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 今回は知る人ぞ知る名作SF「ワンゼロ」ですが、メインキャラがかなりトルーパーにハマるので、頑張って全員描きましたっ。
 五人の配役は、トキオ=遼(主人公)、マユリ=伸(主人公の異母兄妹)、アキラ=当麻(トキオの友人)、エミー=秀(アキラのGF)、ヒカル=征士(大企業の御曹子で社長)、となってます。もうひとりミノルと言うメインキャラがいて、中国人なのでやっぱり秀が良くて、ひとりで2役やってもらうかな。純でもいいかも。

 しかし当麻と秀、征士がむちゃむちゃハマってるので、すごくまとまりがいいです。征伸にも当秀にもなってるし。
 また、知ってる人はわかることだけど、トキオとマユリは最後は交じって一人になっちゃうから、反対の要素を持つ遼と伸でぴったり、の筈なんだけど絵だけがしっくり来ないです(^ ^;。全体がアジア系の話の中で、遼はともかく伸はエギソティックなタイプじゃないからなぁ。どう考えてもインド人には見えない…

 その他の配役はまあ、ビローチャナ=ラジュラ(魔王)、インドラ=ダラ(神のひとり)、フダマ王=朱天(龍)、綾切=すずなぎ(狐)、エミーの母=ナスティ、ナイアル=柳生博士と見た目の感じで。

■佐藤史生作品の思い出
 手にした当初は気付かなかったんですが、この「ワンゼロ」と言う作品は、手塚治虫の「火の鳥・太陽編」のオマージュが含まれてます。日本のアミニズム的土着神と共に、渡来神(主に仏教の)と対決する発想が。まあこの世代の漫画家さんは多々、手塚先生の影響を受けているからでしょう。
 ただ、そんなこと全然気付かなかったのは、それだけの話ではなく、神話にコンピュータが関わっているのが面白いからです。

 この当時(話の舞台は1990年台後半となってるけど、マンガが描かれたのは85年頃)、まだ家庭用の小型コンピュータはパソコンと言わず、マイコンと言っていたのが時代を感じます。しかも当時のコンピュータは、まだまだマニアの物だったと言う描写が、いかにも80年代だなぁと言う感じですが、それなのに、この作品はちっとも色褪せないですね。今もキラッと輝く物語のアイディアが素晴しいです。
 それは偏に佐藤先生の、アジアの神話に関する知識の豊富さ、SFとしての話の上手さだと思います。「ワンゼロ」はその代表作と言うか、一番知られたタイトルだと思うんですが、個人的にはその後の複合船のシリーズや、「精霊王」なども気に入ってます。

 「ワンゼロ」で特に好きな場面は、ヒカルが経営する企業のコンピュータと、大学研究所にあるコンピュータにアキラが接触する所。家庭用のマイコン一台で何ができるか、と言う可能性の話が相当面白い。
 またアキラとトキオ、 アキラとエミーの不思議な友人関係など、アキラに関する部分が一番好きです。主人公・トキオの物語が要点ではあるけど、アキラは物語の主観的人物であり、普通の人間側の事の実行者。それだけに一番よく描かれている…いや、普通の人間とはちょっと違うか。

 実は主人公達が「魔」で、敵が「聖」と言う通常とは逆のイデオロギーなのが、このマンガの一番面白い面なのです。
 魔として生まれたからには、聖なるものに追い詰められて行く宿命なんだけど、その前に自分達は人間だと言う不自由な状況で、謎の存在である主人公とマユリが、その善悪の対決を導いて行くお話で…。うーん、簡潔な説明も難しいけど、マンガ自体ちょっと難しい内容ですね。

 でも、主人公達に関わって来る魔王、ビローチャナが子供服を着て歩くとか、当初の主人公の色々なやんちゃぶり、対してドライなアキラの態度、大学の研究者のグチなど、細かいネタにも面白く興味深い箇所が多くあり、なかなかケチを付け難い完成度の作品です。
 敢えて難点をあげると、佐藤先生の作品は全般的に難解なトリックの話が多く、じっくり考え何度も読むタイプの人じゃないと、何が面白いのかわからないかも知れない点。ややクセのある絵に好き嫌いがある点、でしょうか。それさえクリアできれば、新しい世界が開けて行くような楽しさが、すごく味わえる作品群だと思うんですが!。

 今は女流マンガ家で、ハードSFを描かれる方は、時代もあってほとんど見なくなり(出版社が、日本映画では実写化しにくい、壮大なSF作品を嫌がる傾向にあるそうで)、そんな意味では、この世代のマンガ家さん達は貴重ですね。
 多分十代の内に、手塚治虫とブラッドベリ、ヴェルヌ、HGウェルズ辺りを読破する勢いがあると、こういうマンガ家になれるのかも知れない。ついでに江戸川乱歩も入れておこう。

 ところで、佐藤史生先生を知ったのはこの作品ではなく、この前に描かれた「夢見る惑星」でした。タイトルを見て「SFかな?」と思い、買ってみたらちょっと違ったんですが、重厚な創世ファンタジーの物語に圧倒されて、一気にファンになってしまいました(いや、全ての始まりはSF設定なんだけど)。
 折角なので「夢見る惑星」の配役も考えてみた。
 主人公イリス=征士、タジオン=遼、雷電=白炎、フェーベ=カユラ、シリン=伸、カラ=秀、ズオー=当麻、オッタル=朱天、ラカン=ナアザ、ゲイル=アヌビス、エル・ライジア=ラジュラと言う辺りで。

 そう言えば「エル・シャッダイ」と言う言葉を、初めて知ったのもこの「夢見る惑星」でした。今はゲームのタイトルにもあるけど、80年代前半のマンガでは未見の単語でした。世の中に様々な過去の文献がある中、何処からアイディアを引っ張って来るかの点で、先進的センスのマンガ家さんだったと思います(^ ^)
 それにしても、プチフラワー掲載のマンガなので、知らない人が多いのは本当に残念。地味だけど優れた作品が多かったのにねぇ。

2012.3.23
加筆更新2017.5.25