回る訳ではないけれど、取り敢えず今は、自分達に必要なことを優先的に考えようと征士は思った。昨日までの彼なら考え付かない発想だった。
 一方的に与えるのではなく、求めるのでもなく、双方の持ち物を交換することで幸福になれるなら、それが最も人間らしいやり方だとも思う。
 と、考えが纏まったところで布団を捲ると、その中に蹲る伸はやはりトラウメンとは違って、生物としての質感や重量感が目でも感じられた。殆ど同じ筈なのに不思議なものだと、征士は暫しその様子を見詰めていた。ふと伸が目を開いて、その格好のまま上目遣いに彼を見たので、
「今日は『僕が欲しい?』と言わないのか?」
 征士は戯れ言を言って笑って見せた。すると、
「…トラウメンはそんなことを言うのか?」
 まるで見当違いな返事をした伸は、昨夜の事をすっかり忘れているようだった。
「違う、おまえが言ったのだ、昨日。『別に構わない』とか何とか」
「憶えてないよ…」
 珍しく征士がからかう立場になっている。思えば出逢ってから殆ど逆のパターンだっただけに、伸も慣れない様子で頭を抱えてしまった。そして少しばかりやり込めた満足感を味わうと、征士は機嫌良くウォールランプのスイッチを切った。
「おやすみ」
 そうして、すぐ傍の闇から聞こえた声に伸は安堵した。
 否、安堵したかったのに、何故か意識は覚醒を始めていた。まだ何か言い足りないことがある。そんな思いに駆り立てられるように、己の中の何かが騒ぎ始めている。見えない何かが気になってそこから離れられない。
 伸は思わず、目の前にある征士のパジャマの袖を掴んで言った。
「僕が欲しい?…」
「・・・・・・・・」
 まだ起きているのは知れていたけれど、征士は答えなかった。なので伸は独り言のように続けた。
「僕は憶えてないけど、それはきっと本心だよ。酔ってると本音が出るって言うだろ」
 何を言い出すかと思えば、だ。
「…話を合わせる必要はない」
 昼間、征士が危なっかしいと感じたのは、つまりはこう言うところだと思う。その時々の感情の高まりから、方向感覚がまるで変わってしまうようだ。そのどれもが彼には『本心』なのだろうが、もし悪意を持って近付く者がいれば、丸め込み易い不安定さを露呈していると思う。無論それを知って、利用しようと考える征士ではないが、
 その時、
「そんなんじゃない、ちゃんと僕の言うこと聞いてよ!」
 伸は語気を強くし、丸まっていた体を起こしていた。思わず征士もはっと目を開いた。
 夜目に慣れて来た視界の中に、いつの間にか自分を見下ろしている伸の、窓辺から反射した弱い光が照らし出す、薄青い影だけの姿が映っていた。不思議と影だけでも、彼は生気に満ちた存在だった。そして吐き出すように彼は言葉を綴った。
「僕はトラウメンじゃない、僕はその代わりにはなれないけど、だったら、君はトラウメンじゃない僕はいらない?。僕は僕を見てほしいからだ…よ」
 現実と幻想の区別がつくことを、望んでいたのはどちらも同じだ。手を伸ばし、征士が触れた伸の頬には、幽かな震えがその心情を明確に伝えていた。早くこの曖昧な状態から脱したいと願う気持ち、その為に、勇気を以って己を投げ出すことに賭けた彼の気持ちを。
「僕が欲しい?、…僕は構わないよ」
 伸はもう一度繰り返した。そして、
「僕は君が好きだから」
 と、恐らく本当のことを言った。
 僅かに早く刻み始めた心臓の鼓動、僅かに上昇した体温を伝える皮膚。けれど自ら言い出しておきながら、唇を噛み怯えるような瞳を向けている伸は、二者の入り混じる複雑な感情を表していた。人に拠っては意気地がないとも取れる彼の態度。だけれども。
 それが意外と、征士の気持を楽にさせていた。
 新たな経験が全く苦にならない者は居ない。全てを恐れない人間は居ない。それは自らの危機を招くことになるからだ。もし無条件で全てを受け入れられる生物が居たら、人間はその奴隷となって、弱さを恥じながら生きなければならないだろう。実はトラウメンと人間とは、そんな形でしか結び付けないことを所有者は皆、嫌が応にも知ることになるのだ。
 だからこれで良い。人は平等に弱い面を持つ。今度は人間である君に会えて良かったのだと、征士は答を出すことができた。
「分かったから、急がなくていい…」
 緊張を宥めるように、征士は二、三度伸の前髪を梳くように撫でると、もう何も言うことはないと目を閉じてしまった。そう、急ぐ必要はなくなった、今は少なくともひとつ同じ目的を共有していると、伸にも解った筈だから。
 君と共に、夢のような現実を作れたらいい。

 この物質世界に確かな価値が存在するか?。
 疑ってもいい。信じなくていい。ここに確実なものは何ひとつ無い。
 だから夢見ることこそ意味がある。と思う。



 時が経つ程に変わって行く。幸福な進化と共に新しい流れに身を委ねる。当面忙しい征士はいつになったら、当麻に連絡を入れることを思い出すだろうか、それは今のところ予想がつかない。









加筆校正後コメント)と言う訳で、容量ギリギリまで本当に色々直したんだけど、まださっぱり完璧じゃないです(- -;。と言うかこれ、全文書き直さないと納得行く形にならないわ…。
 今になって、何でこんな難しい話から書き始めたんだろ??って感じです。取り敢えず征士と伸に幸あらんことを。って無理矢理なシメだな(笑)。




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